平成24年度決算特別委員会(平成23年度決算)

 2011年度の決算に関して、本市における「広報戦略」並びに「学校教育費の保護者負担軽減と学校徴収金の公会計化」について、質問しました。

○「広報戦略」について

@高島市長が新設した市長室広報戦略室設置の目的は何か。

【総務企画局長】
  市政への理解を深め,関心を高めることで,市役所の信頼向上と都市のイメージアップを図るため,市の重要施策や魅力等を発信する時期や内容,広報媒体等について最適な選択を行い,より受け手に分かりやすく提供することについて,全庁的な視点から,各局と緊密に連携し,サポートする組織として設置したもの。

A広報戦略室設置前に比べて,広報事業で具体的に何を強化したのか。

【総務企画局長】
  市の重要施策等について,動画配信やスポットCM,デジタルサイネージなど新たな媒体の活用や,記者会見時にフリップを使うなどの工夫を行って情報発信を強化するとともに,発信する情報の時期,ターゲット,内容,広報媒体が最適となるよう,各局と連携して効果的な情報発信に努めた。

B2011年度の予算額と決算額,2012年度の予算額について尋ねる。

【総務企画局長】
  ・平成23年度の予算額:625,966千円
  ・平成23年度の決算額:562,338千円
  ・平成24年度の予算額:619,308千円

C2011年度の広報戦略室の事業は,どのような事業をしてこられたのか。

【総務企画局長】
  市政だより,ホームページをより見やすくするとともに,これまでの広報テレビ番組に加え,動画配信やスポットCM,デジタルサイネージなど新たな広報媒体を活用し,また記者への資料配布等によるマスコミ報道を通じて,市政情報などを効果的に発信した。

D2011年度事業の成果については、どのように分析されているか。

【総務企画局長】
  屋台との共生研究会,こども病院移転委員会,アイランドシティ未来フォーラム,飲酒運転撲滅等の重要な事業で,関係局と連携を図り,市政だより等に加え,動画配信やスポットCMなど新たな広報媒体を活用して,効果的な広報を実施した。

E2011年度のシティプロモーションは,どんな事業を行ったのか。

【総務企画局長】
  これまで福岡市が展開してきたアジア施策で蓄積された貴重な文化資産をまとめたサイトを構築・公開し,福岡市のアジア施策を国内外に広報するとともに,海外ビジネス誌への広告掲載などを実施した。

F8月29日,福岡市8つ目の行政区「カワイイ区」の誕生を東京都で記者発表したが,それもシティプロモーション事業の一環か。

【総務企画局長】
  シティプロモーションの一環である。

Gその内容と事業目的について尋ねる。

【総務企画局長】
  カワイイ区は,主に首都圏の若い年齢層を対象として,福岡の多彩な魅力や特性を「カワイイ」という新しい切り口で表現し,ウェブ上に仮想の区を設定して都市イメージを発信したもので,福岡の知名度を向上させるシティプロモーションであり,福岡の交流人口の拡大やファッションなどの産業振興につなげていくことを目的としている。

Hこの事業実施に至った経緯についてお尋ねる。

【総務企画局長】
  平成24年3月中旬に,篠田さんが市長を訪問された際,福岡を盛り上げようという話になり,その中でカワイイ区長というアイデアが出てきたものである。

I「カワイイ区」のホームページを見ると、福岡の交流人口の拡大やファッションなどの産業振興につなげていく事を目的としているようだが,経済観光文化局との連携は図られているのか。

【総務企画局長】
  経済観光文化局とは,事業検討段階から連携しており,現在,経済観光文化局には,ファッションを始めとする事業展開について検討してもらっているところである。

J事業経費はいくらで,その内訳について尋ねる。

【総務企画局長】
  約1,000万円で,その内訳は,カワイイ区のホームページの制作・運営,メールマガジンやソーシャルメディアによる情報発信,住民登録システム・住民票発行システムの構築・運営,記者発表の運営,区長のイベント等出演に関する企画調整,住民票用紙の印刷などである。

Kホームページのフェイスブックやツイッターを見ると,篠田麻里子のファンクラブと見間違えそうだが,これが本市にどんな影響を与え,どれだけの経済効果をもたらすとお考えか。

