第5回福岡市議会定例会(12月12日〜20日)

1.市立幼稚園の廃園問題

 近年、少子化の影響や就労に伴う保育所利用者の増加などの社会状況の変化により、公立・私立ともに幼稚園の就園率の減少や、自治体の厳しい財政状況の中で、これからの公立幼稚園のあり方を検討している自治体が多くあります。

 福岡市においても、行財政改革の一環として、教育委員会は市立幼稚園の廃園案を打ち出しています。この間、市立幼稚園廃園の見直しを求める議会質問や第2委員会で質問・意見を行い、72,390人の署名による請願とその審査が行われてきましたが、教育委員会は、「慎重に検討」としたものの廃園の姿勢は崩していません。今後、福岡市の市立幼稚園が果たす役割については、研究不足が否めないと考えることから、再度質問しました。

@市立幼稚園が果たしてきた役割・成果、また、「役割が終わった」とする根拠について尋ねる。

【教育長】

  • 幼稚園教育要領を踏まえて,小学校以降の教育の基盤となる幼児期にふさわしいきめ細かな教育を推進してきた。
  • 市立幼稚園を全て廃園とした理由は、実習園としての必要性がなくなっていること、福岡市の幼児教育の大半を私立幼稚園が担っている現状などを踏まえたもの。

Aあり方の方向性について、「民間が担うことができるものは、民間にゆだねる」という考え方に立ち、市立幼稚園を全て廃園することが適当と考えられる」としているが、市立幼稚園と私立幼稚園の違いについてどう認識されているのか。

【教育長】

  • 市立及び私立の幼稚園は,どちらも幼稚園教育要領に基づいた教育を行っており,ほとんどの園で「遊び」を中心としながら,幼児期にふさわしい教育が行われていると認識している。

B廃園問題に対して、「『慎重に検討すべき』との声を多く頂いたことを踏まえ」とあるが、「慎重に」とは具体的にどう検討を進めていこうとしているのか、スケジュール案とともに尋ねる。

【教育長】

  • 教育委員会として,市立幼稚園を全て廃園することが適当との方向性をまとめているが,説明会、パブリックコメントなどで様々な意見をいただいた。これらを受け,園ごとのスケジュールや,幼小連携の充実に向けた方策などについて検討を継続している。
  • こども未来局で行う「福岡市子ども・子育て支援に関するニーズ調査」の状況も見ながら,市民の代表である議会のご意見もお聞きしながら,市立幼稚園のあり方基本方針を決定する。

 私立幼稚園は、宗教法人や学校法人などが建学の精神により、それぞれの教育理念に基づく特色ある教育を実践し、たゆまぬ経営努力により市民の多様なニーズに応じた教育機会を提供しています。園によって独自の教育メニューがある園もあります。

 一方、公立幼稚園は、市町村との密接な連携のもと、それぞれの地域のニーズに直結した幼児期の学校教育の提供、振興、・充実に寄与し、幼稚園教育要領に基づく標準的な教育を提供しています。入園料や保育料、給食や送迎バスの有無などにも違いがあります。保護者は、それぞれのニーズにより、公立幼稚園、私立幼稚園の選択を行っています。

 今日、自治体の財政悪化や、少子化と保護者の就労率の上昇に伴う園児数の減少などが背景にあり、全国各地でも公立幼稚園の統廃合を含めた検討が行われています。その多くの自治体では、有識者や公立・私立幼稚園関係者、保護者など当該市における幼稚園教育の現状や課題を分析し、公立幼稚園が果たす役割について丁寧に論議されています。

 しかし、福岡市における市立幼稚園のあり方検討は、内部検討だけですすめられてきており、示された方向性については、「市が計画的に設置したものではない」「実習園としての必要性がなくなった」「福岡市の幼児教育の大半を私立幼稚園が担っている」「市立幼稚園を廃園にしても周辺の私立幼稚園で受入が可能」などと、廃園ありきの論調です。さらに、「3歳児保育などニーズに対応するためには財源が必要」「園児一人当たりの市費負担額の格差」「老朽化等での建替え経費」にいたっては、財政問題に終始し、本来教育委員会が明確にすべき、福岡市における幼稚園教育の現状や課題の整理もなされておらず、「公教育としての幼稚園教育のあり方」にも言及されていません。

