第4回福岡市議会定例会(9月7日〜20日)

○「発達障がい児の支援」について
○「多様な性の人権教育の推進」について

 

○「発達障がい児の支援」について

 本年7月30日、裁判員裁判で、大阪地裁は、殺人罪に問われた発達障がいの男性被告に、「被告の障がいに対応できる受け皿が社会にない」として、求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡しました。これは、障害者権利条約が謳う「障害者を支援する義務は国や社会の側にあり、支援をしないことは差別につながる」ということに逆行し、障がいに対する偏見や無理解による障がい者差別と言わざるを得ません。一方、報道によると、男性は、小学校5年生から不登校になり30年間ひきこもり状態だったといいます。早い時期に療育や教育、福祉の手が差し伸べられていたらと思うと残念でなりません。刑務所を出所した障がい者を受け入れ、発達障がいの特性にあった更生プログラムで社会復帰を支援する更生保護施設も勿論必要ですが、早期療育・教育、周囲の適切な対応が大変重要であると考えることから、発達障がい児の支援策について質問しました。

 本年度予算特別委員会の総会質疑において、社会的養護について質問した際、愛着障がいや発達障がいを抱える子どもが増えているという答弁で、発達障がい児の一時保護後の処遇の困難さを実感したところです。そこで、

【池田】えがお館における相談者のうち、発達障がいなど支援が必要であると認められる子どもの過去3年間の推移をお知らせください。

【こども未来局長】

 えがお館への相談者で、嘱託児童精神科医により発達障がい等の確定診断を受けた児童の過去3年間の推移は以下の表の通りです。

(えがお館における発達障害等の診断件数)

 

21年度

22年度

23年度

広汎性発達障害

26

26

28

80

注意欠陥多動性障害

45

37

44

126

学習障害

14

 6

 4

24

   小計

85

69

76

230

精神遅滞

23

32

29

84

その他の障害

29

17

27

73

 

【池田】このような子どもたちの現状について、えがお館から見える発達障がい児に関する課題についてご所見をお伺いします。

【こども未来局長】

 えがお館には、様々な子どもに関する相談が寄せられますが、子ども自身の性格や行動に関する相談や、非行、虐待相談の中に、子どもの発達障害が発見され、周囲が気づくことなく、不適切な対応をしてきたことによる二次障害として顕在化することが多く見受けられます。

 早期に発見し、不適応を最小限にするため適切な援助を受けることが望まれます。

【池田】小・中学校における知的障がい特別支援学級の整備校数と整備率、併せて、保護者・学校より整備の要望をしていたにもかかわらず整備されなかった学校について、その理由をお知らせください。

【教育長】

  • 特別支援学級の設置数と整備率
    ・小学校 118校  81.4%   ・中学校  53校  76.8%
  • 整備しなかった理由
    ・就学措置の関係で開設の必要が無くなった。
    ・大規模校で、教室の確保ができなかった。

【池田】本年度の支援員の人数と、配置校数及び配置率を小・中学校別にお知らせください。

【教育長】

  • 平成24年度特別支援教育支援員の配置園・校数  115園・校  支援員120名
    配置園・校数       配置率
    小学校  88校      79.3%(配置校/希望校)
    中学校  23校      62.2%(配置校/希望校)

【池田】市立高等学校4校に在籍する発達障がい生徒の人数と、支援員の有無についてもお知らせください。

【教育長】

  • 市立高校4校に在籍する発達障がいの生徒  11名(疑いのある生徒を含む)
  • 市立高校への特別支援教育支援員の配置   今年度配置なし

【池田】周囲の誤った理解や対応は、本人や家族のストレスを高め、二次的な問題を引き起こし、社会生活上の困難さをより大きなものにしてしまいます。非行や虐待相談の中に、子どもの発達障がいが発見され、周囲が気付くことなく、不適切な対応をしてきたことによる二次障がいとして顕在化する事が多いということは、早期発見と共に、学校教育において発達障がい児への適切な対応が重要ということです。発達障がいのある児童・生徒の持てる力を高め、生活や学習上の困難の改善、社会的スキルの向上の為には、周囲の適切なサポートは重要です。
発達障がい者支援センターでは、乳幼児期から成人期に至るまでの相談を受けていますが、発達障がい者支援センターにおける相談内容別件数及びその構成比と、年齢層別の相談支援件数及び構成比について、過去3年間の推移をお知らせください

