平成22年度決算特別委員会(10月11日〜26日)

2010年度の決算に関して、「学校教育の充実」の観点から、特に、「特別支援教育の推進」、「学校図書館における教育の充実」、「学校教育費の保護者負担軽減策」の3点について、質問した。

1.「特別支援教育の推進」について

 国連障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする、日本の障がい者制度の集中的な改革を行うため、2009年12月8日、内閣府に、「障がい者制度改革推進本部」が設置され、2010年6月7日の第一次答申を受けた内閣府は、6月29日、「障がい者制度改革の推進のための基本的な方向性」を閣議決定した。教育についても抜本的な検討が行われ、「障がいの有無にかかわらず、全ての子どもは地域の小中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とする」ことや、「障がい者が小中学校など、とりわけ通常の学級に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる」など、インクルーシプ教育の理念に添った見解が示されている。

 さらに、本年7月29日、障害者基本法の改正案が参議院本会議で可決、成立しました。障がい者が「どこで誰と生活するか」などの選択の自由について「可能な限り」と制約する文言が入るなど「障がい者制度改革推進会議」の素案とはまだ開きがあり課題は残されているが、障がいの有無にかかわらず、人格と個性を尊重する「共生社会」の実現を目的に掲げ、共に学ぶことを保障することが、国、地方公共団体の施策義務とされた。文部科学省においても共に学ぶことを実現するために、合理的配慮等について「中教審・特別支援教育の在り方に関する特別委員会」で論議されている。

 さらに、本市においても2011年5月、「福岡市特別支援教育推進プラン」を策定し、今後5年間の特別支援教育の推進計画を示している。

@ 2008(H20)年度からの特別支援教育支援の配置希望人数と配置人数及び決算額についてお尋ねします。

[教育長]
特別支援教育支援員の配置希望人数・配置人数・決算額

  • 平成20年度 配置希望人数 102人 配置人数 37人 決算額 2,107万1干円余
  • 21年度 配置希望人数 106人 配置人数 60人 決算額 3,921万4千円余
  • 22年度 配置希望人数 130人 配置人数 75人 決算額 5,276万9千円余
  • 23年度 配置希望人数 150人 配置人数 96人

 

 支援員が配置されて4年目になるが、この間、支援員の人数も年々増員され、希望者に対する配置率も、当初の36.3%から56.7%、57.7%、64.0%と伸びている。しかし、まだまだ学校現場や保護者の希望に添えた配置とは言い難い状況。新たな年度となって、支援員が付かなかったという学校もあるが、卒業や転出という事でなく、

A 2009度配されていて、2010年度に配されなかった学校はあるか。

[教育長]

  • 5校ある。

B その理由は。

[教育長]

  • 今年度配置しなかった理由は、特別支援教育支援員を配置したことにより、児童生徒の状態が改善し、配置の必要がなくなったため、及び、より緊急度の高い幼児児童生徒に配置したため。

C 支援員の配置希望がかなわなかった学校について、その後の状況把握はしているか。

[教育長]

  • 特別支援教育支援員の配置ができなかった学校については、学校長と連絡を取りながら、必要に応じて指導主事を派遣し、児童生徒の状況の把握をしたうえで、巡回相談や教育相談・自立活動を勧めるなどの支援を行っている。

 

 子どもの状態は、適切な支援で一時的な改善は図れるとは思うが、大事なのは継続的な支援である。限られた支援員の人数の中で、緊急度が高い児童生徒の順に配置するという、理不尽な状況は早急に改善されなければならない。

D 支援員の配置については、国が地方交付税措置を講じているが、2010(H22)年度の措置額はいくらか。

[教育長]

  • 基準財政需要額として、平成22年度算定額 2億8,013万7千円余。

 