C有識者・保護者・現場教職員などを含めた第3者機関である、仮称「公立幼稚園のあり方検討委員会」を設置し、幼児教育に求められる課題の集約、課題を解決するための幼児教育改革などを提言すべきと考えるが所見を問う。

【教育長】

  • 市立幼稚園のあり方については教育委員会事務局で検討し,それぞれの教育委員の専門分野をもとに,教育委員会会議で議論を重ねてきたところである。
  • 今後も教育委員会会議において様々な観点から議論を行い,福岡市立幼稚園のあり方基本方針を決定する。

 全国国公立幼稚園長会は、「学校教育としての幼児教育については、義務教育に接続する学校教育として位置づけ、小・中学校と同様に、国や地方公共団体の適切な関与を義務付け、教育の地域格差や施設による格差が生じないようにすることが重要と考える。そのためには、質の維持・向上のための十分な財政措置と財源の保障は当然といえる。保護者の多様な生き方を大切にし、特別支援を必要する障がい児と共に学び合う環境を大切にする。その取り組みを多くの民間幼稚園に広めていくことこそが公立幼稚園の果たす役割だと考える」と意見を述べています。

 D福岡市においても、就学前教育における今後の市立幼稚園の果たす役割、小学校との連携教育のあり方など多様な視点から検討すべきと考えるが所見を問う。

【教育長】

  • 現在,すべての小学校で市立幼稚園だけでなく,私立幼稚園,保育所も含めて生活科を中心とした児童と園児の交流,教職員・保育士間での情報交換など,幼稚園・保育所との滑らかな接続を大切にしている。
  • 今後は,幼稚園,保育所,小学校,中学校等を含めた「保・幼・小・中連絡協議会」を設置して,幼児期の教育のあり方,校種間の連携のあり方等について共に考え,幼児期の教育を推進していく。
  • 私立幼稚園連盟やこども未来局などの関係機関と連携する。

 2002年6月24日に文科省より示された「幼稚園教員の資質向上に関する調査研究協力者会議報告書」において、「幼稚園教員は、幼児を理解し、活動の場面に応じた適切な指導を行う力を持つことが重要であり、さらに家庭との連携を十分に図りつつ教育を展開する力なども求められています」とされています。具体的に求められる専門性として、幼児を内面から理解し、総合的に指導する力、具体的に保育を構想する力と実践力、得意分野の育成、教員集団の一員としての協働性、特別な教育的配慮を要する幼児に対応する力、小学校や保育所との連携を推進する力、保護者及び地域社会との関係を構築する力、園長など管理職が発揮するリーダーシップ、人権に対する理解など9項目が上がっています。

 吹田市教育委員会では、人権に対する理解を基盤にした公立園教員に育てたい9つの力を明確にし、教育公務員特例法に定められた初任者研修、10年経験者研修に加え、経験年数に応じた研修を行うことで幼稚園教員の資質と専門性の向上を図っています。

 札幌市は、市内の園児の9割以上は私立幼稚園に通っている状況にあり、札幌市の幼稚園教育の主体を私立幼稚園が担っていますが、札幌の未来を担う子どもに適切な幼児教育を提供する観点から、公募市民や学識経験者、市立幼稚園、私立幼稚園の関係者などで構成する「札幌市幼児教育市民会議」を設置して市立幼稚園のあり方を検討、そこでの答申を踏まえて2005年「札幌市幼児教育振興計画」を策定し、幼児教育に求められる役割や、中・長期的方向性に基づいて、計画的かつ段階的に、具体的施策・事業をアクションプログラムを策定しています。そこでは、「市立幼稚園教育が果たす役割」「市立幼稚園と私立幼稚園の連携のあり方」「特別支援教育に関わる支援体制の充実」など、幼児教育の現状と課題を整理し、幼児教育センターを設置して、市立幼稚園を研究実践園として研究機能を強化し、私立幼稚園との連携の基点とするとしています。

 いわき市は、公立幼稚園としては、私立幼稚園が対応できる部分については、積極的に役割を委譲するものとし、地域の実情やバランスを考慮するとともに、その規模を縮小しながらも、障がい児統合保育や少子化に対応した子育て支援施策を実施するなど、その役割を充実させていくものとしており、「今後、公立幼稚園は、本市の幼児教育の課題を研究し、その研究成果が市内全ての幼稚園に還元できるように努め、本市の幼稚園教育全体の質的向上に寄与することが必要である」としています。