【こども未来局長】

  • 多い順に、家庭生活に関する相談が、21年度730件、構成比37.2%、22年度1,192件、48.8%、23年度1,218件、46.8%、情報提供に関するものが21年度326件、16.6%、22年度533件、21.8%、23年度604件、23.2%、健康・医療関係に関する相談が21年度364件、18.5%、22年度319件、13.1%、23年度416件、16.0%で、以上の3項目を合わせますと、23年度では、件数で2,238件、構成比で約86%を占めております。相談支援件数全体では、過去3年間で約1.3倍の伸びを示しております。
  • また、相談支援対象者数では、年齢層別で、0歳から6歳、7歳から12歳、13歳から18歳
    19歳以上の4区分で申し上げますと、19歳以上が最も多く、21年度357人、構成比41.7%、22年度543人、50.5%、23年度680人、55.2%となっております。次に多いのは、7歳から12歳の小学生の層で、21年度232人、構成比27.1%、22年度218人、20.3%、23年度227人、18.4%となっております。相談支援対象者数全体でも、過去3年間で約1.4倍の伸びを示しております。

【池田】数年間、特別支援学級の整備を希望している壱岐小学校は、児童数1000人を超す大規模校です。児童数が多ければそれだけ支援を要する子どもの数も必然的に多くなります。しかし、壱岐小学校においては、大規模校であるが故に教室不足を理由に支援学級の整備が見送られてきました。ところが、新年度が、査定数を下回る学級数でのスタートとなり、空き教室があるにもかかわらず「教室不足」で支援学級が整備されないという結果に保護者は到底納得できるものではありません。支援を要する子どもの教育環境の整備を優先し、不足する普通教室についてはプレハブ対応をするなどすべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

 特別支援学級の新設については、余裕教室を活用している。しかし、余裕教室が全くなく、次年度特別支援学級設置の可能性が高い場合には、前年度のうちにプレハブ教室を予算化。

【池田】市立高等学校における発達障がいの生徒に対して、支援員の配置が行われていませんが、保護者の了解を得られていない生徒も含めると、支援が必要な生徒は相当数いると思われます。
高等学校の発達障がいをもつ生徒への支援策の強化とともに、全小・中学校へ支援員の配置をする必要があると考えますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

  • 現在の支援策(市立高校)
    ・入学者選抜においては、必要に応じ受検上必要な配慮を行うこととしている(別室受検や時間延長等)。
    ・高校に在学している生徒には、特別支援教育コーディネーターが中心となり、組織的な支援を行っている。
  • 今後の施策:福岡市立高等学校活性化に向けた取組方針に基づく施策の実施
    ・高等学校教職員対象研修(発達障がい)の実施
    ・発達教育センター調査研究に高等学校の研究グループの創設
    ・高等学校における発達障がいのある生徒への支援のあり方検討
    ・各学校における障がいをもつ生徒の受入れ・支援方策の充実
  • 支援員については、年々配置数の増加を図っている。今後とも、増加に努めていく。

【池田】徳島県立みなと学園は、軽度の知的障がいや心身症・精神疾患などを伴う発達障がいと不登校対象の学びの場で、国語や数学などの各教科の授業も行われ、高等学校に準じた教育課程となっています。福岡市の博多高等学園は知的障がいに限定されているため、軽度の知的障がいを伴う行動障がいの生徒たちの進路は、はざ間にあるといっても過言ではありません。
今後、発達障がい児の進路保障と社会的スキルを身につける場の確保として、このような学園が必要と思われますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

  • 的障がい、又は肢体不自由を伴う、発達障がいのある生徒については、博多高等学園や市立特別支援学校で教育を行っていく。
  • 知的障がいや肢体不自由を伴わない、発達障がいのある生徒については、特別支援教育推進プランに示すように、市立高等学校での支援の工夫に努めていく。

 