 国は、2010年度の予算編成に、公立小中学校34,000人分を措置している。支援員1人分の予算は120万円と聞いているが、福岡市立の小中学校214校全校に配置しても余りある予算。手厚くきめ細かい教育としながらも、特別な場で分離して行われてきた「特殊教育」から、「1人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するための適切な指導及び支援を行う」とした特別支援教育が2007年に本格的にスタートし、十分とはいえないが、文部科学省も、その理念が実現できるための財政の確保に努めている。一般財源で縛りはないというものの、理念に沿った使い方をすべきであると強く申し上げる。「福岡市特別支援教育推進プラン」実現のための取り組みとして、条件整備の項に「特別支援教育支援員の配置拡充」とあるが、

E 早急に 希望校全校に特別支援教育支援員を配置すべきと考えるが、所見を伺います。

[教育長]

  • 学校からの希望や就学相談会の結果を踏まえながら、できるだけ多くの学校に配置できるよう努力していく。

 

次に、特別支援学級の状況について尋ねる。

F 特別支援学級の設置校は小中学校それぞれ何校か。そのうち、知的がい特別支援学級、肢体不自由特別支援学級、自閉症・情緒障がい特別支援学級は小中それぞれ何校か。

[教育長]

平成22年度

  • 特別支援学級一小学校114校、中学校54校
  • 知的障がい特別支援学級一小学校98校、中学校44校
  • 肢体不自由特別支援学級一小学校3校、中学校2校
  • 自閉症・情緒障がい特別支援学級一小学校6校、中学校3校

G これら特別支援学級からの支援員の希望はあるか。あるとすれば、その理由、またその配置数は何校か。

[教育長]

  • 特別支援学級に在籍する児童生徒についても配置希望が出ている。
    その理由)知的障がい特別支援学級に在籍しているが、肢体不自由を伴うなど、障がいが重複している児童生徒がいること、行動障がいがあり、本人や周囲の児童生徒の安全を確保する必要があること、など。
  • 平成22年度の特別支援学級への特別支援教育支援員の配置は6人。

H 本市では、肢体不自由特別支援学級と自閉症・情緒障がい特別支援学級には、担任に加え、嘱託員を配置しているが、2010年度の配置人数は何人で、決算額はいくらか。

[教育長]

  • 特別支援学級に配置した嘱託員の人数
  • 平成22年度 肢体不自由特別支援学級 5人、自閉症・情緒障がい特別支援学級9人
  • 決算額 2,934万円余

I 特別支援学級の学級編制の標準、及び本市の1学級当たりの在籍者数の平均は何人か。

[教育長]

  • 学級編制の標準は、1学級あたり8人。
    福岡市における特別支援学級の在籍者数の平均は、平成22年度では、1学級あたり471人。

 

 知的障がいと言っても、近年は、行動障がい等の重複障がいを併せ持っ児童生徒も急増している。1人体制は、保護者にとっても、子どもの教育権が守られているのかどうかなど不安がある。

J 知的障がい特別支援学級の定数8人を本市独自で5〜6人に緩和するとか、5人以上の学級には嘱託員を配置するなどの支援が必要と考えるが、所見を伺います。

[教育長]

  • 特別支援学級の教員配置は、学級編制の標準に関する法律にそって行われているが、特別支援学級の教員には、在籍する児童生徒一人一人の実態に応じたきめ細やかな指導が求められていることを踏まえ、配置の充実について今後とも国・県に要望していく。知的障がい特別支援学級においても、緊急度の高い児童生徒が在籍する場合には、特別支援教育支援員を配置するなどの支援策を講じている。

 

 特別支援学級の子どもたちの実態からも、学級編成の標準が8人という法律は、実態に添っていない。教員の配置の充実を、国・県に強く要望していただくこと、当面は、本市独自で嘱託員もしくは支援員の配置など人的支援に努めていただく事を要望する。

 

2.「学枝図書館における教育の充実」

 人の気持ちを想像し、適切な言葉で自分の気持ちを表現するコミュニケーション能力の育成は、生きていく上で大変重要である。「読む事」「聞く事」は、豊富な語嚢を身に着けるだけでなく、イメージする力も育まれる。単なる知識の獲得でなく、根拠を明らかにしながら、自分の意見を述べることのできる力をつけてこそ真の読解力。新学習指導要領がめざしている探求型、活用型の読解力を身につけるために学校図書館は不可欠と考える。

