2015年12月議会 一般質問 (12月16日)

「臨時教員採用候補者選考試験」と
「福岡市立学校教員採用候補者選考試験」について

①福岡市は各学校の児童生徒数を基にした学級編制を県に届け出、県はそれに基づき教員定数の配当をします。しかし、正規教員の人数が足りない場合は、定数内講師を任用します。近年、学校現場から定数内講師が増加傾向にあるのではないかとの指摘を受けています。そこで、10年前の2005年度、2014年度、2015年度の定数内講師の配置人数とその割合をお尋ねします。併せて、2015年度の定数内講師率を小・中・特別支援学校の校種別にお尋ねします
 以上で1問目の質問を終わり、2問目以降は自席にて行います。

【教育長】

  • 定数内講師の配置人数と教職員定数全体に占める割合は,各年度5月1日現在で,
    17年度は384人,6.7%
    26年度は541人,8.6%
    27年度は525人,8.2%
  • 27年度の校種別の定数内講師の配置割合は,
    小学校が5.5%
     中学校が10.4%
     特別支援学校が15.9%

昨年、今年と常勤講師が500人台に増加していますが、その要因をどう分析しているのかお尋ねします

【教育長】

 定数内講師が増加している要因は,平成17年度から27年度までに福岡市の児童生徒数が増加したことに伴い,教職員定数が623人増加していることが主なものである。
 教職員定数が増加する場合,正規教員の採用数を増やす必要があるが,将来的に福岡市の児童生徒数の減少が見込まれており,教職員定数も減少することとなるため,新規採用は世代間構成を平準化できるよう計画的に行っている。
 定数内講師の増加は,世代間構成が平準化できる範囲内で,定年退職者数を超える人数を採用することで可能な限り抑制している。

定数内常勤講師と正規教員の処遇の違いをお示しください

【教育長】

 定数内常勤講師の勤務条件については,正規教員に準じるものとされており,週の勤務時間,年次有給休暇日数,特別有給休暇については正規教員と同様になっている。
 また,給与については,正規教員と同様に経験年数に応じて給料月額を決定している。
 校務についても,正規教員と同じく学級担任などの校務分掌を担当し,部活動顧問を担当することができる。
 正規教員との違いは,任用期間の定めがあることのほか,給与について適用される給料表の級が異なるため,同じ経験年数を有する者でも給料月額に差が生じることがあること,学年主任など特定の校務分掌を担当できないこと,などがある。

④定数内常勤講師の他に、産休、育休、病休等代替教員などの短期・短時間勤務講師、非常勤講師が
いますが、非常勤講師の勤務時間など処遇についてお尋ねします

【教育長】

 非常勤講師の勤務条件については,任用目的に応じて異なるため,任用例が最も多い学習指導等支援補充関係の講師について申し上げる。
 勤務時間は週27時間30分で,時間外勤務はない。
 報酬は日額10,240円
 通勤状況に応じて交通費相当加給金が日額850円を上限として支給される。
 年次有給休暇は任用期間に応じて定められ,結婚休暇・夏季休暇などを除いた正規職員の特別有給休暇に当たる事項については,勤務免除を受けることができる。
 校務については,学級担任や部活動の顧問は担当できないが,その他の校務は任用事由に応じて行うことができる。

⑤非常勤講師の勤務時間は週27.5時間ですが、学校行事や地域行事等で時間外勤務を余儀なくされることも少なくないと聞いています。「繁忙期に頼まれれば断れない」など、時には18時〜19時まで校内に留まり、正規教職員と教材作り等の手伝いをしていることもあると聞き及んでいます。超過勤務を断れない状況を放置することは、まさに「学校がブラック企業化している」と言われるゆえんです。職務上の監督者である学校長へ、非常勤講師の勤務時間の徹底と全教職員への周知を行う必要があると考えますがご所見をお伺いします

【教育長】

 非常勤講師の勤務時間については,任用の際に,本人及び学校長に対して,任用説明用紙などにより,業務内容及び勤務条件を説明する中で周知をしている。
 今後とも学校長に対し,勤務時間の徹底について,学校内で全職員に共通理解の徹底を図るよう指導していく。

