■ 第3回福岡市議会定例会 (6月17日~27日)
去る3月11日に発生した国内最大のマグニチュード9.0の東日本大震災と、これに伴う巨大津波は、東北地方を中心に、1万5千人余りの尊い命を奪い、加えて行方不明者7,700人余りと、沿岸地方に壊滅的な被害をもたらしました。さらに、地震・津波によって引き起こされた福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故で、大地震から3ヶ月を経た今も周辺地域では広範囲な避難指示のもと、約12万5千人の方々が避難生活を余儀なくされているほか、農作物の汚染や風評被害も深刻化するなど、放射能汚染が事故収束の障害となっています。東日本大震災は、地震の揺れで原発の外部電源が喪失し、津波が事故をさらに拡大したまさに「原発震災」です。「原発は絶対安全」と政府や電力会社は言ってきました。しかし、被災しコントロールを失った福島第1原発は、今も大気と海に放射性物質を排出し続けています。
社民党は、これまで一貫して「核と人間は共存できない」として、原子力利用政策を批判し、脱原発を主張してきました。
6月議会では、高齢者や障がい者等の要援護者や女性の視点からの「地域防災計画の見直し」と、「玄海原発の災害における対策」、「再生可能な自然エネルギーの促進」の3点について質問しました。
○「福岡市地域防災計画の見直し」について
佐賀県の玄海原子力発電所の風下に位置する本市においても、防災計画の見直しを検討されているが、
(質問) 今回の地域防災計画見直しの重点課題と、そのスケジュールについて尋ねる。
【回答】
- 津波や液状化対策並びに原子力災害対策などを重点課題と考えており,平成23年度は,現計画の点検を行い,大震災を踏まえた見直しを行うとともに,平成24年度以降も、新たな対策の検討を進め、「福岡市地域防災計画」の充実を図っていく。
(質問) 地域防災計画の見直しにあたっては、「見直し検討委員会」を設置するとなっているが見直し検討委員会はどういう方々で構成されているのか、さらに、構成メンバーの男女比はどうなっているのか。
【回答】
- 委員会の構成は、委員10名を予定しており、うち学識経験者が6名、福岡管区気象台、福岡県の職員が各1名、住民自治組織より2名となっており、委員についてはすべて男性となっている。
(質問) 高齢者、障がい者等の要援護者については、民生委員・児童委員及び自治協議会等の協力を得ながら、自力避難が困難な要援護者をリストアップした「災害時要援護者台帳」が整備され
ているが、現在、整備されている自治会は何校区で、登録者は何人か。
【回答】
- 福岡市内全149校区において、地域の民生委員の協力を得て、戸別訪問による災害時要援護者台帳を整備している。登録者は平成23年3月末で16、421人
(質問) このうち、安否確認や支援に活用することを目的として、市と自治協議会とが覚書を締結したうえで、自治協議会への情報提供を同意した「災害時要援護者情報提供同意者名簿」を整備している自治会は何校区で、登録者は何人か。
【回答】
- 覚書を締結した校区数は、84校区、登録者は7,425人
昨年12月に閣議決定された第3次男女共同参画基本計画では、第14分野「地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」として、防災における取り組みが拡充され、「防災分野における政策・方針決定過程への女性の参画を拡大する」とある。本市防災計画にも、防災計画の見直しに当たって、総則の第5節に、「防災計画の修正の際には、男女共同参画の視点や高齢者、障がい者、外国人、乳幼児、妊婦等の災害要援護者に対する配慮に留意するなど、人権尊重の視点に立って検討を行う」とあるが、その具体的な対策については触れられていない。
阪神・淡路大震災や新潟中越地震などの過去の災害発生時において、高齢者、障がい者等の要支援者や、女性などに対しての二次災害が報告されていることからも、避難所の設置、運営に当たっては、高齢者、障がい者、外国人、妊産婦、女性等の視点に立った、具体的な避難支援ガイドラインの作成が必要と考える。