 教育活動においても、学力の基礎となる読解力や豊かな感性を身につける読書教育の取り組みが、多くの学校現場で実践され、学力保障の一環としても取り組まれている。今や、学校図書館は、児童生徒の自発的かつ主体的な学習活動を支援し、教育課程の展開にも寄与する学習情報センターとしての機能も期待され、一層の充実が求められている。

 福岡市教育委員会は、2005(H17)年3月、「子ども読書活動推進計画」を策定し、子どもの読書環境づくりを推進してきた。

@ この間、推進計画が掲げる各施策について、学校で取り組みをすすめて来られたと思うが、学校における取り組みの課題として どのようなことがあるか。

[教育長]

平成16年度に策定された第1次「子ども読書活動推進計画」における取組みの成果として、

  • 朝読書を実施する学校数が増加したこと
  • 学校図書館ボランティアの活用が進んだこと
  • 児童生徒の月別平均読書冊数が、全国平均を上回ったこと

反面、課題としては、

  • 子どもにとって利用しやすい学校図書館を整備する必要があり、
  • 図書館を通して、本の楽しさを伝えたり、調べ学習をさらに充実させたりする必要がある、

と評価している。

A 地域、保護者の協力によって読書ボランティアが活発になっているが、学枝図書館ボランティアを活用している学校とその割合、また、その活動内容はどういうものか。

[教育長]

学校数とその割合について、平成22年度では、

  • 小学校146校中 131校で、89.7%、
  • 中学校 69校中 17校で、24.6%

 活動内容としては、読み聞かせや本の紹介、読書意欲を高めるための環境整備、貸出と返却業務などを行っている。

B 2003年度から12学級以上の学校においては、司書教諭を配置することが義務付けられているが、本市における2010年度の司書教諭の配置状況と、専任かどうかお尋ねします。

[教育長]

  • 司書教諭については、全学校に置く方針としているが(設置義務12学級以上)、例外として、小規模校で有資格者の配置ができない場合に未配置となっている(未配置:平成22年度は6校)
  • 司書教諭は,学級担任や少人数指導担当などを行いながら司書教諭としての業務を行う。

C 司書教諭の職務内容は、学校図書館の図書等の整備や図書館活動の実施において中心的な役割を果たすことはもちろんだが、学校図書館ボランティアとの連絡調整、児童生徒への読書や図書館活動に対する指導など多岐にわたっている。担任等の業務をしながら本来の機能を十分に果たせていると思うか。

[教育長]

  • 各小中学校では、校務分掌などの工夫を行い、司書教諭が作成した学校図書館推進計画に基づきながら、学校全体として、組織的に図書館教育の充実を図るなど、司書教諭としての職務を果たしている。

D 専任でない司書教諭では授業中や休み時間等に、図書館で児童生徒への読書や図書館活動に対する指導などが不十分となることは否めない。司書教諭の職場環境の改善が必要と考えるが所見を伺います。

[教育長]

  • 小中学校では、司書教諭が立てた学校図書館の推進計画を、それぞれの教員が分担し、協力する体制づくりや、学校図書館ボランティアとの連携を行っている。さらに、児童生徒が、本の整理や本の紹介をしたり、貸し出し業務を行ったりするなど、児童生徒による図書委員会活動の活性化も図っている。

E 過去5年間(2006年度〜)の学校司書の配置状況はどうなっているか。

[教育長]

  • 平成18年度から20年度までは、15名の学校司書を30校の小学校に配置している。
  • 平成21年度と22年度は、学校司書1名が,中学校ブロック内の小学校1校と中学校1校を担当する体制で、30名を配置している。
  • 平成23年度からは、新たな30の中学校ブロックに配置換えをしている。

 

 司書教諭を補助し、学校図書館をより効果的に運営するためには、学校司書の果たす役目は大きく、学校図書館ボランティアでは担えないもの。

F これまでに学校司書が配置された学校数と、学校における配置前後の効果についてお尋ねします。

[教育長]

