第3回福岡市議会定例会(2015年6月22日〜30日)

「性的マイノリティの子どもに対する支援と、多様性を尊重する社会の推進」について

 

LGBT層に当する人は、これまで約5%と言われていましたが、電通総研が本年4月に行った調査では7.6%になり、約13人に1人が「自分はLGBTだ」と回答したことになります。LGBTに関しては、メディアでも取り上げられるようになり、情報に触れることが多くなったことで、これまで違和感を持っていた人が、気づきやすくなったのではと推測されます。しかし、割合は増えたとは言え、カミングアウトをしているわけではなく、まだまだ理解が社会に浸透していないのが実情です。結果とは裏腹に声に出して言えない、隠して生活しなければならない当事者は大勢います。

 私は、2012年9月議会で、性同一性障がいや同性愛など性的マイノリティの人権教育の推進について質問し、教職員が正しい理解と認識を深め、事象に対する指導や実践に当たることが求められることや、そのためには研修や指導の実践例等が必要である事などを指摘、要望しましたが、その後、文部科学省から、新たな調査や通知が出されたことから、改めて質問しました。

 2010年4月23日に文科省は、「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」の事務連絡において、性同一性障がいの児童生徒に対して、「児童生徒の心情に十分配慮した対応を」との通知を行いましたが、福岡市教育委員会としては、どのような対応をされたのか。

以上で1問目の質問を終わり、2問目からは自席にて行います。

 こども総合相談センターでは、子どもに関する様々な相談を受けています。性同一障がいや同性愛など性的マイノリティに関する18歳未満の相談件数とその内容、学校・保護者・本人など相談者の内訳について、2010年度からの状況はどうなっているか。

 2013年度に文科省は、「学校における性同一性障がいに係る対応に関する状況調査」を行いましたが、福岡市においての実態は、どうだったのか。

 

 小・中学校それぞれ1人ということですが、特別な配慮をしている学校はあったのか、あったならそれはどのような対応をされていたのか。

 

 文科省によると、2013年の調査で性同一性障がいの児童生徒は全国に少なくとも606人いることが分かりましたが、この調査は、性同一性障がいなど自己認識を有している場合であって、教職員に開示している、つまり学校に相談を寄せた子どもであるとしていることから、実態把握にはなっていない。市教委として、実態把握をするための努力が必要と考えますがいかがですか。

 

 その2014年度調査の実態についてご報告ください。

 

 本年4月30日文科省は、同性愛や性同一性障がいなど幅広い性的少数者の児童生徒に配慮を求める通知を出しました。その概要は、どういう内容か。

 

 これまでの相談に止まらず、やっと具体的な対応に一歩踏み出した訳ですが、学校における支援の事例としては、どのような内容が示されていますか。

 

 先の文科省の調査で分かった606人のうち、およそ6割の子どもたちに対しては、学校が特別な配慮をしていると答え、服装に関する配慮が43%、保健室を更衣室として使うという配慮が35%、修学旅行のときに入浴時間をずらすなど宿泊を伴う行事での配慮が28%でした。子どもたちの様子では、周囲の理解が十分で受け入れられているケースがある一方、保護者に拒絶されたり、自傷行為に及んだりするケースもありました。

 LGBTに対しての偏見や差別、いじめなど課題が山積しています。学校生活の各場面での支援や、相談体制の充実など個別の状況に合わせた対応が早急に求められます。

 文科省の事例でも具体的には、「服装」「髪型」など、自認する性別を認めていますが、懸念されるのは、周りの児童生徒の反応です。相談体制など、個別の支援を行っても、教職員や周りの子どもたちの理解がなければ進みません。

まず、教職員に対するLGBTに関する研修はどのように行われているのかお尋ねします。

 

 宝塚大学看護学部の日高やす晴教授が2011年から13年に教員約6000人を対象に実施した調査では、6割超が同性愛や性同一性障がいについて教える必要を感じながら、授業で取り上げたことがあるのはわずか14%でした。教員自身がLGBTについて正確な知識がないばかりでなく、授業でどうLGBTに関して取り扱えばいいのか分からないことが伺えたと報告されています。正しい知識と肯定的メッセージを送れるよう、研修だけにとどまらず、教職員に対するマニュアルやガイドブックが必要と思われますがご所見を。

 