 さらに、大阪府泉南市では、泉南市教育問題審議会「新しい時代に対応した幼児教育のあり方について」で、財政状況の悪化は切実な問題であるとしながら、「次世代を担う子どもたちの教育・保育の施策を考えるときに、財政難を理由に統廃合があってはならない」との考えに基づき、財政問題とは別に子どもたちのとっての最大現の豊かな環境を用意するとの観点から泉南市の就学前保育教育に関する論議が行われています。答申には、子どもの最善の利益を保障する観点が最優先されなければならず、「全ての子ども一人ひとりが平等で公平な格差のない就学前保育教育を享受できるよう、教育の機会均等を保障するという公共性」を持つ。経営的効率のみにとらわれることなく、社会が必要としている多様ではないニーズ、より困難なニーズに応えることが公共性に基づく就学前保育教育なのである。これを安定的、継続的に供給するための推進力として、「行政が就学前保育教育の提供者として直接責任を負う体制を堅持すること」の重要性が指摘されています。さらに、人権保育教育の取り組みを強化させることが必要であるとして、これまでの蓄積をもとに、公立幼稚園・保育園が中心となって民間幼稚園、民間保育園等も含めた全市的な取り組みとして、継承発展させていく役割を担うとしています。

 しかし、福岡市の市立幼稚園のあり方検討には「幼児期の学校教育」としての理念が見えません。「民間が担うことができるものは民間にゆだねる」としていますが、幼稚園教育の質を向上させていくためには、「民間ではできない、公だからできる教育のシステム」の研究が必要です。福岡市の幼児教育における理念を明確にさせ、その理念の実現に向けて、保育者や保護者、地域の人々みんなで語り合い、幼稚園と保育園の教育・保育の一体的な展開について福岡市のビジョンを示す必要があります。そのためにも、丁寧な論議を行うことを求めるとともに、市立幼稚園の全園廃園はすべきでないことを強く申し上げておきます。

2.地域防災計画について

 2011年3月11日に発生した東日本大震災と、これに伴う巨大津波、さらに、地震・津波によって引き起こされた福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故は、未だ収束の目途が立っていません。私は、災害から3ヵ月後の2011年6月議会において、「福岡市地域防災計画の見直し」と、「玄海原発の災害における対策」、「女性の視点による避難所設置・運営体制」について質問・要望を行い、原発事故を想定した防災対策において、防災訓練など平常時からの取り組みを行うことも求めていました。本年10月、福岡市原子力災害避難計画素案に基づき、福岡市として初めてとなる原子力災害避難訓練を実施したことを受け、地域防災計画(原子力災害対策編)が更に強化されるよう、加えて、男女共同参画の視点による避難所運営の具体的な計画について質問しました。

 福岡市は、玄海原子力発電所からの距離が30km圏外であることから、国が定める「原子力災害が発生した場合における緊急防護措置を準備する区域UPZに含まれる区域とされていません。しかし、福島第1原子力発電所と同様の事故が万が一に発生した場合、気象状況によってはプルームが福岡市に到達することが考えられます。

@本年6月、福岡市地域防災計画(原子力災害対策編)を策定し、その充実強化を図るために、具体的な実行計画として原子力災害避難計画を策定するとしている。まず、その進捗状況について尋ねる。

【市民局長】

  • 原子力災害避難計画については、原子力災害対策指針の改定内容、地域防災計画見直し検討委員会の意見、及び原子力避難訓練(10月24日実施)の結果等を踏まえ作成を進めており、すでに素案を作成している。
  • 今後、本12月議会(第一委員会)、1月の都市問題等調査特別委員会に報告した後にパブリック・コメントを行い、年度内に成案とする。

A地域防災計画の見直しにあたっては、「見直し検討委員会」に女性委員を求めたが、現在の地域防災計画見直し検討委員会の構成メンバーと、その男女比を尋ねる。

【市民局長】

  • 専門委員と住民自治組織代表者の計10名(全て男性)で構成。
  • 防災計画の見直し検討委員会は、専門家の知見を伺うことを主眼として委員を選任したため、女性委員は入っていないが、防災計画見直しの過程では、女性の意見も伺いながら、具体的な対策を検討している。 (福岡市防災会議委員に福岡市七区男女共同参画協議会代表,福岡市民生委員・児童委員協議会代表などを登用;平成24年〜)