⑥昨年度は常勤・非常勤の講師不足が顕著だったように思われます。学校現場から、産休代替がまだ来ない、病休代替が来ないので専科教員や教務主任が担任に回らざるを得ない、などの声を聞きましたが、実情はどうだったのか、昨年と本年度の状況をお尋ねします

【教育長】

 平成26年度の病気休暇代替の講師が任用できなかったケースは8件
 平成27年度は1学期末時点で4件ある。
 なお,産前産後休暇代替の講師が任用できなかったケースは,昨年度及び今年度ともにない。

⑦産休代替で任用できなかったケースはないということですが、産休は早めにわかっているのにもかかわらず配置が遅れると、子どもや保護者の不安や不信を招くのではないかと懸念されます。これまで、最長何日間待たせたのかお尋ねします

【教育長】

産前産後休暇代替の講師が配置されるまでに要した期間については,平成27年度において最長72日間である。

 代替の講師が任用されないということは、教員1人が欠員状態ということです。只でさえ多忙化が言われる現場の混乱は火を見るよりも明らかです。

常勤・非常勤講師の不足要因をどう分析していますか

【教育長】

 年度中途の病気休暇及び産前産後休暇の代替として配置する講師は不足する状況にあったが,その要因については教員の大量退職に伴い,現在多くの教員を採用しており,講師候補者の絶対数が少なくなっていることや,学校現場で若い教員の比率が上昇しており,産前産後休暇や育児休業を取得する者が増えていることが主な要因と考えている。

 要因はそれだけでしょうか?
⑨福岡市は、次年度の講師登録のために、毎年12月に「臨時教員採用候補者選考試験」を行っています。福岡市が講師登録の選考試験を行う目的をお尋ねします。また、本市と同じように講師選考試験を行っている政令市はあるのかどうかお知らせください

【教育長】

臨時教員採用候補者選考試験の実施目的は,選考及び任用手続きの透明性を高めるとともに,講師の質的な水準と必要数を確保することである。
福岡市と同様に,全ての講師候補者を選考する目的で採用候補者選考試験を行っている政令市はないが,広島市では市費少人数教育推進のための臨時的任用教諭選考試験が行われている。

⑩この間、現場経験等を評価に反映するため、「臨時教員採用候補者選考試験」に特例事項として筆記試験の一部免除や、筆記及び面接試験の全部免除など試験の免除制度が導入されています。名簿登載者の中から、試験の成績によって、任用時期の目安が早い順にABCDと示されると聞いていますが、登載基準はどのようにして決められるのかお尋ねします

【教育長】

 臨時教員採用候補者選考試験は,講師として求められる資質や能力の確認をした上で合否を決定し,名簿登載を行っている。
 名簿登載者は,試験成績等に基づき校種や教科ごとに上位者から欠員状況に応じ,年度当初から順に任用している。
 なお,教員採用候補者選考試験の2次試験の不合格者のうち,面接試験の成績が良好であった者や本市の講師としての勤務状況が良好であった者に対しては,臨採試験の全部を免除し,年度当初から任用を行っている。

過去3年間の「臨時教員採用候補者選考試験」受験者数をお示しください

【教育長】

 臨時教員採用候補者選考試験の受験者数は,平成25年度が1,254人,26年度が1,286人,27年度が1,342人である。

この度の講師不足はこの制度が影響しているとは考えられないか、お尋ねします。

【教育長】

 講師についても,正規教員と同様に福岡市の求める教員像に基づいて選考を行うことで,講師の質と数の確保をする必要があるものと考えている。
 県内の各自治体が講師の確保を本格化する時期に先駆けて12月上旬に臨時教員採用候者選考試験を実施することで,必要な講師候補者を確保し,優秀な人材を年度当初から配置することができているものと考えている。
 また,名簿登載者にとっても,年度当初から任用する見込みであるなどの任用時期の目安が示されることにより,次年度の就労に関する安心感を与えることにつながるものと考えている。

講師登録をされ、登載順に任用待ちであるにもかかわらず、随時募集の人が先に任用された例はありますか

【教育長】

 講師任用は,臨時教員採用候補者選考試験での名簿登載順に任用することを基本としているが,例えば通勤に困難性がある場合や講師に特別な経験を求められる場合など,適材適所の人材配置を行う上で,名簿登載者の中に適任者がいなかった際には,随時登録者の中から任用する場合もある。