 性同一性障がいをはじめとする性的マイノリティのために悩みを抱えている子どもたちは、各校・各園各所に少なからず存在し、1クラスに1〜3人いる可能性があります。そのような子どもたちの存在に気付き、悩んでいる子どもの支援をするためには教職員が正しい知識を持って寄り添うことが必要です。早急な対応を要望しておきます。

 児童・生徒に対しても正しい知識の教育が必要となりますが、どのように考えておられるのかご所見を。

 

 「ぬくもり」の高学年用教材には、LGBTに関する教材が掲載されました。しかし、自分の性について違和感等を感じ始める時期は、それぞれ違います。岡山大学病院ジェンダークリニックを受診した性同一性障がい当事者1167人の多くが、物心がついた頃には違和感を自覚しています。約9割が中学生までに自覚、特に女性として生まれ、性自認が男性当事者の7割が小学校入学時すでに違和感を持っていたとの事です。このようなことからも明らかなように、低学年・早期からの対応が大切です。本年度より新入生の黄色い帽子が男女統一のキャップになりましたが、当事者にとっては大きな安心だっただろうと推察しています。また調査では、第2次性徴を迎え、身体が望まない性の特徴を表してくることによる焦燥感や制服の問題、恋愛の問題などが起こる思春期は自殺念慮を持つ年齢のピークと報告されています。さらに、多くの当事者が「周囲には絶対に知られたくない」と思っていたことも明らかになっています。子どもの頃の性別違和感の悩みに関して、「絶対に伝えまいと思った」75%、「迷って伝えなかった」12.5%と約9割が周囲には伝えられていませんでした。

 男女で二分したり、異性愛を前提とした学校・社会では、自らが否定的情報にさらされることとなり、自分を受け入れ難く、苦悩することとなります。

 私が当事者の方からお聞きした耐え難い思いとして、制服、男女別名簿、君さんづけの呼び方などによって身体の性別で区別して扱われることの苦痛の他に、女らしさや男らしさの強調、異性愛者であることを想定した発言や授業内容がとても苦痛だったと言われています。このことからも、隠れたカリキュラムと言われている教材のチェックは重要です。現在、「私たちの道徳」中学校版には、「異性を理解して尊重して」の項に、「好きな異性がいるのは自然なこと」とあります。これは、同性愛で悩む生徒を益々傷つけることになります。

 教材のチェック、取り扱いの注意が必要と思われますがご所見を。

 

 小中学校の男女平等教育副読本などの改訂も早急に行うべきだと考えますが、今後の予定についてお尋ねる。

 

 学校において、児童生徒が気安く相談や支援を受けることができる環境が必要です。特に、身体に対する違和感が強いケースや、自殺念慮、精神的苦痛が強いケースでは、相談を受けた教職員が一人で抱え込まないよう、医療機関との連携や、学校の内外に組織的な支援体制をつくることが求められます。どのような支援体制を考えておられるのかご所見を。

 

 性的マイノリティの人々への理解の推進、差別や偏見の解消をめざすには、家庭や市民、企業などに対する取り組みも重要です。国の第3次男女共同参画基本計画の第8分野「高齢者、障害者、外国人等が安心して暮らせる環境の整備」には、「性的指向を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要である」と基本的考え方を示し、「性同一性障害や性的指向を理由とする差別や偏見の解消を目指して、啓発活動や相談、調査救済活動に取り組む」と具体的施策が明記されています。

 福岡市においても、2016(H28)年度からスタートする第3次男女共同参画基本計画に、新たな基本目標として入れるべきと考えますがご所見を。

 

 今回は、主に学校における現状からその対応について質問、要望を述べて参りましたが、性的マイノリティの人々の就職問題は深刻です。NPO法人虹色ダイバーシティの調査では、職場で差別的な言動を見聞きした当事者は7割に上り、半数の当事者が就職や転職に困難を感じ、解雇もあったと報告しています。また、公営賃貸住宅の応募要件は、血縁または婚姻関係にある人に限られているなど、住居に関する問題も深刻です。4月に東京都渋谷区で性的マイノリティへの差別禁止と人権擁護を明記した、「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が成立し、「同性パートナーシップ証明」が大きく報道されました。2013年9月大阪市の淀川区役所が自治体としては初めて、性的マイノリティーにも配慮した行政を目指すというLGBT支援宣言を発表しました。世田谷区、横浜市、宝塚市もLGBTの支援を表明しています。福岡市は2010(H22)年に「人権尊重の視点に立った行政の推進に関する指針」を策定しています。また、市長は常々、「ユニバーサル都市・福岡」の実現を掲げておられます。性同一性障がい者や同性愛者をはじめ性的マイノリティの方々の人権問題に対しては、多様性を尊重した社会の推進が求められます。福岡市はどのように取り組まれるのか、市長のご所見を伺う。