○「多様な性の人権教育の推進」について

 差別や偏見という人権侵害は、見慣れないものや自分とは異質なものを認めず、ひいては排除しようとすることだと考えますが、それは特に社会的マイノリティの人たちにその目は向けられがちです。

 様々な人権課題の中で、性的マイノリティと言われる方々の人権について質問しました。

 国においては、「人権教育・啓発に関する基本計画」で、性的少数者の人権について、「その他の人権課題」の中で「同性愛者への差別といった性的指向に係る問題」として、人権教育・啓発の取り組みが必要であるとしています。更に、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が2004年施行、2008年改正となり、戸籍の性別が変更可能になるなど性的少数者に配慮した施策は近年進みつつあります。しかし、社会生活の中では、多様な性であるが故に悩み、偏見や差別の中で、いじめや不登校、ひきこもり、中には自死に追い込まれた子どもや若者も少なくありません。

【池田】本市における性同一性障害や同性愛者など「性的少数者」といわれる人々への人権については、福岡市人権教育・啓発基本計画ではどのように位置づけされているのかお知らせください。

【市民局長】

 生物学的な性と性の自己意識が一致しないため,社会生活に支障がある状態である性同一性障がい者や,同性愛者や両性愛者などの性的マイノリティといわれる人たちの人権問題については,人権問題が多様化,複雑化する中で,昨今クローズアップされてきた人権問題の一つである。

 国は,性同一性障がい者といわれる人たちへの偏見や差別の解消を目指し,法務省を中心に啓発
活動や相談・調査救済活動に取り組んでいるほか,平成15年7月には「性同一性障害者の性別
の取扱いの特例に関する法律」が公布されるなど,法整備も進められている。

 福岡市では,平成16年に策定した「福岡市人権教育・啓発基本計画」において,同和問題を
はじめとした,女性,子ども,外国人などの様々な分野における人権問題の「現状」と「課題」を整理し,総合的な視点に立った人権教育・啓発を推進している。

 この「基本計画」では,性的少数者の人権についてはふれていないが,「基本計画」を推進する
ため,具体的施策を取りまとめた「実施計画」を4年ごとに策定しており,平成23年度に策定した,平成24年度から27年度を対象年度とする「実施計画」の中で,性同一性障がいを人権問題のひとつとして取り上げて,現状や法整備の状況などを紹介している。

 特に,人権教育・啓発に携わる職員には,性同一性障がいなどの様々な人権問題について,現状と課題を把握し,研修や講演会のテーマで取り上げるなど,市民への正しい知識の普及と,効果的な啓発活動を進めるよう呼び掛けているところである。

【池田】文部科学省より2010(H22)年4月23日付で、「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」通知があっていますがその内容はどんなものですか。

【教育長】

  • 学級担任や管理職を始めとして、養護教諭、スクールカウンセラーなど教職員等が協力し、保護者の意向や児童生徒の心情に十分配慮しながら、相談に応じること。
  • 必要に応じて、関係医療機関と連携すること。
  • 学校が適切な対応ができるように情報提供を含め、指導・助言を行うこと。

【池田】各学校に対しては、この通知をどのように周知徹底をしたのかお知らせください

【教育長】

  • 文科省通知を受け、学校指導課長と教育相談課長が連名で通知をだし、十分配慮した対応をおこなうよう指導した。

【池田】性同一障害などのセクシュアリティに関する相談窓口はどこで、18歳未満の相談件数とその内容、学校・保護者・本人など相談者の内訳をお知らせください。また、その相談窓口は子どもから大人まで全ての年齢に対応できるのか、できないのなら18歳以上の人はどこへ相談すればいいのかも合わせてお知らせください

【こども未来局】

  • 20歳未満のこどもに関する相談は,一元的にこども総合相談センターで受けている。性同一性障がい等セクシュアルティに関係する電話相談件数の状況は,平成21年度 4件,平成22年度 46件,平成23年度 5件,平成24年度(8月末)17件 となっている。匿名性であるため同一架電者からの相談も多く実数については3〜8名程度と思われる。相談内容については,性同一性障がいではないかと心配,診断をしてくれる病院を教えて欲しい,同姓を好きになる,女の子になりたい などの内容になっている。なお,20歳以上の方については精神保健福祉センターでの相談となる。
(こども相談課電話相談に寄せられた件数)