⑭「臨時教員採用候補者選考試験」は自己PRシートが必要ですが、随時募集の申込書は履歴書のみの簡易なものであると聞きます。講師の中には、選考試験を受けずに随時募集で登録するとも聞きます。講師登録の公平性に欠け、制度の当初目的が揺らいでいるのではないかと思いますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

 特別な事情がある場合を除き,基本的には臨時教員採用候補者選考試験での名簿登載者の上位者から順に任用しており,公平性の確保はできていると考えている。
 なお,随時登録制度においても,個人面接を行うことで教員としての適格性を十分に確認している。

⑮講師登録のための受験者数は増えているのに講師は足りない現状です。「講師の質と数の確保」はA,Bの登載者には有効であっても、それ以外の登載者にはむしろあきらめ感を生み出し、意味をなさないというのがご本人たちの声です。「臨時教員採用候補者選考試験」は廃止すべきと考えますがご所見をお伺いします

【教育長】

 臨時教員採用候補者選考試験においては,筆記試験や集団面接を通じて福岡市の教員として必要な適格性の確認を行い,年度当初に配置することを念頭に置いた講師の選考を行っている。
一方,随時登録制度では,年度中途で発生する病気休暇や産前産後休暇に代替として配置する講師を確保している。
 両制度とも人材確保を図る上で必要であると考えており,今後とも両制度を活用しながら,年間を通じて必要となる講師の確保に努めていく。

⑯「福岡市立学校教員採用候補者選考試験」いわゆる教員採用試験についてお尋ねします。
過去3年間の受験者数と合格者数、併せて合格者のうち講師経験者の人数をお知らせください

【教育長】

 教員採用候補者選考試験の過去3年間の受験者数,合格者数及び合格者に占める福岡市立学校での講師経験を有する者の人数については,
 平成25年度は,受験者1,972人,合格者308人,うち講師経験者は157人,
 平成26年度は,受験者1,737人,合格者318人,うち講師経験者は156人,
 平成27年度は,受験者1,658人,合格者312人,うち講師経験者は164人である。

⑰常勤、非常勤を問わず、多くの講師の方々は「次年度は正式採用で」、と採用試験の勉強に励みます。
しかし、多くの講師は、担任業務や部活動、生徒指導等で中々試験勉強に集中できないジレンマを抱えています。
そのような中、福岡市での受験資格者は、一般選考では満40歳までですが、「教職経験者特別選考」として、この10年間に正規教員3年以上または常勤講師通算5年以上の勤務経験がある人は満59歳まで受験資格があります。正規教員への道を大きく開いたとして大変評価されています。しかし、10年間で5年以上の講師経験は中々難しく、今年41歳の方が一般選考で受けられず、講師経験も3年で5年に満たなかったことから特別選考も受けられなかったということです。講師歴は長いが、非常勤講師が多く常勤講師期間が短いために特別選考枠に入らない人の中には優秀な講師もたくさんいます。本市においても優秀な教員確保のために、特別選考枠における常勤講師経験の期間を短縮し、非常勤講師経験も加算すべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

 教員採用候補者選考試験における特別選考については,スポーツや芸術などの分野における技能や社会人や教員としての経験を特に評価し,一般選考とは異なる試験内容や選考方法で教員としての適格性を判断している。
 そのうち教職経験者特別選考については,教員として学校現場で求められる学級担任や校務分掌などの学校業務全般に幅広く従事した期間を有することを評価したものであり,直近10年間のうち正規教員としては3年間又は正規教員に準ずる職務に常時従事する常勤講師としては5年間の経験年数を有することが必要であると考えている。

⑱また、福岡市は、一般選考で前年度の第1次合格者は、「教職教養」試験免除としていますが、大分県や京都市では前年度1次合格者は、次年度の1次試験を免除、京都府は2年以上の講師経験者に対する1次試験を免除など、前年度試験の優秀者や講師経験を重視しています。福岡市も1次試験合格者は次年度の1次試験を全免除することを検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

 教員採用候補者選考試験の1次試験においては,優秀な人材を確保するため,受験者のこれまでの経験等に応じた筆記試験を行い,教員としての適格性を毎年度,確認する必要があると考えている。