高齢者や障がい者等の要支援者は、一般の避難所での集団生活で行動制約を受けやすく、避難生活の長期化の中、疲労・ストレス、更には持病の悪化などによって、二次災害を引き起こしている。
通常の避難施設での生活が困難な高齢者や障がい者等の要支援者に対しては、福祉避難所の設置は欠かせないと考える。一時避難所や収容避難所については、公民館や小・中学校が選定されているが、福祉避難所については、「必要に応じ社会福祉施設等の中から適宜選定するものとする」とし、具体的な場所については指定していない。
(質問) 緊急時に備え、二次災害を防ぐことを目的に、福祉避難所の指定をすべきと考えるが所見を問う。
【回答】
- 高齢者及び障がい者の福祉避難所については、現在、高齢者施設、障がい者施設の事業者の方々と指定に向けて協議を進めている。
地域コミュニティを基盤として、自治会と自主防災組織の連携によって行うことが基本であることは言うまでもない。しかし、地域状況や被災状況によっては、「災害時要援護者情報提供同意者名簿」が有効的役割を果たすことも否めない。「情報提供同意者名簿」を整備している自治会が、86校区に増えたとはいえ、まだ50%台。今後、覚書の締結を更に広めるとともに、個人情報保護法の規定はあるが、情報提供に同意していない人についても人命救助の観点から、緊急的な災害時に備えた情報の共有化を図る方策について見当することを強く要望した。
また、阪神・淡路大震災や新潟中越地震を経験した多くの女性たちの声から、避難所で女性に対する性暴力やセクシャル・ハラスメントが多数発生したことが報告されていることからも、妊産婦や女性の視点に立った避難所の設置・運営体制も求められている。トイレや更衣室を男女分けることや、授乳場所を作り見えないように囲うことなど、プライバシーに配慮した空間の工夫が必要。避難所に暮らす女性たちの不安や子育てをしている人の声を反映させるために、避難所運営責任者に女性が参画するなど、防災分野における政策・方針決定過程への女性の参画は肝要と考える。
(質問)本市において、防災計画に、避難所設置・運営体制に女性の視点を盛り込むべきと考えるが所見を問う。
【回答】
- 現在の「福岡市地域防災計画」の中では、妊産婦や乳幼児などの要援護者に配慮した避難所運営に努めており、今後、「福岡市地域防災計画」の見直しの中、女性の視点に立って再点検を行い、関係局とも協議しながら、具体的な対策について検討していく。
○玄海原発の災害における対策について
2009年11月5日、佐賀県の玄海原子力発電所3号機で、国内初となるプルサーマルが稼働したことから、2010年3月、我が会派の代表質疑において、私は、「原子力発電の事故による、被爆対策について」質問したが、その答弁は、およそ原発事故を想定したものとはなっていなかった。
玄海原発をめぐっては、佐賀県の古川県知事が、原発から半径10キロとしている防災対策の重点地域であるEPZの見直しを表明しているが、
(質問) 本市は、玄海原発からどういった位置にあるのか、玄海原発に最も近い地域はどこで、そこは何キロ地点にあるのか問う。
【回答】
- 本市は、九州電力玄海原子力発電所から、およそ40q弱から60q強の圏内に位置しており、最も近い地域は、西区元岡地区でおよそ37qである。
(質問) 原発事故を想定した防災対策において、迅速かつ的確な放射線量などの情報の把握と情報伝達のための体制確立を行い、防災訓練など平常時より市民への周知を行うべきと考えるが所見を問う。
【回答】
- 情報の把握と伝達の体制については、県や事業者と緊密な連携を行ってきたところであり、平成21年12月からは、玄海原子力発電所で異常が発生した際には、事業者からも直接、本市へ情報が入る体制となっている。
- また、原発事故を想定した防災対策については、本年度、「福岡市地域防災計画」の見直しの中で、情報伝達体制の強化や市民への周知等も含め、検討していく。
