第1回福岡市議会定例会(2月20日〜3月27日)

○ 学校教育における子ども読書活動の推進について

 学校司書の拡充については、議会においても再三要求をしてきましたが、未だ十分なものとはなっていません。新学習指導要領が全面実施される中、国は、「読書センター」・「学習・情報センター」としての学校図書館の機能向上が必要であることや、新聞を教材として活用することが位置づけられていることから、その環境を整備するために学校図書館への新聞の配備が必要であること、更に、図書整備とともに、児童・生徒と本をつなぐ役割を果たす学校図書館担当職員、いわゆる学校司書の配置が求められているとして、2012年度より、2016年度までに学校図書館図書基準の標準冊数を整備することを目標に、約1000億円をかけて新たな学校図書館図書整備5か年計画をスタートさせます。新規措置としては、2012年度に学校図書館への新聞配置約15億円、学校司書の配置約150億円を地方交付税措置で講じるとしています。学校司書の単価を約105万円とし、小学校に約9800人、中学校に約4500人の配置分で、2校に1人の配置としています。一般財源とはいえ、自治体においてもその趣旨を生かし、学校司書の配置拡充を進めるべきと考える事から、質問をしました。

@「学校教育における読書活動の推進」に係る過去3年間の予算額と2009年度、2010年度の決算額及び、2012年度の予算額とその内容について尋ねる。

【教育長】

  • 平成21年度 予算額 1億7,586万4千円、決算額 1億8,400万1千円
  • 平成22年度 予算額 1億8,749万5千円、決算額 1億9,222万7千円
  • 平成23年度 予算額 2億1,216万2千円
  • 平成24年度 予算額 2億1,394万1千円

  • ○平成24年度の「学校教育における読書活動の推進」の内容
  • 小・中・高等学校への学校司書の配置
  • 学校図書館の図書購入費
  • 小学生読書リーダー活動推進事業

A昨年、2010年度決算特別委員会で、司書教諭の職場環境の改善と学校司書の全校配置を強く求めた際に、教育長は、「読書活動の充実に努める」との答弁だったが、2012年度の「読書活動の充実」とは具体的にどんなとりくみか。

【教育長】

  • 全校読書活動の推進
  • 学校司書を中心に、学校司書や学校図書館ボランティアと連携した取組の充実
  • 小学生読書リーダーの養成

B国が定める図書標準冊数の達成学校数は、小中学校それぞれ何校で、達成率は何%か。また、達成できていない学校の理由は何か。

【教育長】

  • 平成22年度末現在、小学校146校中74校達成で50.7%、中学校69校中52校達成で75.4%
  • 学校図書標準が達成できていない理由としては、学級数が増加したことや,達成率の低い学校に重点的に予算配分を行っている途中である。

C2007年10月の決算特別委員会での質問で、学校図書館図書標準達成校は、小学校が61校で42.1%、中学校が49校で72.1%だったが、5〜6年経過してもまだ、小学校は13校8.6%、中学校は3校3.3%の増でしかない。図書購入予算を更に増額する必要があると考えるが、本市における2009年、2010年度の小学校及び中学校の図書購入決算額及び2011年、2012年度の予算額はいくらか。

  • 平成21年度決算額 小学校83,919千円余、中学校64,130千円余
  • 平成22年度決算額 小学校80,412千円余、中学校63,695千円余
  • 平成23年度予算額 小学校85,730千円、中学校75,804千円
  • 平成24年度予算案は、小学校87,015千円、中学校76,375千円

 なお,23年度は,17%増額するとともに,22年度の国庫補助の繰り越し金54,250千円を活用して整備を進め,24年度も増額している。

D 今年度の読書リーダー認定者数と学校数は何校か、また、「小学生読書リーダー活動推進事業」を、2012年度はどのように取り組むのか。

◎平成23年度認定者数・学校数  63人・21校
◎平成24(2012)年度の取組予定

  • 23年度の成果を踏まえ,100名を超える読書リーダーの養成を目標
  • 1人でも多くの小学生が読書リーダーとして主体的・意欲的に読書活動に関わることにより各学校の図書館活動の活性化が図られるものと考える。

