■ 第4回福岡市議会定例会(9月13日〜25日)
「寡婦控除を非婚の母子家庭まで拡大することを求める意見書案」に対する賛成討論
私は、社民・市政クラブ福岡市議団を代表して、本議会に提案されました意見書案第 9号、「寡婦控除を非婚の母子家庭まで拡大することを求める意見書案」に賛成し、討論を行います。
近年、日本においても、婚姻や家族の形態が多様化し、市民の意識も多様化しています。
9月4日、最高裁大法廷は、結婚していない男女間の子の法定遺産相続分を法律上の夫婦の子の二分の一とする民法の規定が、憲法14条1項に違反し無効とする決定を、14人の最高裁判官全員一致で下しました。
「子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきである」「本件規定の存在自体が、その出生時から嫡出でない子に対する差別意識を生じさせかねない」と、法が差別を助長することを指摘しました。
近年、格差社会や貧困が社会問題として大きく取り上げられる中で、子どもと貧困の関係に注目が集まっています。
2010年の厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」で2009年の相対的貧困率が公表され、貧困率は、全年齢層で16.0%、17歳以下の子どもで15.7%となり、過去最悪となってしまいました。中でも、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%と高い水準となっています。
また、厚生労働省が行った2011年度全国母子世帯等調査の母子世帯の母の年間就労収入統計によると、死別母子家庭では、256万円、離婚母子家庭では176万円、非婚母子家庭では160万円と非婚の母子家庭が特に少ないことが分かります。貧困層の多い母子世帯の中でも困窮しているのが非婚母子家庭です。
ひとり親世帯への支援として、年間35万円の税金控除が受けられるという、所得税法の定める「寡婦控除」があります。
寡婦控除制度は、1951年の税制改正で創設されましたが、「寡婦」が法律婚を経由したことのある者と定義されていることから、夫と死別・離別した母子家庭にのみ適用され、非婚の場合には寡婦控除は適用されません。
この寡婦控除規定により算出された所得が、所得税、市民税、公営住宅入居資格及び賃料、保育料などの算定のための基準とされている結果、非婚の世帯は、寡婦と比較すると多額の負担を余儀なくされています。
本市においては、年収200万円の世帯で、3歳児がいる非婚ひとり親世帯と寡婦控除が適用されているひとり親世帯の保育料の差額が年間19万6,800円、これに所得税17,500円、市県民税63,000円を加えると年額27万7,300円の負担増となり、給与収入の実に約14%を占めることになります。
また、母子2人世帯が3DK家賃2万円程度の市営住宅に入居し、年間約260万円の給与を得た場合の家賃は、非婚母子世帯と寡婦控除を適用した母子世帯との差額が、月2,700円程度で、年間で3万円余りとなってしまいます。
これらのことは、日々の家庭生活に経済的不利益をもたらし、その母と生活する子どもの成長・発達する権利を侵害することになり、「非婚の母の子ども」に対する事実上の差別と言えます。子どもは、生まれてくる環境を選べません。全ての子どもたちの健やかな育ちを保障するために、制度に残る差別をなくし、貧困削減効果を高める施策は、喫緊の課題です。
日弁連は、非婚の母は寡婦控除が適用されないことで公共料金算定などで「著しい不利益を受けている」と認め、母に「婚姻歴があるなし」によって非婚の母やその子が不利益を被ることは憲法14条や子どもの権利条約に違反すると断定し、差別を禁じた国際人権規約26条にも反していると結論付けて、非婚の母子世帯の経済的苦境を救済するよう適切な措置をとることを要望しています。
今や非婚の母子家庭に対する経済支援が喫緊の課題と考えることから、国に対して、非婚の母子家庭に対する不利益解消策を要望する本意見書案に賛成するものです。
以上で社民・市政クラブ福岡市議団の賛成討論を終わります。
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