2015年9月議会 議案質疑 (9月10日)

1回目

 私は、社民・市政クラブ福岡市議団を代表して、本議会に提出されました諸議案のうち、議案第192号「平成27年度福岡市一般会計補正予算案(第2号)」総務管理費及び戸籍住民基本台帳費について、議案第198号「福岡市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例案」並びに議案第213号「福岡市立幼稚園条例の一部を改正する等の条例案」について質問を行います。

 まず始めに、議案第198号「福岡市行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく個人番号の利用に関する条例案」及び議案第192号「平成27年度福岡市一般会計補正予算案(第2号)」のうち、総務管理費及び戸籍住民基本台帳費についてです。これらは、いずれも本年10月5日からスタートするマイナンバー制度の導入に関して、番号法に基づく条例の制定であり、制度の実施に伴う関係事務・設備経費であることから、併せてお尋ねします。

 2014年ベネッセの個人情報大量流出事件は記憶に新しいところですが、本年5月、日本年金機構から年金受給者や加入者の個人情報約125万件が流出した問題は、個人情報に対する不安が高まり市民の意識を大きく変えました。そのような中、2013年5月31日公布の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」いわゆる「番号法」が本年10月5日よりスタートします。
そこでまず①マイナンバー制度の導入目的についてお尋ねします

【総務企画局】

  • 番号法の導入目的は,行政運営の効率化及び行政分野における公正な給付と負担の確保を図ること,国民の利便性の向上を得られるようにすること。

 さらに、②2002年からスタートした住民基本台帳ネットワークシステム、いわゆる住基ネットとマイナンバー制度との違いはどこにあるのか、業務内容、位置づけの違いをお示しください

【総務企画局】

  • マイナンバー制度と住基ネットとの相違点は,マイナンバー制度は,番号法で規定された業務の情報を照合することが可能である一方,住基ネットの情報は,氏名など5情報に限られ,利用範囲も住民票関係の事務に限定。

 さて、議案第198号条例案は、「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」いわゆる番号法の第9条第2項の規定に基づき、個人番号の利用に関して、必要な事項を定めるものと認識していますが、③具体的にはどういった内容なのか説明を求めます

【総務企画局】

  • 番号法の中で個人番号の利用範囲や他行政機関との情報のやりとりは規定されているが,自治体独自の個人番号の利用や庁内における情報のやりとりについては各自治体の条例で定めることになっている。本市においても必要な事項を定めるために,本条例案を提出したもの。

 また、④番号法を所管している内閣官房社会保障改革担当室や総務省は、地方自治体に対して「上乗せ、横だし」の利用拡大を働きかけていますが、今回の事務内容にはそのような内容は盛り込まれていないのかどうかお尋ねします

【総務企画局】

  • 市における事務の「上乗せ,横だし」,いわゆる独自事務については,国や他の自治体間の情報連携が始まる平成29年7月を目途に,検討を進めている。今回の条例案においては規定していない。

 さらに、⑤補正予算案には、社会保障・税番号制度対応として、6億7773万8千円の補正額が計上されていますが、その内訳と国庫・市単費の別にお示しください

  • 【総務企画局】:マイナンバーのコールセンター設置経費(市単費) 63,000千円
  • 【市民局】:614,738千円
    ・地方公共団体情報システム機構への委任交付金  508,731千円
    ・個人番号カードの交付体制強化経費(委託料等)  29,547千円
                  計(全額国庫補助) 538,278千円
    ・通知カードの不着返戻対応経費(委託料等)    58,132千円
    ・通知カード等追記欄記載体制強化経費(借損料等) 14,390千円
    ・市民課環境整備関係経費(サイン変更等)     3,938千円
                  計(市単費)     76,460千円

2回目

 今回の補正予算だけを見ても、国庫補助が5億3,827万8千円、市単費が1億3,946万円です。2014年の報道では、「導入費用が2〜3千億円、毎年の運営経費が数百万円」とされていますが、政府は経費の全貌を明らかにしていません。番号法の導入目的に「行政運営の効率化」とありますが、財政上果たしてこれが効率的と言えるのか、はなはだ疑問です。
 さらに、このような直接経費だけでなく、税申告をする多くの事業者も新たな制度に対応したシステムに改修しなければならず、試算は行われていないようですが、事業者の自己負担は相当な額になると思われ、準備の遅れも指摘されています。
 また、住基ネットとマイナンバー制度の違いをお尋ねしましたが、最も大きな違いは、住基ネットは、地方自治体が責任をもって管理運営するという位置づけの「自治事務」でしたが、マイナンバー制度は本来国が行う事務を地方自治体に委託するという位置づけである「法定受託事務」です。住基ネットでは、自治体の判断で不参加を表明することもできましたが、マイナンバー制度ではそういったことはできません。番号でつながる国民の個人情報すべてを国が把握するという事です。
 2015年10月から個人番号と法人番号が付けられ、対象の個人と団体に通知されることで、スタートするマイナンバー制度ですが、⑥社会保障・税番号制度の運用までのシステム整備などプロセスについてお尋ねします

【総務企画局】

  • 制度の運用までのプロセスについては,各種行政手続きにおける個人番号の利用と個人番号カードの交付が開始される平成28年1月までに,必要なシステム整備を行うとともに,業務マニュアルの整備と担当職員の研修を実施。
  • また,平成29年1月には国の機関における情報連携が開始されるとともに,マイナポータルと呼ばれる情報提供等記録開示システムが稼働し,さらに,平成29年7月には,地方公共団体での情報連携が開始される予定。