 

 

雇用の安定を求める意見書(案)に対する賛成討論

 私は、社民市政クラブ福岡市議団を代表して、本議会に提案されました意見書案第9号「雇用の安定を求める意見書案」について賛成し、討論を行います。

 政府は成長戦略の名のもと、労働者保護ルールの改悪を打ち出しています。派遣労働の大幅な拡大、労働時間や解雇の規制緩和など、どれも労働者の生活を脅かす内容です。

 国民の多数は他者に雇われて働く労働者です。その場合、働く職場・企業と直接労働契約を結ぶことは当然のことです。労働基準法第6条では「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定め、他人の就業に介入して中間搾取をしてはならないとしています。

 労働基準法第6条の例外規定として、1985年労働者派遣法が成立しました。

 今回の労働者派遣法改正案は、「臨時的・一時的な業務に限定」し「常用雇用の代替をしてはならない」という派遣労働の大原則を取り払い、「派遣期間上限3年」を外して「無期限」に派遣労働者を雇用できるようにするものです。

 また、ソフトウエア開発や通訳・翻訳・秘書などの専門26業種の区分を撤廃して、全ての派遣期間を一律3年とし、「3年を超えても労働者を入れ替えれば、その業務での派遣受け入れはできる」としています。

 この結果、これまで、受入期間の制限があるために派遣労働者を雇用してこなかった多くの企業が、期間制限が大幅に緩和されることにより、正社員を派遣労働に置き換えることが予想されます。

 企業は人を代えれば派遣をずっと受け入れられるようになる一方、派遣労働者は専門業種も含めて3年ごとに仕事を失う恐れが生じ、不安定な働き方が固定化されてしまうことになります。派遣社員は、正社員に比べて身分が不安定で、賃金も低く、権利性も弱い、その課題を放置したまま派遣労働を拡大することは許されず、派遣労働者の雇用安定と処遇改善を実現するとともに、正社員への転換を進めるための労働者派遣法の見直しこそ、今求められています。

 4月3日、高度プロフェッショナル制度の創設や「裁量労働制の対象業務の拡大」等を含んだ「労働基準法改正案」が閣議決定されました。

 現在、労働時間に関しては「一日8時間以内、一週間40時間以内、それ以上働かせたら残業代を払う」というルールがあります。

 しかし、政府は「多様で柔軟な働き方」の名のもとに高度な業務の一定年収以上の労働者を 労働時間ルールの対象外、残業代ゼロにするとしています。

 対象となる労働者は労働時間に関する基本的かつ最低限のルールの保護さえ受けれなくなります。そうした中で、使用者から成果を強くもとめられれば、さらなる長時間労働をせざるをえなくなるのは明らかです。

 アナリストや研究開発の従事者など高度の専門的知識、技術・経験を有する業務が対象で、平均年収の3倍の労働者を対象とするとしていますが、経済界が年収400万円以上を対象とするよう提言していることを考えると、労働者派遣法と同様、将来対象が拡大され、誰もが対象となる可能性が大です。

 さらに、現在も同じような制度として、「裁量労働制」がありますが、この対象業務を営業職にも拡大しようとしています。

 これらの制度がいったん導入されれば労働者の健康と生活を守る労働時間のルールが破壊され、長時間労働に拍車がかかり、過重労働による精神疾患や過労死などが増加することが懸念されます。

 今、日本では毎年100人を超える人が過労死でなくなっています。昨年、過労死防止に関する国の責務などを定めた「過労死等防止対策推進法」が成立し、国や地方自治体、事業主に過労死防止の対策として、調査研究や啓発、相談体制などを定めています。政府はこの法律の趣旨をふまえ、実効的な長時間労働抑制策こそ優先すべきであります。

 労働者の健康被害の予防とワーク・ライフ・バランスの確保を図るには、労働時間規制を緩和するのではなく、すべての労働者を対象とする「労働時間の量的上限規制」や「休息時間規制」の導入など、実効的な長時間労働抑制策こそ優先すべきであります。

 よって、我が会派は「雇用の安定を求める本意見書案」に賛成いたします。

 以上で本意見書案に対する賛成討論を終わります。