国は、2006年にがん対策基本法を制定し、翌年6月にがん対策推進基本計画を策定し、前基本計画の策定から5年が経過した、2012年6月に見直しを行ない、がん対策推進基本計画(H24〜28年度)を策定しました。見直しをされた主な内容はどういうものかお尋ねします。
福岡県も2013年度から2017年度までの5ヵ年のがん対策の基本的方向を定めた「福岡県がん対策推進計画」を策定しましたが、これによって福岡市のがん対策施策はどのように変わったのかお知らせください。
わが国のがん検診の実績として示されている情報では、発見率は非常に低く、胃がんや大腸がんで0.15%程ですが、これを人数で見ると胃がんで6千5百人強、大腸がんでは1万2千人を超える、非常に多くの方のがんが発見されています。福岡市の2012年度がん検診受診者におけるがん発見者数はどのような状況ですか。
住人の身近なところでの集団検診場所として、公民館等がありますが、本年度より行わなくなった校区があると聞いています。その経緯についてお尋ねします。
【保健福祉局長】
- 校区がん検診についてては、受診者数の減少やがん検診登録医療機関が増加 したことに伴い、地域の実情や住民ニーズを踏まえた効率的な検診を実施するため、平成24 年度から各校区の実施意向調査を行ってきた。その結果、保健所等での総合健診を受診するこ とにした校区や、各自の都合や体調に合わせていつでも受診できる医療機関での受診を勧める 校区等が出てきたことにより、26年度は、23校区において校区がん検診を取りやめている。
校区がん検診については、受診者数が減少しているとのことですが、福岡市では、住民に対してがん検診の周知をどのように行っていますか。
【保健福祉局長】全戸に配布している健診ガイド、市のホームページ、市政だより、チラシ等
で周知を行っているほか、各校区においては回覧板や掲示板等による広報も行われている。
がん検診への関心を呼び起こさない限り、自分の問題として情報を受け取ることが難しい市民が大多数の中で、みやま市では、2007年より「みやま市保健推進員設置要綱」を定め、行政区ごとに1人以上の保健推進委員を置き、独自のチラシを作成し、戸別訪問をしながら地域住民に対し、市が実施する健診の受診勧奨を行っています。年々受診率を上げており、住民の意識の変化をうかがうことができます。本市においても、住民一人ひとりへの情報提供の工夫をすべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
【保健福祉局長】
- 福岡市においては、各校区の衛生連合会と連携して地域の特性に応じた主体的な健康づくり活動を推進しており、住民の健診推進についても、衛生連合会の活動の一つとして積極的に取り組んでいただいている。また、平成26年度は、よかドックやがん検診の未受診者に対し、訪問による健診受診勧奨事業や、電話やダイレクトメールによる個別勧奨を行うことにしている。
推進委員から直接がん検診の有効性の説明を受けるのとでは、意識が大きく変わることは明白です。さらなる直接的な働きかけの工夫を要望します。
がん対策推進条例を策定した名古屋市では、勤め先などで受診する機会のない名古屋市内在住の方を対象に、6種類のがん検診と生活習慣病検診を500円で行うワンコイン検診事業を行っています。本市でも、集団検診以外の場所での受診料の軽減を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
【保健福祉局長】
- 登録医療機関での検診料金は、受診者の身体状況等に合わせて個別に対応するため、集団検診に比べると高めとなっているが、個別・集団いずれの健診も、市民税非課税世帯の方や70歳以上の方等は無料で受診できる減免制度がある。
厚生労働省研究班の推計によると、生涯のうちにがんにかかる可能性は、男性では2人に1人、女性では3人に1人とされています。症状がないまま進行するがんを早期に発見するには、定期的にがん検診を受けることが重要です。集団検診の受診者数が減少している昨今において、近隣の医療機関で気軽に受診できるように、受診料の軽減を検討されるよう要望いたします。
ニュース等で接種の副反応が社会問題となっている子宮頸がん予防ワクチンについてお尋ねします。
子宮頸がんの予防として、子宮頸がん予防ワクチンを接種することで、ヒトパピローマウイルスの 感染を予防することができるとして、子宮頸がん予防ワクチンの接種を行っていますが、定期接種対象年齢及び啓発方法についてお尋ねします。