  • 平成8年度から学校書司書の配置が開始され、これまでに、小学校で110校、中学校で64校に配置した。
  • 学校における配置前後の効果として、児童・生徒の読書への興味関心が高まり、読書冊数
    が増えるとともに、教科の学習で活用する姿が多く見られるようになったことなどがあげ
    られる。

G学校司書の任用及び勤務体制はどうなっているか、併せて、日額報酬について、2010年度の決算額は。

[教育長]

  • 公募・選考試験により、非常勤嘱託員として任用している。
  • 任用期間は4月1日から翌年の3月31日まで。ただし勤務成績が良好な場合は、任用期間満了後1年を超えない範囲で4回を上限に再任用できる。
  • 勤務体制は,1日4時間・年間150日勤務、日額報酬6,580円で、平成22年度決算は30,854千円。

 

 勤務時間が1日4時間、年間150日間の勤務体制は以前と変わりないが、2008年度までは1人が2校を担当していた。現在は、30人の学校司書を30の中学校ブロックに配置とのことだが、1小1中の中学校ブロックでない限り

H 学校司書が担当する学校数が増え、その分1校での勤務時間も減っていると考えられるがどうか。

[教育長]

  • 小学校が複数校ある中学校ブロックにおいて、配置校ではない他の小学校に対して、年間で、合計6日間勤務するようにしており、配置校1校についての勤務時間は大きく減少してはいない。

 

 2008年度までは、配置期間は同一校3年間だったが、現在は2年間となっている。配置校数は増えるが、配置校数をただ増やせばいいというものではない。1小学校以外は支援校ということですが、年間6日間とは余りに少ない。支援校が2校あるところは、学校司書が来る日数が年間3日間とされる。こんな状況で配置済みとするには問題がある。また、今年の3月まで配置されていた学校では、わずか半年で、本が散乱し、書架の整理もおぽつかない、司書教諭も気にはなっているが手が回らないということも聞く。

 本年5月に策定された「第2次子ども読書活動推進計画」には、「学校司書の効果的な配置の実施に努める」としながらも、「計画の位置づけと性格」の項には、施策の実施に当たって、「各年度の財政状況や行政改革の要請などの社会環境も踏まえ、事業手法の工夫・見直しによる事業費の縮減、既存事業や体制の積極的見直しに努めるなど、計画的、かつ効率的に事業を推進していきます」と、はたして本気で読書活動を推進しようとしているのか疑問を抱かせるような表現も見られる。子どもの読書活動を推進しようという新たな計画にはそぐわない違和感のある文章だ。

 本年度より県の委託事業として始められる「小学生読書リーダー」の取り組みについても、司書教諭や学校司書との連携があってこそ、子どもの読書リーダーとしての力が発揮できるものと考える。今や「総合的な学習の時間」など、学校図書館と学校司書が授業で果たす役割は大きい。

 学校図書館は、ただ単に本の貸し出しをするだけの場所ではなく、「豊かな学びを創る学校図書館」として、学校教育の中核に据えて、その機能を高め、活用を広げることが求められている。

 そのためにも、

I 司書教諭の職場環境の改善と学校司書の全校配置を強く求める。第2次読書活動推進計画を策定した今こそ、学校教育における読書活動の推進を積極的に行うべきと考えるが 教育長の所見を伺います。

[教育長]

  • 子どもの読書活動は、言葉を学び、感性を磨き、創造力を豊かにするなど、「生きる力」を身につける上で重要であることから、学校全体で読書活動に取り組む必要があると考えている。
  • そのため、学校長の方針のもと、司書教諭が中心となって、組織的に取組む体制づくりを行うとともに、学校司書を配置して得られた成果を生かし、学校図書館ボランティアなどと連携を図りながら、読書活動を推進していくことが重要である。
    教育委員会としても、今後とも、子どもたちが意欲的に本に親しめるよう、読書活動の充実に努めていく。

 