⑲本来は正規であるべき定数内講師や非常勤講師不足の解消のために、今後どのような方策をとられるのかご所見をお伺いします

【教育長】

 将来的には児童生徒数が減少することが見込まれるため,今後とも教員の新規採用は,世代間構成を平準化しながら計画的に行い,定数内講師の増加についても,定年退職者数を超える人数を採用することで可能な限り抑制できるよう努めていく。
 また,講師不足の解消については,臨時教員採用候補者選考試験及び随時登録制度について,ウェブサイトや専門雑誌によって福岡市の教員として勤務することの魅力を発信するなど,広報の拡充を図るとともに,新たな講師情報の収集を行うなど,受験者及び講師登録者の確保に努めていく。

 定数内講師など教員の非正規化は進めるべきではありません。若い先生も増えています。今後益々産休・育休の代替のニーズも増えるでしょう。魅力ある福岡市の教育を築いていくことを要望します。

 

子どもの貧困対策について

 子どもの貧困対策は待ったなしの課題です。
 2013年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立、翌年8月には「子どもの貧困対策に関する大綱」が閣議決定されました。「貧困の世代間連鎖を断ち切る」ことを基本方針とした大綱では、主な重点施策として、教育支援、生活支援、保護者への就労支援、経済的支援が掲げられています。教育の支援では、「学校」を子どもの貧困対策のプラットホームと位置づけ、総合的に対策を推進し、教育費負担の軽減を図ることが基本方針とされました。
 厚生労働省が2014年7月にまとめた国民生活基礎調査で、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」が、2012年に16.3%と過去最悪であったことが分かりました。
 また、11月4日、2013年度〜2014年度の就学援助受給者などの統計データを基に西日本新聞社が試算した子どもの貧困率が明らかにされました。全国平均は15.6%、九州平均が19.4%と「九州の子どもの2割が貧困、深刻さが浮き彫りになった」と報じられていますが、九州7県の中でも福岡県の子どもの貧困率は23.0%とさらに深刻な状況です。
 本調査は、奈良県の手法を参考に、何らかの公的援助を受けている子どもの数から試算したとしています。そこで、まず
①福岡市の準要保護者の就学援助受給者の過去5年間の推移を、人数と割合でお示しください。

【教育委員会(教育支援課)】

 過去5年間の就学援助の受給者数と児童生徒数全体に占める割合は、
   平成22年度  26,087人  23.5%
   平成23年度  26,690人  23.9%
   平成24年度  27,437人  24.6%
   平成25年度  27,055人  24.2%
   平成26年度  27,511人  24.4%  である。

奈良県と同じ手法で試算すると、福岡市の「就学援助等の受給者等の割合」はいくらになりますか

【こども未来局】

 奈良県の試算は、小中学生の就学援助受給者数や高校生等奨学給付金の受給者数をもとに算出されており、国が公表している「子どもの貧困率」とは異なる。また、就学援助の認定基準は自治体ごとに違うため、他の自治体と単純に比較することはできない。
こうした点を踏まえた上で、最新の数値を用いて試算すると、福岡市における就学援助等の受給者等の割合は23.6%となる。
※人口は平成26年10月1日現在推計、就学援助受給率・就学給付金受給者数は平成26年度。

過去5年間、「子どもの貧困対策」としてとりくまれた事業はどのような事業か、教育委員会とこども未来局、保健福祉局にお尋ねします

【教育委員会(教育政策課)】

 就学援助、特別支援教育就学奨励費、福岡市教育振興会奨学金、スクールソーシャルワーカー活用事業、スクールカウンセラー等活用事業など。

【こども未来局】

 こども未来局においては、区の「家庭児童相談室」や「ひとり親家庭支援センター」での相談・支援、ひとり親に対する児童扶養手当の支給、母子父子寡婦福祉資金の貸付などのほか、子育て家庭への経済的支援として、児童手当の支給などを行っている。
 また、平成27年度から、婚姻歴のないひとり親に対し、保育料等における寡婦(夫)控除のみなし適用を開始したほか、ひとり親家庭の親に対する高等学校卒業程度認定試験合格のための講座費用の助成や、養育費セミナーなども行っているところである。

【保健福祉局】

 保健福祉局においては,子の養育や就学に課題がある生活保護世帯及び生活困窮世帯を対象に生活や教育に関する支援を行う「子どもの健全育成支援事業」,生活保護世帯及び生活困窮世帯の子どもを対象に,居場所の提供や学習支援を行う「子どもの学びと居場所づくり事業」を実施している。

