■議案第213号「福岡市立幼稚園条例の一部を改正する等の条例案」についての議案質疑(9月10日)
1回目
次に議案第213号「福岡市立幼稚園条例の一部を改正する等の条例案」についてです。
幼稚園は、学校教育法において学校として定められた、子どもが出会う初めての学校です。2007年の学校教育法の改正により、幼児教育及び幼稚園教育の重要性が、小学校以降の義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして法的にも明確にされました。幼稚園は、生涯にわたる人格形成の基礎を養う重要な役割を担っていると言えます。中でも公立幼稚園は、市町村との密接な連携のもと、それぞれの地域のニーズに直結した幼児期の学校教育の提供、振興、・充実に寄与し、幼稚園教育要領に基づく標準的な教育を提供しています。しかしながら、本議案は、福岡市立幼稚園8園のうち、2年保育の和白、赤坂、姪浜、入部、内野、脇山の各幼稚園を2017年度末に、3年保育の雁ノ巣、金武の各幼稚園を2018年度末に閉園にするとする、市立幼稚園全8園を2018年度をもって廃園にするというものです。市立幼稚園については、市立福岡女子高校の実習園として設置された赤坂幼稚園、姪浜幼稚園と、周辺市町村との合併により引き継ぎ福岡市立として運営されてきた7幼稚園があります。この間、園児数の減少により曲渕幼稚園につては2008年度末に廃園、早良幼稚園は2001年度より休園しています。しかし、これまでの55年余りの間、市立幼稚園の教職員は、幼児教育に関するニーズの多様化に対し、文部科学省の幼稚園教育要領に沿いながら、教育委員会の研修計画のもとで、日々幼稚園教育の研究実践を繰り返し、質の高い専門性で福岡市の就学前教育を支えてきました。
しかし、2013年より福岡市教育委員会は、行財政改革の一環として唐突に市立幼稚園の廃園を含めた検討を始めました。この間、市立幼稚園の廃止を見直す議会質問や第2委員会での質問・意見、約72,000人余りの署名による請願とその審査等が行われてきましたが、教育委員会は、「慎重に検討」としながら、進捗状況も示さないまま、本年6月の定例議会において、「市立幼稚園としての役割を終えることとする」という報告を行い、本議会において廃園のための条例改正を行なおうとするものです。
①市立幼稚園の在り方については、この2年間、議会のみならず、多くの市民から存続の意見・要望が出されてきました。全園廃止に至った経緯についてお尋ねします。また、②保護者や地元の方々に「幼稚園の在り方」について説明会を行ってきましたが、どのような意見が出され、それはあり方検討にどのように反映されたのかお尋ねします。
①【教育長】
平成25年2月に「市立幼稚園をすべて廃園することが適当」との方向性を議会報告後,地域説明会やパブリックコメントを実施し,様々な意見を聞くとともに,様々な視点から市立幼稚園としての役割・必要性を整理したが,市立幼稚園としての役割を終えることとしたいと考え,6月議会にあり方の議会報告を行った後,本9月議会に条例案を提案している。
- 市立幼稚園周辺の私立幼稚園27園を訪問し,幼稚園教育要領に基づいた幼児期にふさわしい教育が行われていることを確認するとともに,各園の就園状況や通園方法などを調査した。
- 福岡市の幼稚園児を私立幼稚園で全て受け入れることは可能な状況にあることを確認した。
- 幼小連携の充実に向けた方策として,校種間の連携を強化するネットワークの構築や,実践レベルの情報の共有による保育・教育の質の向上などを検討した。
②【教育長】
- 平成25年における説明会においては,「市立幼稚園の地域と密着した関係は私立幼稚園では得難い。廃園しないでほしい。」「市立幼稚園を増やしてほしい」 などの意見がなされた。
- また,「スケジュールが拙速すぎる」,「跡地の利用については,存続の可能性も含め,子どもたちのために利用してほしい」,などの意見が出された。
- これらの意見も踏まえて検討したが,現在ある私立幼稚園で市内すべて の幼稚園児を受け入れ可能な状況であり,私立幼稚園も市立幼稚園と同様に,文部科学省の幼稚園教育要領に基づいた幼児期にふさわしい教育が行われていることなどを総合的に勘案した結果,市立幼稚園の役割を終えることとし,今回条例案を提案した。
- なお,廃園スケジュールについては,在園中の園児の教育環境に大きな変化が生じないよう最大限配慮した対応をとるとともに,幼稚園跡地については,教育財産としての活用や,新たな子ども関連施設としての活用など,子どもたちの施設としての活用を行う。
2回目
この間の議会での意見や要望、更には保護者地域の方々の意見・要望は、まったく取り入れられていません。唯一、廃園計画が当初計画から2年遅らせたというだけで、結果全園廃園に変わりはありません。市立幼稚園は廃園ありきだったと言わざるを得ません。