 文部科学省は、「国民の読書推進に関する協力者会議」が取りまとめた、「人の、地域の、日本の未来を育てる読書環境の充実のために」と題する報告書を9月2日に発表した。報告書では3点を提言していますが、提言1「読書で人を育てる、読書を支える人を育てる」には、「司書や司書教諭等の読書に関する専門的職員を充実させる」ことを明確に述べている。資料編には、「学校図書館担当職員の状況」:の表で、年々、学校司書を設置している小中学校が増加し、平均で45.5%までになっている。

 第1次「予ども読書活動推進計画」の課題として挙げられた、「利用しやすい学校図書館」の整備や、「本の楽しさを伝えたり、調べ学習の充実」を図ることなどは、学校司書の力に寄るものが大である。課簡解決のためにも、学校司書の拡充を強く求める。

 

3.「学校教育費の保護者負担軽減策」について

 2010年4月から実施された高校授業料無償化法の成立によって、公立高校は授業料不徴収となり、私立高校は、公立高校授業料相当額の11万8,800円が助成されることになった。しかし、文部科学省の「子どもの学習費調査」では、2009年度1年間の授業料以外で学校にかかる教育費用は、公立高校で24万円、私立高校では約46万円にも登っている。小・中学校においては、学校給食費を含む1年間の教育費用は公立の小学校で約97,000円、中学校で約175,000円となっており、昨今の経済状況の中で、保護者の教育費負担は大きなものとなっている。

 そこで、給食費について尋ねる。

@ 過去3年間の給食費の収納率と未納額はいくらか。2009年度より公会計化となったが、それによる収納率、未納額の変化はどうなっているか。

[教育長]

  • 給食費の過去3年度の収納率と未納額は、それぞれ平成20年度が、98.9%、5,249万6千円。21年度が、98.7%、6,097万9千円。22年度が、98.6%、6,566万3千円 である。
  • なお、平成21年9月の公会計化後、口座振替による納付を積極的に推進し、口座振替率が上昇したことから、厳しい経済状況の中でも、収納率、未納額とも、ほぼ横ばいの状況で推移している。

 

 収納率は、0.1〜0.2%ずつのほぼ横ばいといっても、未納額にすると、2009年度は前年度に比べ、約848万円の増、2010年度は約468万円の増となっている。

A 滞納者に対する督促は誰がどのような方法で 何人体制で行ってますか。

[教育長]

  • 係員1名、嘱託職員3名の計4名で、催告書の発送、電話による催告、家庭訪問での催告などを行っている。

B 給食費の公会計化は、学校における教職員の事務負担軽減策の一環ですが、その成果は上がっていますか。

[教育長]

  • 年度当初に給食実施日や児童生徒情報の入力など、一部の事務については学校で行っているが、給食費に関する事務の大部分を占める支払額の通知や徴収、督促、現金の管理、さらに食材料費の支払などの事務がなくなり、学校事務負担軽減の成果は十分に上がっているものと考えている。

 

 現場の声では、確かに軽減された事移はあるものの、新1年生の名簿入力から、新年度の学級編成による全クラスの名簿入力等、児童・生徒管理システムのデータ整理を新学期の短期間に行わなければならず、年度初めの多忙さは尋常ではない。事務負担の軽減は期待したほどは感じられていない。せめて、年度初めの多忙期に人的措置など更なる事務負担軽減策も必要。

 10月1日から子ども手当支給額変更を柱とする特別措置法が施行され、自治体からの要望で、給食費と保育料の天引きが可能になった。収納率100%というだけでなく、毎月銀行へ入金に行く手間などの保護者の負担軽減ということからも、

C 子ども手当から給食費の天引きを行うことについて、教育長はどう考えますか。

[教育長]

  • 子ども手当からの給食費の天引きについては「保護者の同意」が必要とされており、給食費を滞納している保護者の同意が得られる可能性が低いと考えられること、全保護者を対象とする場合はシステムの改修などに多額の経費が必要となることなどから、現時点では子ども手当からの給食費の天引きは考えていない。
  • しかし、今回の法改正に際し、厚生労働省より「過去の滞納分についても天引きが可能である」という見解が示されたことから、裁判における和解条件とするなど、滞納対策としての活用について検討していく。