【保健福祉局長】
- 子宮頸がん予防ワクチンの定期接種対象年齢は、「小学校6年生〜高校1年生 相当の年齢の女子」となっており、平成25年4月より定期の予防接種となったが、ワクチンと の因果関係を否定できない副反応が見られたことから、厚生労働省より接種勧奨差し控えの通知があったため、現在、積極的な勧奨はしていない。
ワクチンの副作用が問題になって以降、文科省が子宮頸がんワクチンの副反応の実態調査をしましたが、本市の実態についてお尋ねします。
【保健福祉局長】
- 福岡市においては、平成23年3月の接種事業開始から平成25年度末までに、88、812人が接種されているが、このうち7人から副反応報告があっており、ワクチンとの関連性などについて、現在、国において調査が行われている。
被害を訴える親や議員で結成されている「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」に寄せられた相談で、多くに共通するのが、全身の痛みや歩行困難、強い頭痛、けん怠感などの症状ですが、
子宮頸がんワクチンの副反応問題で、厚労省は「定期接種は中止しないが積極的には勧めない」となんともあやふやな結論を出していますが、福岡市ではどんな対応をしているのですか。
【保健福祉局長】
- 福岡市では、医療機関において、接種を希望する方には、国は積極的な勧奨は行っていないこと、接種の有効性や副反応のリスクなどを十分に事前説明したのち、予防接種を行っている。
6月21日の毎日新聞夕刊に、難病治療研究振興財団が、神経内科、リウマチなどの専門家が参加する専門チームをつくり、子宮頸がんワクチン接種後の痛みについて、症状の解明に乗り出したことが報道されていました。チームは、これらの症状を「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」と名付けて診断基準を作り、近く国際医学誌に発表するということです。安全性が評価できない子宮頸がんワクチンは、接種事業の中止をすべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
【保健福祉局長】
- 子宮頸がん予防ワクチンは、予防接種法に基づく予防接種であり、今後とも国の調査等の動向を注視しながら、対象者への適切な情報提供に努めていく。
子宮頸がんワクチンによってがんの発生を100%予防できるとか、ワクチンを接種すれば子宮頸がんを永久に予防できる、ワクチンを接種すれば検診が不要などの誤った認識を持っている若者が少なくありません。しかし、このワクチンは、すでに今感染しているHPVを排除したり、子宮頸部の前がん病変やがん細胞を治す効果はなく、あくまで接種後のHPV感染を防ぐもので、治療薬ではありません。子宮頸がんも他のがんと同じく、定期的な検診が予防としては重要であることなど、ワクチンの副反応も含めて、正しい知識を伝える責務があると考えますがご所見を。
【保健福祉局長】
- 子宮頸がん予防ワクチンについては、市ホームページ等で、ワクチンの予防 効果や正しい知識の普及啓発を行っている。また、ワクチンの接種にあたっては、有効性や副 反応リスクなどについて十分に説明を行うとともに、20歳を過ぎたら2年に1度は子宮頸が ん検診を受診するよう呼びかけており、今後とも適切に啓発を行っていく。
2012(H24)年6月に、国において策定された「がん対策推進基本計画」においては、がん教育の在り方を検討し、試行的取り組みや副読本の作成、民間団体の教育活動の支援などに取り組むこととされています。福岡市教育委員会はがんの基本的知識などを子どもたちに教える「がん教育」を2学期から実施するとしています。がんの正しい理解や認識に加え、子宮頸がん予防ワクチンの正しい知識やがん検診の重要性なども、中高生の発達段階に応じた指導が必要と考えます。 全国24道府県、8市区町でがん条例を制定しています。今後は、がん予防の推進、がんの早期発見の推進に加え、「がんになっても安心して暮らせる社会」の構築として、がん患者とその家族を社会全体で支えるために、がんに関する相談支援や情報提供、在宅医療の充実、財政上の措置などを盛り込んだ「がん対策に関する条例」づくり進めるべきであることを意見として申し上げておきます。
○「特別支援学校における教室不足の解消」について
特別支援学校の教室不足は、全国的課題です、福岡市においても7校中3校が深刻な状態であることから、教室不足の解消について質問しました。