Eこれまでに学校司書が配置された学校数は、小学校で110校、中学校で64校だが、2012年度の学校司書の人数と配置状況及び未配置校数は何校か。

  • 平成23年度に引き続き、30名の学校司書を30の中学校ブロックに配置
  • 未配置校数は、平成8年度からの配置では、小学校36校、中学校5校

F学校司書の配置の拡充については、議会や常任委員会でも再三求めてきたが、拡充されなかった理由は何か。

  • 平成21年度から、2年間ごとに配置替えを行い、現在その効果を検証し、効果的な配置について検討することとしており,このため24年度は,新たな配置は行わないこととした。

G司書教諭や学校司書との連携があってこそ、子どもの読書リーダーとしての力が発揮できると考えるが所見を。

  • 読書リーダーが主体的に活動するためには、司書教諭の役割が重要であり,学校司書の配置校においては,司書教諭と学校司書が連携することで,効果が高まるものと考える。
  • 24年度から教育委員会事務局に,学校図書館活動に精通した嘱託員を配置し,小学生読書リーダーが主体的・意欲的に読書活動できるよう支援を行っていく。

 アンケート結果(平成24年2月)活動した17校中

○図書委員会が活性化したか
○司書教諭や学校司書と連携したか
図書委員会の活性化

学校数(%)

司書教諭等との連携

学校数(%)

とても

1校(6%)

とても

7校(41%)

だいたい

13校(76%)

だいたい

7校(41%)

あまり

1校(6%)

あまり

3校(18%)

H一般財源とはいえ、自治体においてもその趣旨を生かし、学校司書の配置拡充を進めるべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

  • 学校司書配置経費について,国が地方交付税措置を講じることは認識している。
  • 現在30の中学校ブロックを基本として,2年間配置しているところであり、今後、その効果を検証し、効果的な配置について検討していく。

I学校司書の配置効果については、学校現場の報告ですでに明らかにされている。学校司書の配置について、「効果の検証」、「効果的な配置」ということを言われるが、具体的にはどういうことか。

  • 児童生徒の読み上げ冊数の推移,読書への関心・意欲や有用感,教科書などと関連させた調べ学習の状況などを検証することが必要
  • これら検証結果を踏まえ,有効に機能できる配置方法を考えていく。

 

「効果的な配置」と言われるが、「効率的な配置」としか思えない。

 なぜなら、学校司書の配置前後の効果については、「児童・生徒の読書への興味・関心が高まり、読書冊数が増えるとともに、教科の学習で活用する姿が多く見られるようになった」とか、「図書館が整備され、学校司書に読書相談などもできることから図書館利用が増えた」ことなどが配置校からの報告で明らかになっている。さらに、子どもたちの読書活動は、読み聞かせや本の紹介、環境整備など学校図書館ボランティアの方々のご協力でも支えられているが、司書教諭を補佐し、図書館ボランティアの方々の円滑な活動のための連絡調整など、学校司書の果たす役目は大変大きいと考える。現に学校図書館ボランティアの方々からも学校司書の配置を求める声は上がっている。図書標準冊数の達成校が小学校で半数にも満たないことの理由の一つに、図書購入費が追い伝いないことに加え、不要になった図書の廃棄作業や新刊図書の入れ替え作業などが円滑に進んでいないのではないかと懸念を持つ。1996年から学校司書の配置が開始されすでに16年が経過しているにも関わらず、未だ配置されていない学校が小学校36校、中学校5校もあるということに、教育環境の不平等さを指摘しておく。子どもたちの学力保障の一環として、読書教育の果たす役目が大きいことは、この間議会でも述べて来た。学力の基礎となる言葉の概念の形成や、思考力は母語が基本であることも周知の事実である。

J本年5月に策定された「第2次子ども読書活動推進計画」の具体的実施初年度として、学校教育における読書活動をどう具体的に推進されようとしているのか、教育長の所見を問う。

  • 子どもの読書活動は、コミュニケーション能力を高めるなど,「生きる力」を身につけるために,欠くことができないものと認識している。
  • そのため,学校長の方針のもと,司書教諭が中心となって組織的に取り組む体制づくりを行い,学校司書の効果的な配置や図書館ボランティアの協力により、学校全体で読書活動に取り組んでいく。
  • 読書リーダーを中心として,子どもによる啓発活動や教科と関連させた読書活動の充実を図るなど、 子ども自身が、自ら図書館に足を運び、読書を楽しみ,読書を学習に生かしていくことを目指していく。