 現代社会では、社会経済活動をしている限り、住民票コードや社員番号、預金番号、基礎年金番号、運転免許証番号、クレジットカード番号など、あらゆる場面で番号が使われています。 カードの紛失や盗難に遭ったとしても、別々のカードや番号であれば、限定的な被害に留まります。
 当初、「特定個人情報」は、税と社会保障、災害に関する公的業務に限定して使用するとしていましたが、金融や医療の分野にまで広げることを目的とした改正マイナンバー法が9月3日成立しました。日本年金機構のシステムから大量の個人情報が流出した問題を受け、年金との連結は延期されましたが、2018年から預貯金口座に適用されることになりました。所得の把握はまさに民間分野です。当初の限定的使用から民間分野に及ぶ利用拡大の問題は看過できません。まず、⑦当初の公的業務に限定としていたものが、預貯金の把握へと拡大されたことに対してどうお考えか

【総務企画局】

  • 行政運営の効率化と公平・公正な社会の実現を目的として,運用当初は本人の意向も踏まえ任意で開始されるものと聞いている。

 さらに、⑧官民の幅広い分野で番号の一元化が行われると、番号に結びついた多くの個人情報が集積されるので、流出した場合の被害は飛躍的に大きくなるのではないかとの懸念があります。どのようにお考えか、ご所見をお伺いします。

【総務企画局】

  • マイナンバー制度が導入されることで,個人情報が1ケ所に集積されることはない。これまでと同様に個人情報は分散管理され,必要な場合に,インターネットとは独立した専用のネットワークを介して,暗号化された情報が提供されるしくみとなっているなど,情報の流出を防止する対策がとられている。

 個人番号いわゆるマイナンバーは、「見える、見せる」番号で、「通知カード」にも記載されています。「通知カード」は、世帯単位に郵送されます。世帯単位で送られてくることで最も懸念されることは、DVやストーカー等によって住所地から避難している被害者住所が提供先から漏えいされるのではないかという危険性です。また、現在DVの状況下にありながら保護、もしくは避難されていない場合、正しく本人に渡らず加害者に悪用される危険性もあります。内閣府男女共同参画局は、「やむを得ない理由により住所地においてマイナンバーが記載された通知カードを受け取ることができない方へ」としたリーフレットを作成し、8月24日から9月25日までに、本人確認書類等を添付した「居所情報登録申請書」を住民票のある市区町村に持参または郵送するようにと、しています。しかし、加害者と接近の恐れがある住所地に持参は危険です。これらの情報が当事者にどの程度周知されたのか、非常に危惧するところです。⑨関係機関の協力も必要と考えますが、この内容はどのように周知されたのか、お伺いします

【市民局】

所情報登録については,ホームページや各区市民課等で案内をしているほか,DV被害者等に対しては,こども未来局や保健福祉局の関係課より,個別にチラシを送付するなど必要な周知を行っている。

 また、⑩配達不能で返戻された通知カードの扱いはどのようになるのか、お尋ねします

【市民局】

  • 各区役所に返納された通知カードは,受け取りを促すハガキを送付したうえで再送付する。それでも返送された場合は再交付等の対応ができるよう28年3月末まで保管する。

3回目

 政府は、10月からマイナンバーの通知を、来年1月から個人番号カードの交付、利用を順次始めるとしています
 個人番号カードは申請方式で義務ではありません。通知カードと運転免許証やパスポートをセットで使えば本人確認ができます。しかし、財務省は、2017年4月の消費税率10%への引き上げを前提に、酒類を除く飲食料品についてはマイナンバーカードを使って税率2%の引き上げ分を購入後に還付する案を示しました。消費税率引き上げに必要な負担緩和策の論はここでは避けますが、個人のマイナンバーカードに購入記録を蓄積し、それに基づき還付を受ける新システムの導入は、マイナンバーカードの強制的ともいえる普及を狙ったものであり、マイナンバーカードの常時携帯を促す、特に子どもへの携帯など危険極まりない制度です。既に、高齢者にマイナンバーに関する訪問や電話をかけて反応を探るなど、マイナンバー詐欺へとつながっていくのではないかと思われる新たな手口も報告されています。
 2017年1月から稼働予定の情報提供システム、マイナーポータルは、自宅のパソコンなどからインターネットを使って番号付きのすべての情報を取得できる個人用のサイトですが、利用する際は、個人番号カードとパスワードが必要です。しかし、個人番号カードとパスワードが不正に入手されてしまえば他人から全ての個人情報が見られてしまう危険性は否定できません。また、パソコンを持ち込まれた高齢者宅でのなりすまし詐欺などが発生する危険性もぬぐえません。
 マイナンバーカードの普及を進めたい政府は、「マイナンバーは大丈夫」と強調しますが、日本年金機構の個人情報漏えい・流出事件と同じような事件が起こらないとは限りません。巧妙化・複雑化するサイバー攻撃に対し、しっかりした管理と万全の対策ができるのか、「安全」に「絶対」はありません。しかも、マイナンバー制度の実施前から、マイナンバーの対象範囲を消費税率の還付や預金口座に拡大し、予防接種やメタボ健診にまで拡大しようとしています。市における事務の「上乗せ,横だし」,いわゆる独自事務については,国や他の自治体間の情報連携が始まる2017年7月を目途に,検討を進めているとのことですが、個人情報の集積は絶対にやるべきではありません。最後に市長にお伺いします。⑪政府は、地方自治体に対して、上乗せ、横だしの利用拡大を相当強く働きかけていますが、福岡市としてはどう考えておられるのか、またDV被害者等への周知徹底を含め、マイナンバーに対する国民の不安や懸念、疑問は大きくなっていることから、⑫国に実施の中止を求めるべきと考えますが、市長のご所見をお伺いして、私の質問を終わります。

【市長】

  • 本市独自の取り組みについても引き続き検討を進めていくとともに,10月からのマイナンバー通知,平成28年1月からのマイナンバー利用開始に向けて,準備を進める。