 

 給食費を除く学校教育費について尋ねる。憲法26条に「義務教育の無償」と謳っているが、保護者負担の学校教育費は給食費にとどまらず、学校間の差はあるものの、テストやドリル・参考書、習字・水彩絵の具・裁縫などの用具類等の教材費、PTA会費、修学旅行などの校外学習経費、学用品費など、大変多額となっている。福岡市のある学校での給食費を除く2009年度の学校教育費は、公立小学校6年生で40,000円余、中学校3年生は約78,000円となっている。

D これらは全て学校徴収金として保護者から徴収しているが、徴収金の未納の実態について教育委員会はどのように把握されてますか。

[教育長]

  • 学校徴収金は、保護者と業者を契約当事者とする金銭であり、学校長が保護者から預かり、保護者の委任を受けて業者に支払うという性質のものであり、教育委員会としては、その未納の実態を把握していない。

 

 学校教育における必要な教育費用や、保護者からの徴収額、その収納状況などは、教育委員会が把握しておく責任があると考える。

 教育活動費には、公費負担と私費負担とがあり、学校徴収金は私費負担に当たるが、

E 福岡市教育委員会の「学校徴収金事務処理マニュアル」には、私費負担としての学校徴収金はどのように定義されているのか、それはどのような物品か。

[教育長]

  • 学校徴収金は、学校の教育活動上必要となる経費のうち、公費以外の経費で、学校が取り扱うこととしているもの。具体的には,学習参考書や文房具など児童生徒個人の所有物となる教材教具、修学旅行費や卒業アルバム代など直接的な利益が児童生徒個人に還元されるもの、生徒会費や部活動経費などがある。
  • 学校徴収金として徴収できるものは、直接的な利益が児童生徒個人に還元されるものの経費、生徒会活動や部活動に係る経費などとなっている。しかし、学習効果をはかる評価用テストは、学校徴収金のどの項目にも明記されていない。学力向上の取り組みを盛んに言われているが、テストやドリルなどの副教材は学力の向上に不可欠なもの。

F ましてやテストは、評価用として必須のものであることから公費とすべきと考えますが。

[教育長]

  • 学習効果を測るテストとしては、全国学力・学習状況調査など公費で行うものの他、市販のテストを活用している学校がある。これは、保護者への負担にも配慮しながら学校の方針に則り、学校の判断で行われているものであり、ご理解をお願いする。

 

 評価用テストは学習の定着度をはかるためのもので、子どもにとっても教職員にとっても、学力保障の手立てどしては、欠かせないもの。

 教材費や修学旅行費などは、業者への納入期限が限られているため、未納がある場合には、担任が立て替えをしたり、教材業者へ負担を強いたりすることがあると聞く。中小の教材業者は、メーカーに借入金で支払うため、学校の支払いが遅くなればなるほど利息が膨らみ、資金繰りに苦労している業者もあることを聞いている。地場産業としての中小の業者を守ることも大切。算数・国語のテスト代を公費化するだけでも、保護者の負担軽減が図られると考える。前向きな検討を強く要望しておく。

 文科省は9月24日、2010年度の就学援助制度の支給対象者は過去最多の155万1083人に登ったことを発表した。福岡県も対象者の増加割合が22%と高くなっている。

G 本市における、過去3年の就学助成制度対象者数と援助費の決算額はどうなっているか。

[教育長]

過去3年間の就学援助を認定した準要保護児童生徒数及び就学援助の決算額は、

  • 平成20年度 認定者 2万4,031人,決算額 約16億8,159万3千円
  • 21年度 認定者 2万5,370人,決算額 約17億6,671万7千円
  • 22年度 認定者 2万6,054人,決算額 約18億4,147万2千円

H 本市において保護者への就学援助制度の周知はどのように図られているのか。

[教育長]