○「子どもの権利擁護の推進」についてお尋ねします。

  2001年に児童虐待の防止に関する法律が施行されて12年目となりましたが、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は増加を続け、2009年度には2000年度の約2.5倍の4万4211件、2010年度は56,384件となっています。増加の幾分かは、潜在化していたケースが、法整備による市民の意識により顕在化したものであるとしても、昨今の社会情勢の中で、子どもへの虐待は増え続けており、早急なとりくみが求められていることから、子どもの権利擁護の充実について質問しました。

@虐待問題は、依然として深刻である。児童虐待相談対応件数の推移と、立ち入り調査、児童の安全を確保するために保護者の同意なしに親子分離を図る職権保護及び家庭裁判所に児童養護施設への入所措置の審判を求める児童福祉法第28条申し立ての状況について、過去3年間の推移をお尋ねします。

○年度別受付状況           (単位:件)

年 度

20

21

22

こども総合相談センターの件数

342

495

604

全国の件数

42,664

44,211

56,384

 (平成22年度は福島県を除いた数値)


○立ち入り調査件数

年 度

20

21

22

件 数

2件

0件

5件

○職権保護件数

年 度

20

21

22

件 数

29件

47件

70件

○児童福祉法第28条申し立て件数

年 度

20

21

22

件 数

7件

5件

5件

A児童福祉司の人数と1人あたりの担当件数について、過去3年間の推移を尋ねる。

 児童福祉司 担当件数 (こども支援課)(こども緊急支援課)(平均)
 21年6月末 24人   未集計     114ケース
 22年6月末 25人   115ケース    90ケース   (平均107ケース)
 23年6月末 28人    72ケース   84ケース   (平均75ケース)

B市内7区すべてに、子育て全般の相談にきめ細かく対応する「子育て支援課」が新設されて、3年が経過するが、各区の子育て支援課における児童福祉司の状況はどうなっているか。

  • 児童福祉法では、児童福祉司は、社会福祉士などの任用資格を取得後、児童相談所に配置された職員であるため、各区子育て支援課には、児童福祉司はいないが、各区子育て支援課は地域に身近な子育て相談や児童虐待通告の窓口になっている。

 各区に子育て支援課が配置され、相談体制が強化されたことで、子育てに悩む親の存在や、虐待の早期発見につながり、事案に対する対応も求められ、より一層の機能強化が必要と考える。えがお館において、近年、児童福祉司の増員は図られてはいるものの、2011年6月末でも、児童福祉司1人が担当するケースが平均75ケースという多さである。

C各区子育て支援課は、児童虐待通告先に指定されているということだが、各区に専門家を配置し虐待相談に対応できるようさらに機能強化を図る必要があると考えるが所見を問う。

  • 各区子育て支援課では、平成23年度に保育士を6人増員し、平成24年度は3人の増員を予定しており、保育士など専門知識を有する職員を配置して、児童虐待防止をはじめとした地域における子育て支援の充実に努めている。さらに、区では、子育て支援課に加え、保健部門の保健師や助産師を増員して体制強化を図り、虐待の未然防止、早期発見に取り組んでいく。

D児童福祉法施行令の規定に従えば、本市は何人の児童福祉司の配置となるか。

  • 施行令では、児童福祉司の担当区域は、人口おおむね5万から8万までを標準と定めている。
  • 本市の人口24年3月1日現在、1,483,322人では、19人から30人が標準となる。

E西欧では、職員1人あたりのケースは20数件と言われている。そもそも国の配置基準自体が、他の先進国と比べても格段に弱く、必要な体制が取れていない状況にある。国は、今年度に引き続き、「住民生活に光をそそぐ事業」として、2012年度の児童福祉司増員などに充てるとして、普通交付税措置を50億円増の350億円とした。この活用も含め、配置基準を本市独自に設定すべきと考えるが、所見を問う。

  • 相談の状況等を勘案しながら、相談体制の強化を図っていく。

F虐待を受けた子どもの中には、虐待による情緒的な課題を抱え持つ子どもや、発達障がい児など個別的・治療的ケアを必要とする子どもの割合が増加している。心のケアや支援の充実を図るためには、児童心理司や精神科に明るい医師が必要と考える。児童相談所においては、児童福祉司と児童心理司が1対1で対応できることが望ましいと考えるが、児童心理司の人数について、過去3年間の推移を問う。