【総務企画局長】
  主に首都圏の若い年齢層に対して福岡の知名度を向上させることができたと考えており,今後,地元企業がカワイイ区の名称やロゴを使った経済活動等を展開していく中で,具体的な経済効果が現れてくるものと考えている。

L広報戦略室の成果指標として,「マスコミによる採り上げ」とあるが,8月29日から30日にかけて「カワイイ区」新設と区長就任のニュースが,多くのテレビ番組で紹介されたり,各新聞社などで採り上げられた。それをどう評価しているのか。

【総務企画局長】
  会見から約2週間で,テレビ8件,新聞・雑誌69件,ウェブ195件,ラジオ1件あわせて273件の記事等を確認しており,高い広報効果があったと考えている。
(記事等の広告換算額:2億5,516万円(9月10日時点))

M8月1日現在の福岡市の人口は約149万人で,世界中から約1万人の区民を募り,市の人口150万人突破を目指すと,カワイイ区区政運営方針に書かれているが,前日までの「カワイイ区」住民登録数は何人か。

【総務企画局長】
  前日までの住民登録数は,39,378人である。

N住民登録者の年代別,市内・市外別の内訳はどうなっているか。

【総務企画局長】
  住民登録者の内訳については,登録内容に性別,年齢,住所等の属性がないため,不明である。ちなみに,フェイスブックのいいね!ボタンを押した人は13,561人で,東京都が約5割を占め,市内は1割未満である。

O「カワイイ区民」となっている福岡市民も少なくないと考えるが,それは「住民票の二重登録」となり,「市の人口150万人突破」という「目標」はあまりに稚拙で,公費支出を伴う事業として不適当だと考えるがご所見を。

【総務企画局長】
  事業の発表に当たり,わかりやすさを含めて設定した目標であり,この目標設定をもって公費を伴う事業として不適当だとは考えていない。

「カワイイ区」への参加人数を基準とするならまだしも、福岡市の人口を基準にする意味が見いだせない。厳しい言い方だが、「お遊び」に公費を使っているのではないかという市民の声もあることを伝えておく。
P「カワイイ区」への住民登録者数が増えたことで,市に対してどんな効果が表われているとお考えか。

【総務企画局長】
  首都圏の若年層を中心に,福岡の知名度の向上,福岡の情報の伝達といった効果があると考えている。

Q「特別住民票」の発行が9月29日から始まったが,それはどんなもので,発行する意義は何か。

【総務企画局長】
  特別住民票は,福岡市カワイイ区の区民であることを表すもので,カワイイ区への参加意識の醸成や,区民限定サービス等を受けるための確認書類となるほか,市役所1階の情報プラザを訪れた記念として購入される方もいるものと考える。

R「特別住民票」の発行手数料が1枚300円ということだが,手数料の金額の根拠は何か。前日で,何枚発行され,その収益はどこに計上されるのか。

【総務企画局長】
  福岡市が発行している住民票の発行手数料300円に合わせたものである。前日で2,283枚販売し,その収益は市の福岡市の一般会計に歳入される。

S区政の運営方針に,「カワイイ区民」にはファッション産業の振興や「福岡=カワイイ」を国内外に情報を発信するとしているが,今後の具体的な事業内容はどう展開されるのか。

【総務企画局長】
  今後は,福岡アジアファッション拠点推進会議のファッションウィーク事業等での連携など各局事業での展開,メールマガジンやソーシャルネットワークシステムでの情報発信を予定している。
  また,地元福岡を中心に100社を超える企業や店舗が,カワイイ区の名称やロゴを使った経済活動等の展開を企画されており,現在協議を行っているところである。

21,区名がなぜ「カワイイ」なのか。

【総務企画局長】
  広報効果を高めるため,短いフレーズでインパクトのある事業の名称と仕組みを採用したもので,カワイイという言葉は,福岡の持つ魅力や特性を包含できるものであったため,カワイイ区という名称を使用した。

ホームページ上での説明によると,「『カワイイ』とは,容姿だけでなく,感情表現が豊か,明るく人なつっこい,いきいきと輝いている,情に厚いなど,考え方,話し方,振る舞いすべての要素に用いられるもので,人をいとおしい気持ちにさせる全ての魅力・センス」としているが,「容姿だけでなく」と容姿も含めながら,「考え方,話し方,振る舞い全ての要素に含まれるもの」などと,「女の子はかわいく」というジェンダーを感じさせる。
22,行政が「カワイイ」をことさら高く評価することは,人権の視点,男女共同参画の視点から問題と考えるがどうか。

