■ 第2回福岡市臨時会 (5月18日)
私は、社民・市政クラブ福岡市議団を代表し、第2回臨時会に提案されました、決議案第4号「東日本大震災で発生した災害廃棄物の処理に関する」決議案に反対し、討論を行います。
昨年3月11日の東日本大震災により発生した膨大な災害廃棄物が、復旧・復興の大きな障害となっていることから、国は、岩手県及び宮城県における災害廃棄物の広域処理の協力を、「焼却灰等と水がなるべく接触しないように」示しながら、全国の自治体に呼び掛けています。
しかし、福岡市の埋立工法である「福岡方式」は、廃棄物を雨水と空気とに接触させ、分解・安定化を促進する方式です。そのため、放射性セシウムが埋立場のごみに浸み込んだ水に溶け出す恐れがあり、埋立場から出る浸出水が閉鎖性の強い博多湾に放流されることから、埋め立てについて安全性の保証ができないとし、焼却から埋立までを市で完結することが難しいことからも、福岡市は「受け入れできない」と判断しています。
本決議案は、「安全性を確保した上で」としながらも、埋立が困難な福岡市において、焼却処理の受け入れを前提とした、受入れ・処理方法の検討を市長に求めるものです。
しかし、これには、大きく3つの問題があります。
一つは、焼却処分による放射性物質拡散の危険性です。
政治主導の下、昨年5月環境省は「災害廃棄物の処理指針」を策定し、その基本方針に沿って現在、広域処理を全国の自治体に要請していますが、策定された5月16日段階では、福島県以外での放射性物質による汚染は問題となっていませんでした。しかし、その後、東日本での放射性物質の汚染が広範囲に明らかとなりましたが、実態が明らかになる以前に計画された基本方針によって、放射性物質かどうかの基準クリアランスレベルが1キログラム当たり100ベクレル以下であったものを、8000ベクレル以下なら一般廃棄物として処理していいとして、現在も広域処理への協力を全国の自治体に求めています。
さらに、国は、「焼却処分場のバグフィルターで99.9%の放射能を除去できる」と安全性を宣伝し、「フィルターによって放射性物質の拡散は防げる」と断言しています。しかし、週刊金曜日が行った、主な焼却プラント施行会社13社に対するアンケートによると、「放射性物質の除去可能」との明確な回答はどこからも得られず、ほとんどが「回答を差し控えさせていただきたい」との答えとなっています。明確な回答が出せない理由として、「放射性物質除去について、実績や実証データがなく、明確な回答ができない」、「放射性物質についての知見を持っていない」、ことなどを挙げています。このことから、バグフィルターによる放射性物質除去の安全性に対する信頼性は揺らぎます。
仮に、バグフィルターが想定通りに機能したとしても、環境中に放出される残り「0.01%」も処分の全体量によっては無視できない量となる可能性があります。
自然界には多種多様の放射性物質が存在することから、微量であれば健康に影響ないとする声もあります。しかし、人工的な放射性物質と自然界にある物質とでは、体内に取り込んだ時の影響は人工的な方が危険度が増すと聞きます。
二つ目は、放射性物質を吸着させた焼却灰の運搬と処分についてです。
焼却処理施設で処理したセシウムは、最大33.3倍に濃縮され、焼却灰に吸着されます。放射性物質を濃縮した焼却灰を、移動させる際の危険度は測り知れません。京都大学原子炉実験所の小出助教授は、「焼却灰というものは、放射性物質を濃縮しているので、それをそれぞれのところで受け入れるなんていうことをしてはいけない。元のあった場所に戻して一括して責任を持ってお守りをするということをやらなければいけない」と言われています。仮に福岡市の焼却場で処分しても、焼却灰を受け入れてくれる自治体までの運搬作業に関わる人の被爆の危険性についても安全性が実証されていません。
また、焼却灰を埋立てる最終処分場において、排水を処理する装置等も放射性物質の除去に対応していないのでトラブルは必然です。国基準以下の焼却灰を埋めた群馬県伊勢崎市の最終処分場では、昨年9月に放射能の基準を超過した排水があり一時停止、横浜市では11月に、最終処分場の放流水を浄化する装置内のゼオライトの放射能濃度が高まり、ゼオライトの添加を中止、さらに今年3月千葉県君津市では、最終処分場からヒ素等の有害物質が漏れ出し廃棄物の受け入れが停止されています。
汚染が確認された廃棄物については、原則、広域であれ被災地においてであれ、焼却や埋立をするべきではなく、放射性廃棄物として国の責任において処理すべきです。
三つ目は、経済性の問題です。
当初国は、地元の処理能力が不足しており、他の自治体の既存施設を使うことで経済性が高まる可能性があるとして、「広域処理も必要」としていましたが、今は、広域処理をすることが先決で、数千万円をかけた新聞での政府広告や、2011年は9億円、今年度は30億円と言われる「ガレキを受け入れましょう」キャンペーン、受入れ自治体への補助金など、およそ経済性とはかけ離れた策と言っても過言ではありません。
さらに、広域処理にかかる費用も問題です。その総処理費用では、輸送費等による処理費用が増大します。阪神淡路大震災の災害廃棄物の処理単価は、1トン当たり2.2万円でしたが、今回の広域処理では国の資料でも最大で1トン当たり7万円となっています。その災害廃棄物の費用は、所得税や住民税等の復興増税でまかなわれます。
震災直後、陸前高田市の戸羽市長や岩手県岩泉町の伊達町長は、現地での二次処理を県に訴えましたが断わられています。
災害廃棄物の迅速な処理のためには、現地での雇用も生む、災害廃棄物専用の仮設焼却炉を現地に造ることが最も効率的で、広域処理は、強制するものであってはならないと考えます。
災害廃棄物の処理は急務であり、復旧・復興の大前提ですが、広域処理に協力しなければ「助け合いの精神」がないかのような風潮には心が痛みます。
被災地への復旧・復興支援には、現在福岡市が行っている職員の派遣や、子どもたちの健康回復のための一時受け入れや、被災地の方々の長期にわたる健康管理のための支援スタッフ派遣など、自治体でできることをさらに進めるべきと考えます。
私たち市議会は、市民の命とくらしを守ることが責務です。安全性に対して、科学的、客観的裏付けが曖昧な現状で、災害廃棄物の受入れには慎重であるべきと考えることから、我が会派は本決議案に反対するものです。
以上で、社民・市政クラブ福岡市議団の反対討論を終わります。
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