 

20年度

21年度

22年度

23年度

児童心理司

 7人

7人

7人

8人

G里親に委託されている子どもの定期的・継続的な通所カウンセリングの必要性などを勘案すると、児童心理司の不足は否めない。充実した相談支援のためにも、児童心理司の更なる増員を要望しておく。過去3年間の虐待相談件数は、342〜604件と高い水準にあり、社会的擁護を必要とする被虐待児が増加していると思われるが、一時保護所への入所状況及びその主な保護理由、被虐待児の割合について、過去3年間の推移を尋ねる。

○一時保護所入所状況 実人員数(構成比)

 

養護

虐待

非行

育成・その他

20年度

178(49.2)

88(24.2)

84(23.1)

13(3.6)

363

21年度

218(56.2)

59(15.2)

98(25.3)

13(3.3)

388

22年度

131(38.1)

93(27.0)

108(31.4)

12(3.4)

344

H一時保護所であるえがお館は、2008年に35名から40名へと一時保護所の定員増が図られたが、2008年度から2011年度までの、1日の平均保護人数及び定員を超えた日数は何日あったのか。

 

20年度

21年度

22年度

23年度

1日平均保護人数

 38.1人

 37.3人

 44.3人

 39.0人

定員超過日数

 127日

 87日

 300日

 119日

I一時保護の期間は、原則2ヶ月を超えてはならないとされているが、平均保護日数は何日か、また、一時保護終了後の子どもの処遇はどうなっているのか。併せて、保護日数2ヶ月を超える子どもの人数と、最も長期に入所している子どもの保護日数とその理由について尋ねる。

 

20年度

21年度

22年度

23年度

平均保護日数

 38.4日

 33.6日

 44.9日

 39.2日

2ヶ月超過児数

  75人

 70人

  83人

  73人

*23年度は、平成24年1月末現在

  • 一時保護終了後の子どもの処遇は、約6〜7割の子どもは家庭に帰っており、2割前後の子どもが児童福祉施設に入所、1割弱の子どもが里親委託になっている。
  • 平成23年度に、最も長期に保護中の子どもの保護日数は24年2月末現在295日で、虐待
    による保護で子どものアセスメントや実親との調整、処遇決定に時間を要した。

J昨年度は、一時保護所はほぼ連日が定員オーバーの状態だったといっても過言ではなく、子どもたちの養育環境としては看過できない現状。これを改善するためには、子どもの処遇先の確保が喫緊の課題と思われる。本市には3箇所の児童養護施設があるが、その定員数と過去3年間の措置されている現員数の推移及びその割合を問う

 

22年2月1日

23年2月1日

24年2月1日

定員(A)

323人

315人

306人

措置人数(B)

273人

265人

255人

割合(B/A)

84.5%

84.1%

83.3%

K近年、児童養護施設には、余裕があるにもかかわらず、一時保護所には、2ヶ月超過児童が70人〜80人もいる。その理由を問う。

  • 愛着障がいや発達障がいを抱え、より丁寧なケアを必要とし、大規模な児童養護施設における集団生活になじまない子どもが増えているためである。

L行き先の決まらない子どもたちの不安やストレスを解消するには、一日も早く、処遇先を決定することが望まれるが、今後、どんなとりくみを推進されようとしているのか。

  • 子どものニーズに応じた処遇をすることができる里親やファミリーホームを増やしていくとともに、施設の小規模化が必要と考えている。

M社会的養護を必要とする子どもが激増する中においても、従来わが国では施設養護が中心となっていたが、虐待による愛着障がいや発達障がいがあるなど丁寧なケアを必要とする子どもについては、できる限り家庭的な環境の中で、特定の大人との継続的で安定した愛着関係の下で養育が行われる必要があると考える。2011年7月に、国の審議会において「社会的養護の課題と将来像」が報告されたが、報告書には、社会的養護の質・量の拡大、職員配置基準の拡充や家庭的養護のほか、自立支援の推進などが提言されている。特に、里親・ファミリーホームなどの家庭的養護に関しては、委託を社会的養護の3割以上にするとして、今後は家庭的養護を優先していくという原則が国からも示されており、里親を増やすことは全国的にも大きな課題となっている。
  そこで、本市における、過去4年間のファミリーホームを含む里親登録数、委託した里親数および委託児童数、里親委託率の推移について問う。