 

 区分

本人

保護者

その他

21年度

1

2

1

4

22年度

38

8

0

46

23年度

3

2

0

5

24年度

16

0

1

17

            

※平成24年度は8月末数

 

【池田】学校が適切な対応ができるために、学校・教職員に対してどのような支援策を講じてきたのかお知らせください

【教育長】

  • 過去の対応事例を把握し,情報提供を行う。
  • 児童生徒の実態に合わせ、学校や保護者がスクールカウンセラーや関係医療機関と速やかな連携が図られるように指導・助言

【池田】戸籍上と違う性別表記方法等について厚生労働省は検討中であると聞きますが、進捗状
況はどうなっているか

【保健福祉局長】

  • 国民健康保険被保険者証の性別の記載については,国民健康保険法施行規則にその様式が定められており,戸籍上の性別を記載している。
  • 現在,島根県松江市の事案を受け,厚生労働省では性別表記方法等に関する検討がなされているようだが,その検討内容については,把握できていない。

【池田】本市ではそのような申し出はこれまでになかったのかどうか、また、今後このような申し出があった場合、本市としてはどのように対応されるのか、ご所見をお伺いします

【保健福祉局長】

  • 福岡市では,性別記載方法の変更の申し出については,現在まで,あっていない。
  • 今後,福岡市において,性別記載方法の変更申し出があれば,厚生労働省と協議し,個々に対応していく。

福岡市は、9月21日付の厚生労働省保健局の通知を受け、本人の申し出により、「被保険者証の表面の性別欄に「裏面参照」と記載し、裏面に戸籍上の性別を記載することができる」とした通知を各区役所に行いました。

【池田】「多様な性」についての人権教育を推進していくために、人権に関わる事象に対する基本姿勢についても、「オカマ」や「ホモ」「キモイ」などの言葉が、性的少数者に対する人権侵害であると捉えるなど、まず教職員が正しい理解と認識を深め、事象に対する指導や実践に当たることが求められます。そのためにも研修や指導の実践例等が必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

  • 「多様な性」についての研修等は,人権教育の充実を図る上で重要と考える。
  • 毎年開催している「性に関する指導者研修会」「全市人権教育研修会」の中で指導

【池田】「多様な性」についてはこの間、なかなか語られることは少なかったように感じます。そのことがさらに偏見や差別につながったとも思えます。性同一性障がい者をはじめ性的マイノリティと言われる方々の人権問題に対して、福岡市はどのように取り組まれるのか、市長のご所見をお伺いします。

【高島市長】

 福岡市は,「人権を尊重し,人の多様性を認め合うまち」の実現に向けて,福岡市人権教育・啓発基本計画の二つの柱「人権という普遍的文化の構築」「人の多様性を認め合う共生社会の実現」の達成を目指し,人権教育および人権啓発の取り組みを進めているところである。
これまでの取り組みにより,市民の人権問題に関する理解と認識は深まってきているものの,
同和問題や女性,子ども,高齢者,障がい者,外国人などをめぐる差別や偏見などによる人権
侵害が現在も発生している。

 また,社会情勢の変化,インターネットの普及などに伴い,性同一性障がいや同性愛者,両
性愛者などの性的少数者と言われる人々のほか,ホームレスや犯罪被害者やその家族,刑を終えて出所した人など,様々な人権問題がクローズアップされているほか,インターネットの掲示板等での誹謗・中傷,個人情報の流出,児童・生徒が犯罪に巻き込まれるケースやネット上のいじめの問題など,人権問題はますます多様化,複雑化しており,今後も新たな人権問題が生じる可能性もある。
こういった状況を踏まえ,福岡市では様々な人権問題についての現状と課題を十分に認識・把握し,今後も,福岡市人権教育・啓発基本計画に基づき,市民一人ひとりの人権が尊重される社会の実現に向け,市長を本部長とした福岡市人権尊重推進本部を中心とした全庁体制で,人権教育及び人権啓発を推進していく。