B本年10月24日、原子力災害避難訓練が玄海原発に最も近い西区で行われたが、訓練の内容及び、C避難訓練から見えた成果と課題について尋ねる。

【市民局長】

  • B玄海原発で発生した事故により、西区の一部に1週間の期間内に避難を行うことの指示が出されたという想定のもと、原発から約40kmに位置する北崎、今津、元岡、周船寺、玄洋、今宿校区の住民約100名がバスで避難を行い、スクリーニング検査等をすませた後、原発から50km圏外の博多工業高校へ避難を行った。また、要援護者避難として養護老人ホーム松濤園入所者や動物の同行避難についても行った。
  • C訓練に先がけ、避難地域を対象として、参加者に放射線や原子力災害に関する正しい知識を身につけるための事前研修を行っていたことから、スムーズな避難行動を行うことができたのが成果である。今回の参加者は市民のごく一部であり、万が一災害が発生した場合は多数の避難者が発生することが予想されるため、多くの市民が適切な行動を取ることができるよう、日頃からの原子力防災に関する正しい知識の普及・啓発が課題である。また、全市的な災害対応が必要となってくるため、対応する職員等を対象とした研修や、各局・区の所管業務に応じた原子力災害に備えた具体的対応策を検討していく必要がある。

 今回の避難訓練は、西区西部6校区の住民106人と動物同行避難者、松濤(しょうとう)園(えん)の入所者15人と職員3人というごく少人数での訓練でした。私も参加しましたが、バスが着き避難者が降りてから、検査票記入からスクリーニング、検査後受付など1人当たりに要する時間は4,5分程度と思われましたが、各校区からのバスは順次到着だったので、込み合うことはありませんでした。しかし、非常時は相乗りといっても自家用車とバスで、 D西部6校区の住民5万6千人が押し寄せるとなると、対応が難しいことは容易に推測できる。
 また、E糸島地区の避難を想定した場合、県との連携は必須。これらの課題に対して、どのような対応を考えておられるのか、所見を問う。

【市民局長】

  • D原子力災害発生時においては、広範囲に避難区域が指定された場合、避難者が相当数に上り、混乱することも予想される。このことから、住民等には平常時に避難のあり方を含め、原子力災害の正しい理解を広めておくことが重要となる。その上で万が一の災害発生時には、迅速な情報提供を行い混乱の防止に努めるとともに、県警や自衛隊と連携して必要な交通誘導や規制を実施する。なお、スクリーニング場所については、10月24日に実施した避難訓練の結果を踏まえ、それまで市民プール等を使用することとしていたが、あわせて市有施設等の活用も行うことで、混雑の緩和を図ることとした。
  • E県との連携については、「福岡県原子力災害広域避難計画」において、原発から30km圏内の糸島市民15,000人のうち、9,500人を福岡市で受け入れることとしており、昨年から県が主催する原子力避難訓練にも糸島市民の受け入れという役割分担で参画している。今後、国が原発30km圏外の対策についても示すこととしているので、それらを踏まえながら糸島市と福岡市が同時期に避難区域に指定された場合の避難対策等について検討を行い、さらなる連携の強化を図っていく。

 災害時において、迅速かつ安全に避難することは言うまでもなく、災害の状況によっては、避難所での生活を長く強いられることも予想されます。かつて、阪神・淡路大震災や新潟中越地震を経験した多くの女性たちからは、避難所で女性に対する性暴力やセクシャル・ハラスメントが多数発生したことが報告され、東日本大震災の際にも女性たちが抱えた困難が次々と明らかになっていきました。防災・災害復興に女性の視点が必要であることを伝える活動が行われた結果、本年5月31日内閣府男女共同参画局は、東日本大震災を含む過去の災害対応における経験を基に、男女共同参画の視点から必要な対策・対応について、予防、応急、復旧・復興等の各段階において、地方公共団体がとりくむ際の基本的事項を示した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」を策定しました。今後は、各自治体で地域防災計画や避難所運営マニュアル等の見直しや作成に男女共同参画の視点から整備することが求められています。

本市においても、F女性や子どもが安心できる避難所づくりとして、「女性・妊産婦・乳幼児を抱える家庭のニーズに配慮した避難のあり方」、「男女別トイレ、更衣室、女性専用のもの干し場の設置」、「犯罪の抑止にもつながる暴力防止と安全の確保」など、男女共同参画の視点を避難所運営に生かす必要があると考える。そのためにも、「避難所運営の手引き」の作成が必要と考えるが、所見を問う。