 就学援助受給者数とその割合は、子どもの貧困状況を反映して増加傾向にありますが、制度が果たす役割は大変大きくなっています。そこで
就学援助費の対象項目を改めてお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 就学援助の対象項目は、給食費、学用品費等、入学準備金、社会科見学費、校外活動費、修学旅行費、体育実技用具費、卒業記念品費、通学費 である。

⑤2010(H22)年度より、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費が要保護世帯に係る国の補助基準の対象になりましたが、福岡市は、他都市で対象としていない社会科見学、卒業記念品費、修学旅行時の旅券申請手数料を独自に就学援助の対象項目としているとして、対象としていません。すべての児童生徒に関わるものとして、生徒会費月50円、PTA会費月400円として就学援助の対象とするとその試算額はいくらになりますか

【教育委員会(教育支援課)】

 生徒会費及びPTA会費を対象項目とした場合、平成27年度の児童生徒数で試算した場合の額は、生徒会費が約550万円、PTA会費が約1億3,000万円である。

 県内でも中学校生徒会費と小中学校PTA会費は筑紫野市や春日市、太宰府市など6自治体が対象としています。本市でも検討されることを要望しておきます。
⑥修学旅行費は就学援助の対象になっていますが、キャンセルが発生した場合のキャンセル料も含まれているのかどうかお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 就学援助の修学旅行費については、旅行に参加するための交通費や宿泊費などを対象としており、キャンセル料は含めていない。

⑦急病により参加できなくなることや、不登校の児童生徒については、ぎりぎりまで参加するかどうかを決めかねることが多いと聞きます。キャンセル料を保護者負担としないために、不参加を早めに決めざるを得ず、不登校の児童生徒にとっては非常に苦しい判断を迫られることになっています。嘉麻市は対象にしているとのことです。不登校生徒の支援としてもキャンセル料も就学援助の対象にすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(教育支援課)】

 修学旅行のキャンセル料は、旅行に参加するための直接必要な経費でないことから、就学援助の対象項目にすることは、馴染まないものと考えている。
 なお、国においても、キャンセル料は、生活保護世帯など要保護者への補助対象とはされていない。

 不登校児童・生徒の参加については、本人・保護者、そして担任もその当日まで希望をつなぎます。急病などやむを得ずのキャンセルを含め、就学援助対象者はわずかな人数であろうと推測します。まずは実態把握に努め、本市単独での支援策を検討されることを求めます。

⑧貧困家庭における子どもの虫歯の出現率の高さも指摘されていますが、医療援助の対象として、歯肉炎、視力低下によるメガネも対象とすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(健康教育課)】

 医療援助は、学校保健安全法第24条に基づき、同法施行令第8条に定める疾病を治療するための医療費として実施している。
 なお、医療援助の対象となる疾病の拡大については国に要望している。

⑨消費税増税に伴い、就学援助国庫補助金の予算単価が引き上げられました。本市においても、引き上げが反映されているのかどうかお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 準要保護者の就学援助の支給額については、要保護者の国庫補助の予算単価の引き上げに準じて、平成26年4月から引き上げている。

⑩就学援助制度は学校教育法で定められた制度ですが、認定基準や給付内容は市町村ごとに決められています。福岡市の就学援助の認定基準は、どのような算定方法によるものなのかお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 就学援助の認定基準は、生活保護で用いる最低生活費の基準額の1.25倍相当の年収額に係る市民税の所得割額を算定して基準としている。

生活保護基準額の1.25倍相当の年収を下回る収入世帯としているということですが、2015年度の認定基準額はいくらかお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 平成27年度の認定基準額は、子ども2人の場合の市民税所得割額で89,000円である。

⑫2013年8月、2014年4月、2015年4月と3回にわたって生活保護基準が引き下げられました。本年度より福岡市でも就学援助認定基準が89,000円に下がりましたが、下がる前の2014年度の認定基準額はいくらですか