  • 市立の小中学校全児童生徒の保護者に対し毎年3月に、新入学児童生徒には入学式に、転入者には転入時に「就学援助制度のお知らせ」というリーフレットを配布している。内容や手続については,市政だよりや教育委員会のホームページに掲載している。

 

 参議院事務局企画調整室の原咲子さんは、保護者の「制度利用への躊躇」や「支援を必要とする世帯ほど情報が届きにくい」こと、「就学援助説明会」も全国の約8割の市町村では行われていないことを指摘している。

I 入学説明会や入学式、PTA総会などの場で、保護者へ就学援助制度の説明会をすぺきと考えるが、行っている学校の把握はしているか。

[教育長]

  • 就学援助に関しては、全ての小学校において入学式の際に、学校生活に関する説明会を開催し、その中で保護者にリーフレットを配布し、周知を図っている。

 

 児童生徒の家庭の経済状況の変化など真っ先に気づくのが担任等。家庭訪問など機会を捉えての情報提供は重要。そのためにも就学援助制度については、教職員が熟知しておく必要がある。

J 新規採用者の増加とともに就学援助制度について教職員への学習の場など周知が必要と考えるが、その手立てについてお尋ねします。

[教育長]

  • 就学援助制度については,全児童生徒の保護者にリーフレットを配布しているが、学級担任の役割も重要であり、教職員への周知を徹底する。

 

 現在、義務教育無償制の内容は、公立小中学校における授業料無償及び小中学生の教科書代の無償にとどまっている。学校教育法第19条は、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」としている。必要としている家庭に情報が届くよう現場実態を把握しながら取り組んでいただくよう要望する。

 最後に、本市の教育費全般について尋ねる。

K 過去3年度の一般会計に占める教育費の割合と決算額はいくらか。

[教育長]

過去3力年の一般会計に占める教育費の割合及び決算額は、

  • 平成20年度 6.6% 441億5,361万円、
  • 21年度 7.3% 540億29万9千円、
  • 22年度 6.8% 513億1,534万7千円

 

 校舎の耐震化や学校施設整備に関わるものなどのハード面や、給食費の公会計化などで年度ごとに決算額の増減はあるが、一般会計から見る教育費は例年7%前後で決して多いとはいえない。

 「義務教育は無償」としながらも、実に様々なものが保護者負担となっており、学校配当予算と保護者からの徴収金がほぽ同等額という話も学校現場から聞く。学校で扱う微収金の金額の大きさは、もはや「義務教育無償」の理念とは程遠い現実といわざるを得ない。来年度から中学校では、新学習指導要領の施行により、武道が必修となることから、武具の購入も必要となる。学校教育費として保護者からどのくらい微収しているのか、教育委員会としても把握し、保護者の教育費負担軽減に努めることを要望する。各学校で教育活動等に公費として使える学校配当予算も、この間、微増はしているが、授業で使用する教員の指導書や児童用の机・いすなど、学校予算で購入しなければならなくなった品目が年々拡大され、現場では用紙代や修繕費など学校予算は窮屈になっていると聞く。その上、財政難を理由に、今年度の後期予算は5%保留されている。限られた教育費を教育委員会内部で奪い合っても子どもたちの教育環境は改善されない。要は、子どもたちの豊かな教育の権利を保障するための教育予算の枠の問題である。教育は、未来への先行投資とよく言われるが、

L 教育予算は、「財政問題ではなく、政策の優先順位にかかわる」ものと考える。最後に福岡市の教育施策に対して、市長の決意の程を伺います。

[市長]

  • 福岡市では、経済的な成長と安全・安心で質の高い暮らしのバランスがとれた「人と環境と都市が調和のとれたまちづくり」を進め、アジアのリーダー都市づくりのために必要な施策を強化していくこととしている。
  • アジアのリーダー都市づくりのためには、福岡の将来を担う、知・徳・体のバランスのとれた子どもの育成や教育環境の整備は、たいへん重要である。
  • このため、今後とも教育委員会の意見を聞きながら、教育予算の充実を図り、教育施策の推進に努めていく。