【総務企画局長】
  カワイイという言葉については,外務省が,海外で日本のポップカルチャー分野への理解を向上させる目的で「カワイイ大使」を任命するなど使用しており,また,若年層がカワイイと表現する対象は必ずしも人だけではないことから,そのようなカワイイの意味や対象の広さも踏まえて使用しており,人権の視点,男女共同参画の視点から問題であるとは考えていない。

 広報戦略においては,広報の目的を設定し,目的に到達するための手順を明確にすべきと考える。「かわいい区」事業に関して言えば、ネーミングとイメージキャラクターの篠田さんのかわいさとピンクのリボンというロゴがあまりにマッチングしてしまったがために、女性に対する固定的なジェンダーが露出し、ファッションなどの産業振興という本来の目的が薄れ,区民とするメルマガ購読者とのミスマッチも感じる。首都圏の若い年齢層を対象としているものの、遠隔地にいるいわゆる住民登録者がどう本市の産業振興に影響をもたらすのか、シティプロモーションとしてのメリットは何なのかはっきりしない。北九州市では、「環境モデル都市・北九州市」をアピールしている。福岡市は、9月29日から10月14日までの2週間「ユニバーサル都市・福岡フェスティバル」を開催したところだが、どれだけのメディアが取り扱ったか。市長は、議会の場でも目指す都市像として「ユニバーサル都市・福岡」というキーワードで、「女性も男性も障がいのある人もない人も、すべての人にとって来てみたい、住んでみたくなるような福岡」を提唱している。ユニバーサル都市は、行政と企業と市民が一体となって、多くの人々が「過ごしやすい街だ」「使いやすい施設だ」「ぬくもりのあるやさしい市民だ」と感じられるものであることが大前提だ。真の「ユニバーサル都市」を目指すのであれば、市民からの声や意見を取り入れるような、市民参加型の事業運営が必要と考える。敢えて言うならば、「やさしい区」こそを発信すべきと考える。
23,電通との契約は2013年3月までとなっているが,事業の目的を遂行するのであれば、ネーミングも含め、この事業の見直しをすべきと考えるが,市長のご所見を問う。

【市長】
  古来から培ってきた交流拠点としての歩みを,現代においても,観光やビジネス,文化など多くの面でさらに進めていくことが,福岡の都市の成長には欠かせない。そのためには,常に新しい価値を発信し,戦略的に,魅力ある都市のイメージを創っていくことが大切だと考えている。
  カワイイ区は,主に首都圏の若い年齢層を対象として,福岡が持つ多彩な魅力や特性を包含するカワイイをキーワードに都市イメージを発信したシティプロモーションで,福岡の交流人口の拡大やファッションなどの産業振興につなげていくことを目的としている。
事業開始後1か月半で全国に4万人のメルマガ購読者を獲得し,全国のメディアでも大きく取り上げられるとともに,国や地方自治体の関心も高く,スタートは上々である。
  これからは,この勢いを保ちつつ,早急に福岡の交流人口の拡大や産業振興につなげていきたいと考えている。

 

○「学校教育費の保護者負担軽減と学校徴収金の公会計化」について

 文部科学省が2年に1回行う「子どもの学習費調査報告書(2010年度)」によると、「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」を合わせた子どもの学習費の平均年額は、幼稚園で公立23.2万円、私立53.8万円、小学校で、公立30.4万円、私立146.5万円、中学校で、公立46.0万円、私立127.9万円、高校で、公立39.3万円、私立92.3万円となっている。

 学校給食費を含む1年間の学校教育費用だけで見ても、小学校で、公立97,000円、私立88万円、中学校で、公立約17万円、私立約100万円となっており、昨今の経済状況の中で、保護者の教育費負担は家計の中にも大きな影響を及ぼしていることから、保護者負担軽減の視点から質問した。

「義務教育は無償」との憲法の精神が生かされるにはほど遠い現実がある。
@本市における、過去3年間の一般会計に占める教育費の割合と、決算額はいくらか。

【教育長】
  過去3年間の一般会計に占める教育費の割合と決算額については、
  ・平成21年度  7.3%で 540億   29万円余
     22年度  6.8%で 513億1,534万円余
     23年度  6.5%で 498億2,500万円余