【市民局長】

  • 平成24年度版福岡市地域防災計画の見直しの中で、男女共同参画の視点から,妊産婦や乳幼児などの要援護者に配慮した避難所運営に努めるように記載を改めている。
    さらに,現在見直し中の計画において,「避難所運営の手引き」を作成することで検討を進めている。

 災害が起きたとき、被災地では、避難所が設置され、多くの被災者がそこでの生活を余儀なくされることになります。しかし、避難所運営や復興作業は男性中心で行い、食事の準備や清掃、子どもの世話などは、女性が担うべきという、作業分担に性別を固定した役割分担を求める社会通念は根強いものがあります。このような発想で避難所運営をしていくと、どうしても女性や子ども、高齢者等の弱者の視点が取りこぼされていくことになり、これまでの数々の事例からも、避難所を運営する上での問題点や改善点が浮かび上がってきます。

「避難所運営の手引き」の作成に当たっては、横浜市や神戸市などが先進的な防災計画を作成しています。栃木県の「男女共同参画の視点で取り組む防災ハンドブック」や青森県の「男女の視点を取り入れた安心避難所づくり」ハンドブック、大分県の「女性の視点からの防災対策のススメ」など全国各地の自治体が作成しています。各自治会・町内会で活用できるようコンパクトさも備えた機能的なハンドブックを期待します。しかし、防災計画やマニュアルにどれだけ立派なことを書き込んでも、現実に生かされなければ意味はありません。

 各地域では、自主防災訓練が行われていますが、地域ですすめる自主防災活動の中に、女性の視点を取り入れるために、情報管理や物資管理、安全衛生、応援救護など、その各部に必ず声を出せる女性を複数名ずつ必ず入れるなど、具体的な避難所運営の組織作りが必要と考えます。

G地域に住む人々の支援体制を実効性のあるものにするためにも、女性の地域防災リーダーの育成が肝要と考えますが、ご所見をお伺いします。

【市民局長】

  • 地域における防災リーダーの養成を目的として福岡市と読売新聞西部本社が共催で行っている「博多あん(安全)・あん(安心)塾」に多数の女性が参加している。
  • 今後も防災研修会や講座、訓練等への参加呼びかけや「博多あん・あん塾」での防災リーダー養成を行いながら、女性の地域防災リーダーの育成に取り組んでいく。

H一時集合場所の確認、要援護者用スペースを確保した避難所訓練の実施など、女性・障がい者・外国人などの参加も含めたバリエーションを広げた、幅広い地域防災訓練の見直しが必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

【市民局長】

  • 地域で行われている防災訓練には、消火訓練や救急講習のような一般的な訓練のほかに、一時集合場所や避難経路を確認しながら行う避難訓練、要援護者を対象とした避難誘導訓練、また参加者が会議室に集まって行う図上訓練がある。
  • 今後も防災研修会や出前講座における先進的な活動事例を紹介するとともに、地域が行う防災訓練の支援を行う。

 原子力発電所の安全性を判断する新規制基準が7月8日施行されました。原子力規制委員会は再稼動に必要な安全審査の受付を始め、玄海原発3,4号基を含む全国の8原発14基が再稼動に向けて安全審査の申請をしています。再稼動容認の結論ありきと思われる新基準は、脱原発社会の実現を求める国民の声を無視したものといわざるを得ません。9月に大飯原発3,4号機が定期検査のために停止しており、現在日本は、原発ゼロの状態です。脱原発社会の実現に向けて、高島市長も玄海原発の再稼動に反対の声を上げる先頭に立っていただくことを要望します。

3.医療的ケアが必要な障がい児・者の在宅生活の支援策について
 近年、障がい者福祉の変化により、在宅生活を送る障がい者が増加しています。それに伴い喀の吸引など医療的ケアを必要とする障がい者も多くなり、在宅生活を支援する上で医療的ケアは大きな課題となっています。

 特に、医療的ケアが必要な重症心身障がい児・者は、家族の休息や病気、冠婚葬祭などの緊急時など必要時の短期入所が困難な状況にあります。

福岡県は昨年度、重度肢体不自由と重度知的障がいとが重複した、重症心身障がい児・者の生活課題について実態調査を行いました。調査で明らかになった福岡県の実態について尋ねします。
まず、@調査で明らかになった県内の在宅障がい児・者の人数を18歳未満、18歳から64歳、65歳以上でお知らせください。併せて、医療的ケアが必要な人数とその割合についてもお知らせください。県調査(平成25年2月〜3月に実施)

