第5回福岡市議会定例会(12月13日〜21日)

男女共同参画の推進
「性犯罪被害の防止及び犯罪被害者への支援」について

 福岡市は本年2月、今後5年間に取り組む施策の方向と内容を定めた「第2次男女共同参画基本計画」を策定した。7年間の取り組みで、意識面での平等感は男女ともに徐々に改善しつつあるものの、固定的性別役割分担意識は未だ根強く残っており、女性への暴力の根絶、政策・方針決定過程への女性の参画促進、ワーク・ライフ・バランスの普及促進など、まだ多くの課題が残されている。中でも、「女性への暴力の根絶」の取り組みにおいては、この間、主にDV防止と被害者の支援策について、まだまだ不十分ではあるものの配偶者暴力支援センターの設置等相談体制の充実に向けた取り組み等が徐々に進められているものの、「性犯罪の防止及び被害者支援」については、具体的な取り組みが見えて来ないことから、「性犯罪被害の防止及び犯罪被害者への支援」について具体的な施策を求めた。

 福岡県警によると、福岡県は、人口10万人当たり、性犯罪の発生率が、2010年、全国でワースト2位となっている。若者が多い福岡市においても、人口1000人当たりの発生率が全国的に高く、昨年は政令市でもワースト3位となっている。

@2010年の強かん事件及び強制わいせつ事件の被害件数を全国、福岡県、福岡市別に尋ねる。

【市民局長】

  • 強かんは、全国1,289件 福岡県76件、福岡市31件、
  • 強制わいせつは、全国7,027件、福岡県470件、福岡市150件

Aそのうち、20歳未満の未成年が被害者となった事件はそれぞれ何%を占めているか。

【市民局長】

  • 強かんは、全国約42%、福岡県約45%、福岡市約39%
  • 強制わいせつは、全国約54%、福岡県約47%、福岡市約31%

B「性犯罪の防止及び被害者支援」に本市として、これまでどのような取り組みを行なってきたのか。

【市民局長】

  • 性犯罪の防止の取り組みは、護身術マニュアルの作成・配布、防犯出前講座の開催、福岡市や警察、民間企業で構成する「コスモスネットワーク」への参画、女性の安全・安心を考えるシンポジウム等の開催
  • 被害者支援の取り組みは、福岡県、北九州市と合同で「福岡犯罪被害者総合サポートセンター」 を開設、市内部の犯罪被害者等支援連絡会議の設置、市民公開フォーラムの開催

Cこの性犯罪の現状について、どのようにお考えか。

【大野副市長】

  • 福岡市では、性犯罪の認知件数が人口千人当たり、19政令指定都市中ワースト3位と深刻な状況に大変、憂慮すべき状況にある。市民の安全・安心を確保する観点から、早急に取り組むべき重要な課題と認識している。このため、行政の立場から女性の意見を広く取り入れた新たな性犯罪防止対策を講じるため、女性委員のみで構成する「女性目線による性犯罪防止検討会」を設け、意見を性犯罪防止対策に反映することとした。街路灯設置などの防犯環境の整備を行い、被害にあわないための環境づくりはもちろんのこと、検討会で出された意見等に基づき、女性の視点を取り入れた性犯罪防止対策を推進する。

D本年5月、大野副市長提案の元、「女性目線による性犯罪防止検討会」を設置され、7月25日、検討会は報告書を市長へ提出しているが、検討委員会設置の目的と委員構成について尋ねる。

【市民局長】

  • 設置の目的は、性犯罪被害を未然に防止することが重要であるという観点から、「女性自身が性犯罪から身を守るための自己防衛策」、「効果的な性犯罪防止対策」について検討を行い、意見を性犯罪防止施策に反映することとしている。
  • 委員構成は、大学等の女子学生2名、女子高校の女性教諭2名、市内企業の女子職員2名、福岡県警の女性警察官2名、NPO団体の女性職員1名、市役所の女性職員2名、合計11名である。