A決算額のうち、校舎の耐震化や増改築、大規模改修などの施設設備費を除いた過去3年間の決算額はどうなっているか。

【教育長】
  施設整備費を除いた決算額は、平成21年度が391億9,179万円余
  22年度が406億4,298万円余
  23年度が411億  128万円余となっている。

Bそのうち、各学校で教育活動等に公費として使える学校配当額の、過去3年間の予算額と決算額はいくらか。

【教育長】
小学校費の平成21年度の 予算額が 11億3164万円余, 決算額が 11億 1519万円余,
平成22年度の 予算額が 12億 884万円余, 決算額が 12億  615万円余,
平成23年度の 予算額が 12億6345万円余, 決算額が 12億 4118万円余
中学校費の平成21年度の 予算額が  6億7986万円余, 決算額が  6億 7012万円余,
平成22年度の 予算額が  6億9359万円余, 決算額が  6億 8555万円余,
平成23年度の 予算額が  7億9450万円余, 決算額が  7億 5968万円余
  となっている。

Cここ数年、学校配当額は微増をしているが、その内容は何か。

【教育長】
  増加の主な理由としては,新学習指導要領の実施のための教材や指導書,武道具の整備や学校図書室の図書整備費を増額しているものである。

授業で子どもたちが使用する教科書以外のドリルやテスト、補助教材などの経費のほとんどは、「受益者負担」の考えで保護者からの徴収となっている。経済格差が社会問題となっている昨今、子どもの教育環境においてもその影響は大きくのしかかっている。学習塾や習い事、スポーツ・レクリエーション活動などの学校外活動や、保護者の教育への関心度などで顕著に表われる子どもの教育環境の格差などから貧困と学力との相関関係が指摘されている中で、公教育の責務は重要と考える。
D学校教育費の保護者負担軽減や、子どもたちへ豊かな教育の権利を保障するためにも、学校配当予算の拡充が必要と考えるが所見を問う。

【教育長】
  机椅子の整備については、平成22年度以前は、教育委員会で一括して購入し、各学校へ納入していたが、平成23年度からは、各学校が必要な個数を直接購入する方式に変更し、それに必要な予算を各学校へ増額配分している。今後とも学校配当予算の充実を図っていく。

E学校給食費が公会計化となって3年が経過したが、過去3年間の給食費の収納率と未納額はいくらか。

【教育長】
  平成21年度 収納率98.7%、未納額6,097万9千円
  平成22年度 収納率98.6%、未納額6,566万4千円
  平成23年度 収納率98.7%、未納額6,353万5千円
  平成21年9月の公会計化後、納付忘れが少なく収納率が高い「口座振替による納付」を積極的に推進していることから、厳しい経済情勢の中でもほぼ横ばいの状態で推移している。

F滞納者に対する督促は誰がどのような方法で行っているのか。

【教育長】
  滞納者への督促等については、係員1名、嘱託職員3名の計4名で行っており、督促状発送後も未納が続く全ての世帯に対して2か月毎に催告書を発送するとともに、電話による催告、家庭訪問での催告などを行っている。

給食費の公会計化に伴い納付推進事業など、教育委員会事務局による給食事務の一括管理は画期的で、他県からの視察も多いと聞いているが、G給食費が公会計化となった経緯について尋ねる。

【教育長】
  平成19年度に滞納者に対する法的措置の実施を検討するに当たり、学校給食費は公債権であり、法的な債権者は市長であると整理したこと、従前の学校長が管理する会計処理では、各学校の収納状況によっては納入事業者への食材料費の支払いが滞るなど、円滑な給食運営が困難になっていたこと、さらに、教職員が子どもたちに向き合う時間をより多く確保できるよう、事務負担の軽減を図る必要性があったこと、
以上のようなことから、福岡市学校給食費条例の制定や一括管理するシステムの開発を行い、平成21年9月から公会計処理を開始した。

H公会計化となって、どんなメリットが生まれたか。

【教育長】
  給食費の公会計化に伴い、学校給食費の予算・決算が議会の審査を受けることで透明性が向上するとともに、一括した収納管理を行うことで滞納者へ早期に対応出来るようになっている。
  また、通知・徴収・現金管理・食材料費の支払など、給食費関連事務を教育委員会事務局へ移管したことによって、学校の事務負担が軽減できていると考えている。