       19年度 20年度 21年度 22年度 
里親世帯数   76   77   73    85
委託世帯数   39   40   40    51
委託児童数   65   75   85   105
里親委託率  15.6% 18.3% 20.9%  24.8%

N本市では2004年度に6.9%だった里親委託率が、6年後の2010年度には24.8%と飛躍的に伸び、全国でも注目をあびている。委託率が伸びた要因について尋ねる。

  • 平成17年度(2005年度)からNPOと共働で里親制度の普及啓発と支援事業を行うとともに、18年度から里親支援専任の係を設置するなど、里親・里子への支援体制を整備・拡充してきたことが主な要因と考えている。

 NPOと共同で始められた「市民参加型里親普及事業」が開催したフォーラムなどで、社会的養護の現状や里親制度について身近な問題として知ることができたことが、多くの市民の関心を呼び、心を動かしたと思われる。この間、共同事業を進めてこられたNPOの皆さんや担当者には敬意を表したい。

O2011年度の登録里親数は85名ということだが、里親家庭で暮らすことになっても、転校の必要がなく、友だち関係も変わらないなど、子どもにとっての負担が少なくてすむように、市内146校区すべてに里親登録者がいることが望ましいと考えるが、現在、里親登録のある校区は何校区でそれは、全校区の何割になるか。

  • 平成24年2月1日現在、養育里親の登録があるのは53小学校区。全小学校区(146校区)の36%(3〜4割)

P子どもが居住する校区内で一時保護の役割を果たし、短期間預けられる里親家庭の開拓を進めてはどうかと考えるが、所見を問う。

  • 短期間だけでも委託できる里親家庭の開拓については、今後、検討していきたいと考えている。

Q近年、被虐待児には、発達障がいや情緒面での問題を抱える子どもの委託が増加していると聞く。虐待等により心身に傷を受けた子どもを養育する専門里親だけでは、対応できないのではないかと危惧をするが、その実態はどうなっているか。

  • 里親だけで悩みを抱えこんでしまうことのないよう、発達障がいや子どもの心理に関する研修会・里親サロン等を開催するほか、児童心理司と一緒に定期的な家庭訪問や通所指導を行うなどの支援に努めている。

Rこれまで以上に、一人ひとりの子どもの状況に合わせた治療的ケアと養護が求められているが、その専門性確保のための里親研修はどのように取り組まれているのか。

  • 里親認定前に里親養育論等の研修を実施するほか、発達障がいや子どもの権利等に関する専門研修を年2回実施。また、フォーラムや里親サロン、専門里親研修、全国および九州地区の里親研修会等について開催若しくは参加。

S里親委託が増えれば、当然、レスパイトケアなど里親や里子への相談支援の体制を強化する必要があると考える。里親へのレスパイトケアとして、どんな事業を行っているのか。

  • 里親が養育に疲れ、一時的に休息が必要な時や、病気などで養育できない時に、他の里親や施設で、里子を一時的に預かるレスパイト・ケア事業を実施。

(21)親サロン等での里親同士の情報交換は大変貴重な場であると聞く。しかし、そのサロンも1〜2ヶ月に1度の開催で、緊急的な相談は児童相談所へということになる。子どもの状態が深刻など里親からの緊急時の相談において、精神科医など専門家の常駐が必要と考えるが、所見を問う。

  • 児童精神科医が週2回定期的に診察を行っているほか、必要に応じて精神科医療機関を紹介している。今後とも里親が相談しやすい環境づくりに努めていく。

(22)かつては、里親事業担当は主査1名だけだったが、2006年度より里親事業推進係としてその体制を強化している。現在、里親事業推進は何人体制で臨んでいるのか、また、平均何件の里親支援を行っているのか。

  • 里親事業推進係は現在4人体制。(係長1・係員1・里親対応専門員〈嘱託〉2〉
  • 里親対応専門員は1人あたり約30世帯を担当し、50名程度の里子を担当。

(23)里親が増えたことは、本市にとっても喜ばしいことだが、一方で、里親が増えた分だけ、里親と里子への対応ニーズが増えていく。更に、ケースワーカーは、里親と子どもに対してだけでなく、実親に対しての支援も必要。里親委託の増加に伴って、地区担当ケースワーカーの増員が必要と考えるが、所見を問う。