福岡市立特別支援学校の過去3年間の児童生徒数の推移、及び1校あたりの児童生徒数の平均人数、さらに大規模校といわれる198人以上の学校はどこで何人ですか。
【教育長】
- 福岡市立特別支援学校8校の過去3年間の児童生徒数については、各年5月1日現在で、平成24年度が1,351人、平成25年度が1,353人 平成26年度が1,383人。
- 1校当たりの平均児童生徒数は、高等部単独設置の博多高等学園を除く7校でみると、184人。
- 198人以上の在籍者がいる学校については、福岡中央特別支援学校224人、東福岡特別支援学校239人、生の松原特別支援学校233人の3校。
特別支援学校の学級編成基準は何人ですか。
【教育長】
- 学級編制基準については、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等に基づき、福岡県教育委員会が定めている。 小学部、中学部は6人、高等部は9人で1学級です。ただし2つ以上の障がいがある重複の 場合は小学部、中学部は3人、高等部は4人で1学級となっている。
特別支援学校では、学級編成基準に基づく認可学級によるクラス編成ではなく、重複障がいの児童・生徒も含めたクラス編成によって、教育活動が行われています。いわゆる実学級ですが、
福岡市において、実学級に基づく特別支援学校の教室不足は何校で、不足数は何教室ですか。
【教育長】
- 現在3校において13教室が不足している。 内訳については、福岡中央特別支援学校が4教室、東福岡特別支援学校が5教室、生の松原特別支援学校が4教室となっている。
通常学校での教室不足への対応としては、プレハブ設置や校舎の増改築などが早急に行なわれます。それは、学校教育法に「学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない」としており、それを受けて、文科省令「学校設置基準」を設けているからです。しかし、
特別支援学校には、国の設置基準がないため、職員会議室や訓練室等の特別教室を教室不足の対応策として普通教室に転用しています。そのため、学校運営や教育活動に支障をきたしていると思いますが、どう認識していますか。
【教育長】
- 仮設教室を設置したり、柔軟な学習グループの編成を工夫するなど、可能な限り教育活動などに支障がないよう努めている。
生の松原特別支援学校へ行って、学校長や教職員の方々にお聞きしてきましたが、教室不足は、深刻な問題となっています。小学部では、特別活動用の学習室や言語訓練室、多目的ルームを4つの普通教室に転用しています。言語訓練室の既存のドアは、頻繁な教室の出入り口ドアとしては危険なので取り外し、安全柵とカーテンをドアとして使用しています。また、多目的ルームは、スチール棚で2教室に分割、隙間には用務の先生に板を張っていただいたものの、防音効果はほとんどない状態で声や音が筒抜けです。電灯や空調機のスイッチも片方の教室にしかなく非常に不便であるとのこと。また、手洗い場もない状態が続き、給食後の歯磨き指導などに支障をきたしていたそうですが、用務の先生が6月上旬に簡易手洗い場を設置してくださったということでした。
また、高等部では、教室が足りないので定数9人の教室に10人のクラスとなっており、体も大きいことから、給食の準備は廊下に長机を置いて配膳をしているとのことです。
さらに、雨の日は子どもたちが遊戯室に集中するため、いつ事故が起きるか不安でならない。学年で音楽や集会をする場所がなく、体育館、視聴覚室の奪い合いになっているとのことで、学習活動にも支障をきたしている深刻な状況です。
中でも、生の松原特別支援学校と今津特別支援学校は、開校当初から、糸島市の児童生徒を受け入れていますが、現在何人の児童生徒を受け入れていますか。
【教育長】
- 糸島市の児童生徒数については、生の松原特別支援学校に37人、今津特別支援学校に14人を受け入れている。
糸島市の子どもたちが福岡市の特別支援学校に通学するには、スクールバスの乗車時間が長く、体調の変化や情緒不安になりやすいという声も聞かれます。また、以前より、糸島市の保護者からも糸島市内に特別支援学校の設置を求める声もあります。子どもたちの体力や情緒面を考慮して、本来、県立特別支援学校を糸島市に設置すべきと考えます。
教室不足に見るように、特別支援学校の児童・生徒数は年々増加しています。中でも、高等部は、特別支援学級からの入学もあることから、増加数が多いと思われます。高等部の生徒数の過去3年間の推移と、今後の見込み数についてお尋ねします。