【教育委員会(教育支援課)】

 平成26年度の認定基準額は、102,500円である。

両親と子ども2人の世帯で、年収額はどうかわったのでしょうか

【教育委員会(教育支援課)】

 両親と子ども2人世帯の場合の認定基準額を年収額で見ると、平成26年度の約450万円から平成27年度は約418万円となっている。

これまでの就学援助受給者のうち、本年度受給できなくなった人数は何人ですか

【教育委員会(教育支援課)】

 平成27年度の認定基準額が下がったことに伴い対象外となる児童生徒は、約240人と試算しているが、実際の人数については把握していない。

⑮では、申請をしたが認定基準額が下がったことによって不認定になった人は何人ですか

【教育委員会(教育支援課)】

 平成27年度の不認定者のうち、平成26年度の認定基準額であれば認定されたのは、4世帯6人である。

 実際に4世帯が不認定ということですが、数校の学校事務職員にお尋ねしたところ、事務室へ相談に来られた時点で、今年は対象とならないとわかり申請されなかったケースが各校あったようにお聞きしています。
⑯生活が豊かになったわけではなく、むしろ消費税の増税で買い物も控えている、就学援助が受けられなくなる児童生徒への対策はどう講じるのですか。就学援助に代わる支援策についてご所見をお伺いします

【教育委員会(学務支援課、教育支援課)】

 認定基準が下がったことに伴い就学援助の対象外となる児童生徒については、スクールソーシャルワーカーの活用などにより、教育と福祉の両面からの支援を行っていく。

 就学援助が受けられなくなった世帯は、給食費や教材費などを現金で納めないといけなくなります。給食費と学用品費だけでも小学校で年間61,400円、中学校で81,790円です。払いたくても払えない、未納者も生み出すのではないかと懸念されます。子どもの貧困対策が掲げている重点施策の一つ「経済的支援」や、「学校」を子どもの貧困対策拠点と位置付け、教育費負担の軽減を図るとする基本方針に逆行するものです。
⑰学校の教育活動上必要となる経費のうち,公費以外の経費として,学校徴収金があります。この学校徴収金の適正な事務処理を行うにあたって,平成13年4月に作成された「学校徴収金事務処理マニュアル」というものがあり,その改訂を行うと聞いていますが、改訂にあたっては,ぜひとも,学校が困っている未納対策も含め,現場の声を反映したものとなるよう要望しておきます。
 この「学校徴収金事務処理マニュアル」には、公費で支出できるもの、私費負担とすべきものが定義されています。保護者の負担軽減や「子どもの貧困対策」として、私費負担額を減額するなど、対象項目を見直しすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(学務支援課)】

 「学校徴収金事務処理マニュアル」で私費負担すべきものの定義は、①児童生徒個人の所有物として、学校、家庭のいずれにおいても使用できるもの、②教材教具や、教育活動の結果から生ずる、直接的な利益が児童生徒の個人に還元されるものの経費、などとしている。
 私費負担すべきものとして例示している品目のうち、必要に応じて学校に備え付けるなどにより、保護者の負担軽減委寄与しているものもあり、基本的な考え方を変更する必要はないと考える。(具体的な品目については、辞書や柔道着等、必要に応じて公費負担の拡大を図っている)

⑱私費負担を「教材教具や、教育活動の結果から生ずる、直接的な利益が児童生徒個人に還元されるもの」と、定義されていますが、学校での学習に必要不可欠な教材教具が、児童生徒への「利益」とか「個人に還元」という定義づけに大変違和感があります。ノートや鉛筆、三角定規などの文房具類のほとんどは個人購入ですが、学校で一斉購入するテスト・ドリルは公費とすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(学校指導課)】

 テストやドリルについては、児童生徒が自らの学習の定着の度合いを確認し、復習や家庭学習に役立てるとともに、保護者が児童生徒の学習状況を知るためのものであるため、保護者負担が適当であると考える。

⑲生活保護基準に連動させると、来年度から就学援助の対象外になる子どもが1700人とお聞きしました。生活保護基準に連動して認定基準が下がった政令市は何都市あるのかお示しください

【教育委員会(教育支援課)】

 平成25年8月からの生活保護基準の引き下げに連動して認定基準が下がった政令指定都市は、福岡市を含めて5都市である。

⑳子どもの貧困対策が論議されているさなかに、教育支援を受けられない家庭が出てくることの問題を認識していただきたい。20政令市中連動させたのは福岡市を含むわずか5都市です。子どもの貧困対策が最優先課題となっている中で、なぜ連動させる必要があったのか。年度途中ではありますが今年度受けられなくなったであろう240人の支援を含め、来年度の援助基準の在り方についても再検討すべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(教育支援課)】