 学校長が管理する従前の会計処理では、毎月学級担任がその徴収事務の一端を担い、未納家庭への督促にも、子どもを介して家庭への督促状を持ち帰らせるということが行われていた。それでも未納家庭には、担任が電話をしたり家庭訪問をしたりして、そのことに費やす時間と精神的負担は少なくはなかった。その後、口座振替などのシステムが導入されたが未納家庭への督促は、担任や事務職員を中心に学校が行わなければならない事には変わりない状況。しかし、給食費の公会計化は、事務負担の軽減はもとより、教職員が子どもたちに向き合う時間をより多く確保できる事に加え、納入事業者への食材料費の全額支払いが可能になったということは、効果として大変大きいと考える。
給食費以外で、学校が保護者から徴収している学校教育費について、Iテストやドリル、参考書、習字・水彩絵の具、裁縫などの用具類等の教材費、修学旅行などの校外学習費、学用品費などの学校徴収金は、修学旅行費を除いて公立小学校、公立中学校の平均徴収額はいくらか。

【教育長】
  小中数校の中から数校を選んで調査したところ,小学校13,000円程度,中学校20,000円程度である。

Jその徴収方法はどのように行われているか。

【教育長】
  口座振替での徴収がほとんどであるが,一部,現金での徴収も残っている。

K昨年のこの場において、学校教育における必要な教育費用や、保護者からの徴収額、その収納状況などについて、教育員会が把握しておく責任があることを指摘したが、昨今の経済状況の中、学校徴収金の収納状況の把握はされているのか。

【教育長】
  学校徴収金システムを利用した口座振替分は確認できるが,振替不能分や現金徴収分については把握していない。

L預金口座からの引き落としができなかった場合や、現金収納での未納の場合の督促は誰が行っているのか。

【教育長】
  口座振替できなかった方への再振替や,現金納入などの通知文書を学校徴収金システムで作成し,学校から保護者に納入のお願いを行っている。

分かりやすく言えば、学校事務職員が作成した督促状を持って、学級担任や教頭が保護者へお願いにいっているということ。給食費に関しては改善されたものの、学校徴収金については、従前と変わらないということになる。
Mこれまで学校徴収金は、学校長名で管理される「私会計」として取り扱われ、市の監査対象にはなっていなかったが、2011年度の福岡市監査では、学校配当予算に加え、学校徴収金が市の監査対象となっている。その理由について尋ねる。

【監査事務局長】
  学校徴収金については、その管理を学校の事務と定め、職員が職務として行っていることから、「福岡市準公金等取扱事務処理要領」に定める準公金の取扱と同様に公費に準じた取り扱いが求められており、適正な管理がなされているか、事務処理の誤り防止や事故防止の観点から監査を実施しているものである。

N2012年2月9日の福岡市監査結果報告によると、2011年度の学校が行う学校徴収金事務において、財務事務処理上の問題を指摘されているが、具体的にはどういったことが問題であると指摘されたのか。

【教育長】
  現金収納の際に管理職の決裁を受けずに事務職員のみで行われていたものや現金出納簿が作成されていないもの,支払の事実と証拠書類の突き合わせができていないものなどが,事故防止の観点から不適切な事務処理であるとして指摘を受けたもの。

Oその際、監査委員より「早急に、教育委員会として現金徴収事務のルールの整備の確立と各学校に対する指導支援体制」を求められたが、ルールづくり等の進捗状況はどうなっているか。

【教育長】
  監査の指摘を踏まえて,学校徴収金の出納事務に係る留意事項や様式例を周知するとともに,委員会に担当主査を配置し,各学校における適正な事務処理の支援を行っている。

P「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」では、支払請求を受けた日から工事代金については40日、その他の給付に対する対価については30日以内に支払わなければならないと規定しているが、公金に準ずるとされる学校徴収金は、教材を業者と契約後、教材の納品から支払いまでの期間の定めはあるのか。