【教育長】
- 福岡市立特別支援学校高等部における生徒数の過去3年間の推移は、平成24年度590人、平成25年度593人、平成26年度600人となっています。
- 今後の特別支援学校高等部の児童生徒数の見込みについては、年度によって変動はあるが、ほぼ同程度の増加を見込んでいる。
高等部の学級増も視野に入れた教室の増設は、緊急な対応が必要です。学校教育法第80条によりますと、特別支援学校の設置義務は都道府県にありますが、福岡市は対象児童生徒の増加に対応するため、特別支援学校を設置してきています。機能訓練室や言語訓練室、図書室に加え、自閉症などの情緒障がい児にとっては、クールダウンの教室も必要です。また、中学部・高等部の生徒には男女別の更衣室もありません。特別支援学校という特性を踏まえた、教育環境整備は待ったなしです。特別支援学校の教室不足に対して、どのような対策を考えておられるのか、ご所見をお伺いします。
【教育長】
- 特別支援学校における教室不足の対策については、障がいのある児童生徒数の推移
と将来動向や、小学校及び中学校の特別支援学級の在籍児童生徒数、さらには特別支援学校高等部への進学の状況などから、現状及び将来の学校規模を的確に把握するとともに、特別支援学校における施設・整備のあり方について検討し、よりよい教育環境整備に努めていく。
- 平成26年度は、生の松原特別支援学校の教室不足解消に向け必要となる施設整備の調査を進めているところである。
6月23日付の日本教育新聞では、愛知県瀬戸市など小・中学校の校舎内・敷地内に特別支援学校を新設する自治体が増え始め、小・中学校の児童・生徒が特別支援学校の児童・生徒と交流し、共に学ぶ場を設けやすくなり、特別支援学校の児童・生徒は通学時間が短くなったことが報告されています。特別支援学校と小学校合同での避難訓練、小学部は休み時間などに普段から児童が交流、中学部には、国・社・数・理・英の5教科を中学校の教室に出向いて授業を受ける生徒もいるとのことです。
この間、高等学校での「分校・分教室の設置」は、交流を通して双方へ効果的な結果がみられたことも報告されていることから、本市においても整備のあり方として検討されることを要望します。
教室不足解消については、生の松原特別支援学校に、その解消のための調査が進められているとのこと。東福岡特別支援学校や福岡中央特別支援学校も深刻な状況です。教育環境の整備として引き続き対策を取られるよう要望します。
特別支援学校には国の設置基準がないため、特別教室を普通教室に転用してもそのこと自体が問題にされません。通常の小・中学校では考えられないことで、このままの教育環境にしておくことは、許されません。問題は、都道府県には設置義務が規定されているのに、国に設置基準がないということです。教室不足を根本的に解消する法的規定の整備を国に強く求めることを要望します。
今回の質問は、特別支援学校の教室不足が深刻な状況であることから、特別支援学校で学ぶ児童・生徒の教育保障の観点からその対策を求める質問をしましたが、決して分離教育を推進するものではないことを改めて申し上げておきます。世界はインクルーシブな教育の流れです。日本は、2011年に障害者基本法の改正を行い、2013年6月に障害者差別解消法が成立、そして本年1月には国連障害者権利条約を批准しました。条約には、通常学級で学ぶ障がいをもつ児童・生徒に対し、合理的配慮を提供することが明記されています。また、昨年9月には、学校教育法施行令が改正され、改正の趣旨として、中教審初等中等教育分科会報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」において、「就学基準に該当する障害のある子どもは特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改める」旨の、提言を踏まえ、「所要の改正を行うものである」とし、第16条には、「可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。」とされています。本年度は、特別支援教育支援員 170人分が予算措置されていますが、インクルーシブ教育実現のためにも、通常の小・中学校や高等学校での特別支援教育のさらなる推進に取り組まれることを要望しておきます。特に発達障がい生徒の進路保障は喫緊の課題です。そしてそのことが、特別支援学校の教室不足や大規模校化を招かない一助になるとも考えます。特別支援教育の更なる推進に期待します。