  • ケースワーカー(児童福祉司)は、里親対応専門員等の里親担当と子どもを担当する児童心理司とチームを組んで、里親と子どもを支援。里親委託児童数に応じた支援体制を組む必要があると考えており、24年度は(里親対応専門員を)1名増員予定。

 近年、増加傾向にある被虐待児や発達障がい児など、複雑な課題を抱えた子どもについては、里親委託後の養育家庭での対応についても様々な困難が生じやすいと考える。委託後の里親への支援体制の充実のためにも、更なる増員を強く求めておく。

(24)2009年度に少子・高齢化対策特別委員会で視察した社会福祉法人「神戸少年の町」では、虐待をした親が過ちを繰り返さないために、米国の虐待防止プログラム「コモンセンス・ペアレンティング」(CSP)をもとに独自に開発した「神戸少年の町版CSP」による育児指導の実践と普及に取り組んでいる。一時保護終了後の子どもの処遇については、家庭引取りが最も多くなっているが、親が過ちを繰り返さないためにも、また、親の元へ帰りたくても親の養育態度が改善されず、子どもの思いが届かないなどの親に対しても、再発防止のための家庭支援や、更生プログラムによる「教育」が必要と考えるが、それはどのように行っているか。

  • 保護者の状況や虐待の種類により、「コモンセンス・ペアレンティング」や「サインズ・オブ・セイフティ」等のプログラムを実施したり、心理教育を実施している。また、家庭支援員を派遣し、育児に関して具体的な支援も行っている。

(25)厚生労働省所管の独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が九州7県を含む全国4千世帯の子育て世帯を対象にした調査で、子育て中の母親の8人に1人が我が子への虐待に思い悩んだことがある実態が明らかにされた。中でも、社会との接点が薄く、育児ストレスを一人で抱え込みがちな無職の母子家庭の母親が最も高く、5人に1人ということ。虐待は、貧困や不安定な就業、薄弱な社会的ネットワークといった社会的排除をこうむっている場合が多いと思われます。つまり、貧困だとお金がないだけでなく、様々な社会的資源から事実上排除されており、あらゆる相談機関などの公的サービスに辿り着くのも自体が悪化してから、という状況が大半。不安定な雇用状況と非正規化が生み出した貧困率の増加、中でも女性の貧困化、そして、「子育ての母親責任」に見る性別役割分業やDV、地域社会の人間関係の希薄化や多様な家族形態の中での子育ての孤立化などが子育てを困難なものにさせている。今や、子どもへの虐待の背景には、経済や労働、教育・文化など社会的・政治的な問題が大きく影響していることは周知の事実である。「すべての児童は、家庭で正しい愛情と技術を持って育てられ、家庭に恵まれない児童には、これに変わる環境が与えられる」これは、児童憲章の言葉である。更に、子どもの権利条約第20条には、「一時的もしくは恒久的にその家庭環境を奪われた児童または児童自身の最善の利益にかんがみ、その家庭環境に止まることが認められない児童は、国が与える特別の保護及び援助を得ける権利を有する」と規定している。社会的養護の基本は、子どもたちに毎日当たり前の生活を保障することにある。社会的養護を必要とする子どもたちに対する権利擁護のために、里親ファミリーホームを含む里親登録者数の更なる拡充と里親支援体制の強化が必要と考える。さらには、虐待を生み出さない社会とするためには、児童相談所の体制強化に加え、子育て支援にとどまらず、学校におけるスクールソーシャルワーカーの充実や、男女平等社会、母子家庭の母親の就労支援など、行政が総合的に養育状況を改善することが必要と考えるが、市長の決意の程を伺がう。

  • 里親制度の推進については、本市は、過去6年間の里親等委託率の伸びが全国一となっており、平成24年度はさらに里親の支援体制を充実させていくこととしている。今後とも、社会的養護を必要とする子どもたちの権利擁護に努めていく。
  • さらに、虐待を生み出さない社会とするため、こども総合相談センターや区保健福祉センターの体制を強化するとともに、学校におけるスクールソーシャルワーカーの増員、休日夜間の子どもの養育に関する相談体制の強化を進め、子育て環境の充実に取り組む。