③6月議会で全園廃園の方向性が示されてから、順次各幼稚園で説明会が行われてきましたが、参加者からはどのような意見が出されたのか。また、姪浜幼稚園の説明会は8月31日でしたが、その時点ではすでに、本条例案は作成されていたと思わざるを得ません。今回の説明会の目的は何だったのか説明を求めます。
④更に方向性を示してから条例案の提示までが早急だったと思いますが、急いだ理由についてお尋ねします。
③【教育長】
- 参加者からは,市立幼稚園には,経済的理由や幼小連携等の観点から必要であるため廃止に反対,過去の説明会などにおける反対意見が反映されていない,市立幼稚園の廃園よりも削減すべき事業はあるなどの意見が示された。
- 地域の説明会は,6月に議会報告した「市立幼稚園のあり方」について,説明を行っている。
- なお,条例案の提案における教育委員会の意思決定は9月1日の教育委員会会議で行われている。
④【教育長】
- 廃園を前提した園児募集を行う必要があるため,9月議会において条例案を提案した。
- なお,市立幼稚園の廃止については,平成24年度にあり方案の公表後,今日まで,議会で様々な議論がなされ,地域説明やパブリックコメントで市民の意見を聴くなど,時間をかけて十分に議論,検討したものであると考えている。
3回目
本議会に議案が提出されたのが9月3日です。1日に教育委員会会議で意思決定が行われてから条例案の提出までわずか中1日です。地域・保護者への説明会は、内容はどうであれ、取りあえず終わらせるいわゆる「帳面けし」のための説明会だったとしか思えません。
また、廃園理由の一つとして、市立幼稚園と私立幼稚園の園児数の状況が示され、幼稚園児の98%が私立であり、市立はわずか2%であることが強調されてきました。しかし、福岡市私立幼稚園連盟加盟幼稚園数は120園で、開園している市立幼稚園数は7園、わずか5.8%でしかありません。また、在園児の定員充足率の減少も強調されますが、入部、内野幼稚園は20%〜30%と厳しい状況にありますが、金武を含め、赤坂、姪浜の各幼稚園は80%〜90%を推移しています。各幼稚園が設置されている地域状況を見ずして、全園の平均値で幼稚園の在り方を検討してきた、もっと言い換えれば、幼稚園教育の在り方の論議は全くと言っていいほど検討されずに、器の論議のみがなされてきた、これは福岡市の教育全般の問題としても、大変に恥ずかしいことです。福岡女子高校の保育科・保育福祉科にとって、市立幼稚園は単に保育士免許取得のためだけでなく、専門的な保育技術養成、理論と実践の接続に大きく貢献した実習園としての存在であり続けていることについて、その存在価値は再検討に値するものと考えます。
⑤廃園の理由として、市立幼稚園の役目は終わったとしていますが、幼稚園が果たしてきた成果はどのようなものか、また、廃園後はそれをどのように継承、発展させていくのかお尋ねします。
⑥市立幼稚園の所管は、福岡市教育委員会にありこの間、幼稚園に対しては直接的に指導助言をされてきましたが、私立幼稚園の所管は知事となっています。今後、福岡市の就学前教育については、どの担当部局がどのように指導・助言をしていくのかお尋ねします。
福岡市の市立幼稚園のあり方検討には「幼児期の学校教育」としての理念が見えません。「民間が担うことができるものは民間にゆだねる」としていますが、幼稚園教育の質を向上させていくためには、「民間ではできない、公だからできる教育のシステム」の研究が必要です。福岡市の幼児教育における理念を明確にさせ、その理念の実現に向けて、保育者や保護者、地域の人々みんなで語り合い、幼稚園と保育園の教育・保育の一体的な展開について福岡市のビジョンを示す必要があります。そのためにも、丁寧な論議を行うことを求めるとともに、市立幼稚園の全園廃園はすべきでないことを強く申し上げておきます。
最後に、⑦人権教育や障がい児教育の在り方等を含め、福岡市の就学前教育の構築をどのようにすすめていかれるのかお尋ねして、社民・市政クラブ福岡市議団を代表しての質問を終わります。
【教育長】
⑤【指導部】
- 市立幼稚園は,小学校以降の教育の基盤となる幼児期にふさわしい教育を推進し,幼稚園教育要領に基づいて,園児一人ひとりの実態に応じたきめ細かな保育を行ってきた。また,「新しいふくおかの教育計画」に示している幼小連携教育の充実にも努めてきた。
- 福岡市の幼稚園児の98%は市立幼稚園に通っており,幼児教育の大半は私立幼稚園が担っている。私立幼稚園では,市立幼稚園と同様に,幼稚園教育要領を踏まえた幼児期にふさわしい教育が行われている。
- 現在,すべての小学校で行っている保幼小連絡会とともに,中学校も加えた合同研修を行うことにより,幼稚園教育の質の向上に取り組んでいく。
⑥【指導部】
- 私立幼稚園については,福岡市幼稚園連盟が研修等を含め教育の質の向上を担っているが,「福岡市保・幼・小・中連絡協議会」を要に,教育委員会やこども未来局がこれまで以上に幼稚園連盟との連携を深め,「新しいふくおかの教育計画」に則った就学前教育や人権教育等を推進していく。
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