E「性犯罪防止に関する報告書」の概要について尋ねる。

【市民局長】

  • 女性自身による性犯罪防止策として、自己防衛等の必要性の意識づけ、女性自身からの呼びかけ、自己防衛策の実践。
  • 広報啓発として、女性に親しみやすい性犯罪防止シンボルマークの作成、受け取り易い啓発物の配布や啓発場所の選定など効果的な啓発方法の検討。
  • 行政として取り組むべき性犯罪防止対策として、性犯罪防止のための教育の必要性、関係機関・団体との連携の必要性、女性が防犯ブザーを持ちやすい社会環境をつくり、社会全体で性犯罪防止対策を推進するための法的整備。

Fこの報告書を受けた後、どのような性犯罪防止対策を行っていくのか。

【市民局長】

  • 平成24年から5カ年間の防犯施策の基本的な計画を定める「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」のなかに提言いただいた内容を反映させ、性犯罪防止対策を推進することしている。具体的には、事業者及び関係機関・団体が連携した性犯罪防止活動の推進や女性を対象とした防犯出前講座等の実施、性犯罪被害防止シンボルマ−クを活用した女性に受け入れやすい効果的な広報啓発活動や性犯罪防止教育等の対策を推進する。

G性犯罪にあった場合、どうすればいいのか、どこに相談すればいいのか、その連絡先はどこなのかなど、具体的な市民へ周知方法が求められるが、どのようにお考えか。

【市民局長】

 相談機関は、福岡県、北九州市と合同で「福岡犯罪被害者総合サポートセンター」を開設、福岡市男女共同参画推進センター・アミカス相談室、福岡県女性相談所、福岡県男女共同参画センター・あすばる相談室、犯罪被害者相談電話「ミズ・リリーフ・ライン」、女性への暴力ホットライン(ぐるうぷ;NO! セクシャル・ハラスメント)、各区役所家庭児童相談室がある。

 周知方法は、犯罪被害者支援の手引やリーフレットの配布、キャンペーンの開催、ホームページ、市政だよりで行っている。

 性犯罪被害には、被害者を苦しめる根深い偏見と二次被害がある。被害者が安心して相談でき、必要な情報を提供できる窓口は必要と考えるので、今後とも、ホームページ、リーフレット等を通じ日頃から女性の目に入るような広報啓発に努めていく。

【池田】

 今回の提言書に基づく「性犯罪防止シンボルマーク」を活用して、DV相談ダイヤルと一体型で、「性暴力被害の相談ダイヤル」の名刺型カードを作成することを要望しておく。

 性暴力被害者の回復支援システムは、依然として貧弱なままだが、日本でもようやくワンストップ支援センターを設置する動きが始まり、2010年4月、大阪府松原市の病院内に、「被害直後からの総合的な支援」をめざし、「性暴力救援センター・大阪(SACHICO)」通称サチコが設置されている。

 国においては、本年3月、「第2次犯罪被害者等基本計画」を策定し、支援等のための体制整備への取り組みとして、医師による心身の治療、医療従事者・民間支援員・弁護士・臨床心理士等による支援、警察官による事情聴取等の実現が可能な、性犯罪被害者のためのワンストップ支援センターの設置促進など、「性犯罪への対策の推進」を明記している。

 7月には、警察庁のモデル事業として、愛知県一宮市の病院内に、官民共同で性犯罪被害の申告や治療、相談などを1カ所で受けるワンストップセンター「ハートフルステーション・あいち」が設置された。

H福岡市においても、婦人科クリニックや病院に併設された、性犯罪の被害者を専門に支援するワンストップ支援センターの設置も必要と考えるが。

【市民局長】

  • 福岡犯罪被害者総合サポートセンターにおいて、犯罪被害全般に関する電話相談か
    ら面談、病院への付き添い等の支援までワンストップの総合的な支援を実施している。
  • 警察庁が平成22年度、被害者支援推進計画の中で構想を決め、被害の多い愛知県でモデル事業として実施し、現在、検証作業が行われており、検証結果を注視していく。

【池田】

 子どもを性暴力から守るためには、子どもたち自身が「大切な自分」を守ろうとする主体性を身につけるとともに、被害に遭った時に、どうすればいいのかなど、具体的な手だてが必要である。一方で、「加害者にならない」ための教育は、より一層重要と考える。そのためにも、学校での教育は重要である。