【教育長】
  学校徴収金は保護者と納入事業者を当事者とする契約に基づくものであることから,支払までの期間については,当事者間での定めによるものと考えている。

Q教材業者への支払の状況は把握されているか。

【教育長】
  支払の状況については把握していない。

R昨年、教材業者から早期支払いの要望が提出されていると思うが、どんな内容か。

【教育長】
  遅くとも、各学期終業式までに入金をお願いするとの内容である。

 ドリル等の補助教材は、4〜5月に納品が行われるが、保護者からの代金徴収は他の教材と合わせ分割となるため、支払いは12月頃になることも多いと聞く。未納者がいれば業者への支払が滞ることになる。学校徴収金システム導入前に、担任による徴収が行われていた小学校では、未納者の分を担任が立て替えて学期末までに納入をするということが学校現場では当たり前のように行われていた。しかし、システム導入後は、学校事務職員がその管理を行い、当然未納があれば業者への支払いも滞るという事態が生じている。学校長と学校事務担当者に当てた「教材費の早期支払いについてのお願い」には、「振込み遅延や未納者の増加により、納入業者の経営に多大な負担を生み、運転資金の枯渇により、メーカーとの契約を打ち切られた販売店も出てきた」とある。中小の地場の教材業者は、メーカーへの支払期日が守れなかったり、ある業者は、メーカーに借入金で教材費を支払うため、学校からの支払が遅くなれば遅くなるほど利息がふくらみ、資金繰りに苦労をするということも言われている。経営が思わしくなくなった業者もあると聞くなか、社会問題となっている「黒字倒産」もよそ事ではない。支払いが100%でなかったり、納入が遅れたりすることは地場企業の支援にもならないと考えるが、S業者からの要望に対して、教育委員会は、どのような対応をされたのか。

【教育長】
  納入事業者から事務局への早期支払の要望もあり,速やかな支払を行うよう,様々な機会を捉えて各学校へ周知を図っている。

21,昨年、保護者の負担軽減と地場の中小業者を守る観点から、算数・国語のテスト代の公費化の検討を要望したが所見を問う。

【教育長】
  テストの購入利用については、保護者への負担にも配慮しながら、学校の判断で行われているものであり、保護者にご理解をいただいているものと考えている。

回りくどい答弁をいただいたが、簡単に言うと、公費化はしないということか。であるなら、せめて教職員が子どもと向き合う時間の確保や中小の地場業者の支援策となるよう、給食費と同じように、公会計化をすべきと考える。
監査報告には、「学校徴収金とは、学校の教育活動上必要となる経費のうち、公費以外の経費で児童生徒に直接還元される性格の経費であり、教材費や修学旅行費などがある。これらは、保護者の学校に対する委任に基づいて校長が執行する経費であるため、公費に準じた取扱いが求められる」とある。「公費に準じる」取扱いとしながら、未納者への督促は、学校に任せ、担任や管理職が行っていることに教育委員会の無責任さを感じる。
22,未納対策は、教育委員会がすべきで、そのためには学校徴収金も給食費と同じように公会計化すべきと考えるがいかがか。学校徴収金を公会計化する場合、システム等の設備費はいくらかかるか検討はされたか。

【教育長】
  学校給食は学校給食法等に基づき,給食を実施している市長が債権者であると整理して公会計化したものである。一方,学校徴収金は,保護者と納入事業者を当事者とする契約に基づくものであるため,公会計化にはなじまないものと考えており,設備費の検討は行っていない。

23,ドリルやテスト、その他副教材は、教職員が教育に最低限必要なものとして、購入計画するもので、「教育の無償」の理念からすれば、本来は北欧のように全て公費化すべきと考える。
学校徴収金については、給食費の徴収システムを使えば初期費用もかからず、検討の余地があると考える。検討を強く要望する。昨今の経済状況がもたらした不安定な雇用で、子どもの貧困化は進むばかりである。こういう状況下において公教育が果たす役目は重大で、学校徴収金未納問題は、学校任せではなく、教育委員会総体として真剣に取り組むべき問題だと申し上げておく。本市において、一般会計に占める教育費の決算額の割合は、7.3%から6.8%、6.5%と、年々減少している。行財政改革のもとで、くれぐれも教育予算を削減することなく、子どもたちの学習権の保障のためには、さらなる教育予算の拡充が重要と考える。福岡市の教育施策に対して、市長の決意を伺う。

【市長】
  福岡市の将来を担う知・徳・体のバランスの取れた子どもの育成や教育環境の整備はたいへん重要なことと思っている。また、福岡市の子どもたちが経済的な負担や心配を感じることなく、安心して学習することも重要なことと考えている。教育委員会の意見を聞きながら教育予算の充実を図り、教育施策の推進に努めていきたい。