【保健福祉局長】

  • 対象者:在宅の重度肢体不自由と重度知的障がいの重複(1757人)
  • 有効回答:1059人
  • 年齢別内訳:18歳未満 444人 41.9%、18歳〜64歳 594人 56.1%、65歳以上 14人?? 1.3%、年齢不明 7人 0.7%
  • 医療的ケアが必要であるとの回答:398人 37.6%

また、医療的ケアというと痰の吸引が良く聞かれますが、他にはどんな医療的ケアがあるのか、A医療的ケアの内容と、それぞれを必要とする人数についてお知らせください。

【保健福祉局長】398人のうち

  • たん吸引 243人
  • 経管栄養 199人
  • パルスオキシメータ 162人(血液中の酸素飽和度の測定機器)
  • ネブライザ 156人(薬剤等の吸入器具)
  • 酸素吸入 96人 など

これまで医療行為は法的には医師や看護師にしか許されていませんでしたが、昨年の法改正によりその枠が広がったと聞きます。Bそれらの医療的ケア行為を認められているのはどういった方々か。

【保健福祉局長】

  • 原則として,医師・看護師等の医療職や家族等。
  • たん吸引と経管栄養に係る行為は,特定の研修を受講した介護職員でも限定的に可。

C在宅障がい児・者の主な介護者とその介護者の年代を多い順に、人数と割合をお知らせください。

【保健福祉局長】

  • 主たる介護者 ・母親822人77.6%、父親145人13.7%  など
  • その年齢…40歳代303人28.6%、50歳代290人27.4%、60歳代189人17.8% など

D福岡県の実態調査で明らかとなった、障がい児・者の在宅生活での課題をお知らせください。

【保健福祉局長】

  • 県の実態調査では,数字の集計のみで分析はなされていない。
  • 集計結果を見ると,介護時間や回数が多いため介護者の負担が大きいことや,介護者の高齢化や緊急時の不安等があげられている。

E福岡市において、医療的ケアを必要とする人は何人いますか。そのうち在宅サービスの利用者の人数と18歳未満の人数についてお知らせください。

【保健福祉局長】

  • 18歳以上の者:障がい程度区分認定調査から推計すると,医療的ケアが必要な人は340人
  • そのうち在宅サービスの支給決定者は209人。
  • 18歳未満の者:医療型短期入所の支給決定者から推計すると,183人。
  • 医療的ケアを必要とする在宅サービスの支給決定者は,合計392人。

 福岡県の調査でみる在宅生活における主たる介護者は、父母が9割を超えており、その77.6%が母親となっています。また、介護者の年代は40歳代から50歳代が56%と過半数を超え、60歳代以上の介護者は6.4%おられます。主たる介護者の平均睡眠時間については、5時間以下が約半数おられ、今現在も含め、今後高齢化を迎える家族にとっては、レスパイトとしても、短期入所は喫緊の課題となっています。

家族のレスパイトや病気、冠婚葬祭などの緊急時に利用する短期入所には、病院や診療所、介護老人保健施設に併設の医療型短期入所と、障がい者支援施設などに併設の福祉型短期入所がありますが、F医療的ケアが必要な方に対応できる医療型短期入所は何箇所で何床ありますか、

【保健福祉局長】 

  • 指定事業所:4施設 うち1施設(福岡病院)では6床の利用が可能
  • 他の3施設は,空きベッドでの対応

また、G医療型短期入所の拡充を目的として、今年度より、福岡市とNPOとの共同事業で、「おうちで暮らそうプロジェクト」が始まりましたが、それはどんな事業か、具体的な取り組み内容と合わせてお示しください。

【保健福祉局長】

  • 概要:障がい者の家族,看護師,障がい福祉サービス事業所などが在籍しているNPOと共働して,医療的ケアの必要な障がい児・者とその家族の在宅生活や在宅移行を支援。
  • 具体的には,主に医療型短期入所の拡充を図るために,平成25年度は,
    ・医療機関と利用者のニーズ把握実態調査
    ・利用者に関するパーソナルブックの作成
    ・事業未実施の医療機関における医療型短期入所の試験的運用

H医療型短期入所については、事業所が少なく利用しにくいと聞きますが、これまで利用したことがある人の割合と、利用していない人はなぜ利用していないのかその理由についてもお尋ねします。