(質問) 国策として進められた原発事業であることから、福岡市としても、国と九州電力に対して、事故原因の徹底究明や情報公開の徹底、原子力発電所の緊急安全点検を求めるべきであると考えるが、市長の所見を問う。
【市長回答】
- 原子力災害対策は、福岡市民の安全・安心を確保する上から重要な課題と認識しており、事故原因の徹底究明と安全防災対策の総点検の実施、国の防災指針で示す「防災対策を充実すべき地域の範囲」の拡大、情報の把握と伝達のための体制確立、情報公開の徹底等、国への緊急決議について、糸島市と共同で福岡県市長会へ提案し採択され、さらに九州市長会並びに全国市長会においても同様の決議が採択されたところである。
- また、本市としても、九州電力に対して、さらなる安全の追求や情報公開及び情報提供の徹底等について、要望を行ったところであり、今後も、機会を捉えて、国や事業者へ要望を行ってく。
○再生可能な自然エネルギーの促進について
「平和利用の象徴」といわれる原発の災害における対策が問題になり、原発に頼らないエネルギー政策の確立は待ったなしの状況。この間、温暖化防止対策の一環として新エネルギーへの取り組みが重要視されているが、
(質問) 市施設における新エネルギーの導入状況は、どのような施設にどのくらい設置されているのか。また、市民への新エネルギー導入の補助制度にはどのようなものがあるのか。
【回答】
- 平成22年度末時点の本市施設における新エネルギーの導入状況については、太陽光発電システムが小・中学校、公民館を中心に119施設、太陽熱温水器が消防署を中心に12施設、バイオマス発電、熱利用が下水道の水処理センターに5施設、廃棄物発電、熱利用が清掃工場に4施設、高効率風力発電「風レンズ風車」がシーサードももち海浜公園とみなと100年公園に計4基、設置している。
- 今年度の市民への新エネルギー導入の補助制度は、住宅用太陽光発電システム設置が1件10万円で1,000件の募集を、家庭用燃料電池、通称エネファームの設置が1件10万円で100件の募集を、それぞれ実施している。
防災計画の視点からも、自家発電が可能である太陽光発電の設置は、重要であると考える。災害時における避難所として、公民館や小・中学校が選定されていることからも、太陽光発電の設置が急がれる。
(質問) 公民館や小・中学校への太陽光発電の設置率はいくらで、今後の整備はどのような計画になっているのか。また、住宅用太陽光発電システムの応募状況は、昨年度の同時期と比べてどのような状況か。
【答弁】
- 公民館と小中学校を合わせた太陽光発電の設置率は、平成22年度末時点約26%である。
今後の整備計画については、第二次「福岡市役所環境保全実行計画」に基づき、施設の新設又は改築の際は、太陽光発電システム等の新エネルギー設備を導入するとともに、既存施設においては、市民への啓発効果が高い学校・公民館等に優先的に導入することとしている。
- 市民への補助制度である住宅用太陽光発電システムの応募状況については、昨年度の最終的な応募件数が991件で、今年度は昨年度の同時期に比べ1〜2割程度増えている状況である。
これまで本市では、温暖化防止対策として「新エネルギー」の導入を推進されてきたが、東日本大震災の地震と津波による「原発事故」で、「新エネルギー」は、安全なエネルギー政策として注目を浴びている。
(質問) 脱原発の電力として、市として再生可能な自然エネルギー利用の推進や、補助制度の充実を図るべきであると考えるが、市長の所見を問う。
【市長回答】
- 自然エネルギーの導入について、本市はこれまでも地球温暖化対策の面から推進してきているが、今回の震災により、エネルギーの分散化や自然エネルギーの有効利用等の新しい社会づくりが求められている。
- 本市は、電力の大消費地であることから、率先して太陽光発電、風力発電、小水力発電等の再生可能な自然エネルギーの市施設への導入や、市民への支援にしっかりと取り組んでいく。
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