I男女平等教育における対等な関係づくりや命の学習に加え、セクシュアル・ハラスメントやデートDVを含んだ性犯罪防止教育の推進とそのための啓発パンフレット、教職員の対応マニュアルの作成が急務と考えるが、ご所見を。

【教育長】

  • 中学校は、市民局と連携し作成した冊子「防災・防犯・交通安全の手引き(中学生用)」を平成21年度より全生徒に配布し性被害防止教育を進めている。
  • 平成21年4月に「インターネット・携帯電話等を介した児童生徒の被害防止指導資料集」を全教師に配布し,出会い系サイトから身を守るための指導を進めている。
  • 高校は,「デートDV講演会」をすべての学校で開催するとともに,県警とも連携して、性犯罪被害防止教育の推進に取り組んでいく。
  • 教職員対応マニュアルの作成については,関係各局と連携しながら検討する。

【市民局長】

  • 学校でも活用できるような啓発パンフレット、チラシの作成について検討する。

【池田】

 性犯罪防止については、女性自身による性犯罪防止策にとどまらず、「行政として取り組むべき性犯罪防止対策」についても具体的な施策が急がれる。先月視察したスウェーデンのウメオ市では、女性への性犯罪防止のために、教育や啓発活動に加え、「夜でも女性が一人で安全に歩けるまちづくり」として、道路や公園など市民参加で女性がチェックした危険箇所の整備を行政が行なうという、ソフト面、ハード面の両面に渡る施策を展開していた。まさに、「女性目線のまちづくり」といえる。

 福岡市は、本年10月に、来年度から5年間の防犯施策の方向性を示す「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」の原案をまとめ、来年2月に策定予定と伺っている。「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」案の第3章「防犯の課題」には、「女性の安全対策」として「性犯罪防止対策の推進」が明記されているが、

J行政や企業、地域や諸団体等が一体となり、このプランを実効性のあるものとするためにも、「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」を推進するための基本事項を定める条例を制定すべきと考えるが。

【市民局長】

  • 女性の安全対策については、現在、「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」の策定
    を進めており、策定後はこのプランに基づき、関係機関・団体、地域と連携し、性犯罪防止の施策を推進することとしている。
  • 「福岡市防犯のまちづくり推進プラン」をより実効性のあるものとする観点から、犯罪のない安全で住みよいまちづくりを推進する基本的な事項を定める条例の制定について検討していく。

【池田】
 女性が安心して歩けるまちは、子どもにとっても、障がい者、高齢者にとっても安全・安心なまちとなり、まさに高島市長が提唱する「ユニバーサルシティ福岡」の理念に添ったまちづくりと考える。

 女性への暴力や性犯罪については、まだまだ法の不備が指摘されているところである。

  日本では、DVやセクシュアル・ハラスメントなどの性暴力被害が、暴行罪、傷害罪、強姦罪など、すでにある刑罰で裁かれ、性暴力そのものが未だ犯罪化されていないため、被害者の保護と加害者の処罰に限界が出ている。これらの性暴力を刑事制裁の対象として犯罪化すべきであるとして、この間、国内においても、加害者対策も含めた「性暴力禁止法」をつくろうといううねりが巻き起こっている。

 本日は、性暴力の実態を明らかにし、その対策や支援体制の不備を指摘した。

K性犯罪被害の防止及び犯罪被害者への支援に対する高島市長のご所見を。

【高島市長】
 福岡市では、誰もが思いやりを持ち、すべての人に優しいまち「ユニバーサルシティ福岡」の実現を目指している。全ての市民が安全安心に暮らせるためにも、犯罪を未然に防ぎ、犯罪の起こりにくいまちづくりを進めていく。
 特に、性犯罪については、早急に取り組むべき課題として施策を推進する。犯罪被害者に対する支援についても、相談窓口や支援策に対する認知度が低いことから広報啓発に努めるとともに、引き続き犯罪被害者サポートセンターと連携し支援に努めていく。