【保健福祉局長】

  • おうちで暮らそうプロジェクトで実施したアンケート調査結果
  • 医療的ケアが必要な障がい児・者のうち,医療型短期入所を利用した割合:28.4%
  • 利用していない理由:「預けるのが不安」,「必要ない」が多い。

 「おうちで暮らそうプロジェクト」が実施したアンケート調査結果では、医療型短期入所を利用した家族はわずか28.4%で、利用していない理由は、「預けるのが不安」とのことですが、「どのような場所だったら利用したいか」の問いでは、「安心」や「普段から関わっている人がいてくれる」という信頼関係や本人理解を求める声が5割を超えています。

 本市には、医療的ケアを必要とする18歳未満の障がい児は、福岡市内でも183人いるということです。しかし、現在15歳以下の受け入れ可能な医療機関は、福岡市内1病院のみとなっています。15歳以下の年齢層の医療的対応可能な短期入所の対策を講じることが急務です。

重症心身障がい児は、こども病院で定期的に受診しているケースが多いことから、I緊急時の短期入所として、こどもの症状を良く知る専門医がいるこども病院での、一時預かりができるシステムが必要と考えますが、ご所見をお伺いします。

【保健福祉局長】

  • 重症心身障がい児の在宅生活支援のために,医療的ケアが可能な短期入所の拡充の支援に取り組んでいるが,こども病院は,急性期の高度医療を提供する役割を担っており,一時預かりの対応は難しいと考える。

 現在共同事業として進められている「おうちで暮らそうプロジェクト」では、特に事業未参入医療機関での医療型短期入所の試験的運用が進められています。一方、短期入所の利用が困難な最重度の医療行為が必要な障がい者に対しては、「安心」や「普段から関わっている人がいてくれる」という信頼関係や本人理解を求める声に応えるためには、家族のレスパイトとして自宅へ夜間や日中に介護職員を派遣するサービスや、利用者や短期入所職員の不安解消のために、福祉型短期入所事業所へ日頃から支援しているヘルパーが同行するなど、様々な手法の検討が必要かと考えます。また、2012年4月の法改正によって、各都道府県や都道府県登録の研修機関が行う研修を受講して認定を受ければヘルパーなどによる医療的ケアが法的に認められるようになりました。そのためにも医療的ケアを代行できるヘルパーや介護福祉士の養成は急務です。

 社会福祉法人 福岡市社会福祉事業団は、ももち福祉プラザにおいて、強度行動障がい者支援モデル事業に取り組んでこられ、本年度より本格事業として、共同支援を必要とする強度行動障がい者の受け入れ調整や支援職員の派遣調整などの成果を上げています。宿泊施設の課題は残していますが、今後の課題として、福祉型短期入所のモデル事業を事業団が展開することも検討されてはいかがでしょうか。前向きなご検討を要望しておきます。
介護者のレスパイトや、重症心身複障がい者の在宅生活支援のためには、医療的ケアが可能な短期入所の開設が急がれます。

J今後、医療機関との連携や福祉型短期入所事業所での医療的ケアをどのように進められるのか、ご所見をお伺いします。

【保健福祉局長】

  • 「おうちで暮らそうプロジェクト」のアンケート調査結果を踏まえて,パーソナルブックを活用して,医療機関が利用者を受け入れやすい環境整備を図っていく。
  • 福祉型短期入所事業所においても,軽度の医療的ケアが必要な利用者を受け入れることについて検討していく。

高島市長は、日頃より「ユニバーサル都市・福岡」を推進されています。12月3日〜9日は障がい者週間でもありました。最後に、

K重症心身障がい児・者の在宅生活の支援はもとより、障がい児・者福祉の向上のために高島市長の決意の程をお伺いします

【高島市長】

  • 障がい者福祉については、平成24年の3月に策定をした福岡市障がい保健福祉計画に基づいて、障がいのある方とない方が等しく地域の中で自立をして、社会の一員としてともに生きる社会というものを目標像に揚げて、障がい者の状況や課題を的確に把握した、きめ細やかな施策の推進に努めている。特に、重症心身障がい児・者の在宅生活の支援については、大きな課題であるというふうに認識をしている。地域で安心して生活を続けていくために、家族の介護負担の軽減などについて、NPOや関係機関のみなさんと一緒になって推進していく。
  • 今後とも、誰もが思いやりを持って全ての方に優しいまちユニバーサル都市・福岡の実現を目指して頑張っていく