 就学援助の認定基準は、従来から、生活保護基準に準じて決定している。
 生活保護基準は、国が物価動向や低所得世帯の消費状況などを調査のうえ決定していることから、生活保護基準の変動に準じて就学援助の認定基準を定める考え方は適切であると考えている。

 就学援助の認定基準を生活保護基準に準じて決定してきたことについては、これまでは「適切」であった。しかし、子どもの貧困対策として相容れない今回の認定基準の定め方は、「適切」ではありません。撤回されることを強く申し上げておきます。
(21)DV被害を受けて、転居してきた母子が、就学援助の申請をするにはどんな書類が必要かお尋ねします

【教育委員会(教育支援課)】

 一般世帯と同様に、課税証明書や児童扶養手当証書などの書類が必要。

(22)DV被害世帯や離婚調停が進まず生活費もなく別居状態にある母子世帯など、就学援助の認定がすぐに受けられるようにすべきと考えますが、ご所見をお伺いします。

【教育委員会(教育支援課)】

 就学援助の申請にあたっては、原則、父母の課税証明書などが必要であるが、DV被害世帯や離婚調停中の場合、申請者本人のみの課税証明書などに加えて、福祉機関のDV被害に係る証明書や裁判所からの通知書などにより、ひとり親世帯として取り扱い、認定を行っている。

(23)福岡市では来年1月から子どもの入院費無料化が中学3年生まで拡充されますが、通院費は就学前までにとどまっています。福岡県は2016年度中に乳幼児医療費助成を小学6年生に引き上げる方針を示しました。通院費についても中学3年生まで無料化すべきと考えますがご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 通院にかかる医療費の助成拡充については,財源の確保や政令市の状況,福岡県の改正内容などを勘案しながら引き続き検討を進めていく。

(24)働くひとり親家庭への支援についてです。福岡ファミリー・サポート・センターでは、子育て応援をしていますが、ひとり親への利用料の助成が必要と考えます。また、病児病後児保育についても助成が必要と考えますが、ご所見をお伺いします

【こども未来局】

 ファミリー・サポート・センター事業については,会員同士による育児の相互援助活動を市が仲介している制度であり,ひとり親等への利用料金の助成については,今後,他都市の動向などに留意していく。
 病児・病後児デイケア事業の利用者負担金については,生活保護世帯,市県民税非課税世帯が全額免除,所得税非課税世帯は半額免除を行うなど,既に所得に配慮した料金制度としているところであり,現段階でひとり親家庭への利用料の助成は難しいと考えている。

(25)生活困窮者自立支援法が本年4月1日より施行されました。4つの基本視点の「子ども・若者の未来」には、「生活支援体系は、次世代が可能な限り公平な条件で人生のスタートを切ることができるように、その条件形成を目指す」と生活支援の必要性を謳っています。そして、生活支援と共に貧困の連鎖を防止するため学習支援は重要な事業です。個々人の状況に応じた一貫した支援が求められます。現在4か所で行われている「子どもの学びと居場所づくり」のほかに、各地域・学校での放課後学習支援が行われていますが、平成26年度は、何か所で、どういう形態で行われたのかお尋ねします

【教育委員会(学校指導課)】

  • 放課後に補充学習を行った学校数(平成26年度)
     小学校 38校、中学校 35校
  • 形態
     (小学校)
      ・担任や専科教員が交代で担当し、児童は漢字や算数のドリルを自分で進めながら
       分からないところを担当の教員が個別に指導する。
      ・保護者や地域ボランティアが担当し、宿題の支援を行う。
     (中学校)
      ・定期考査前に特設の補充学習会を開いて、希望生徒に対し個別指導を行う。
      ・授業で分からないところや家庭学習ノートの指導を個別に行う。

(26)11月22日、経済的困窮下にある子どもが抱える課題やサポートの在り方について、当事者や支援者が語り合う交流会がありました。福岡市でも学校外で子どもたちの無料学習支援を、NPOなどが自主財源によって行っています。しかし、ボランティアをどう作るのかが大きな課題となっていました。子どもたちの学力保障はまずは学校で責任を持って行うべきです。そのためには、夏休みの短縮など教育課程の見直しを行い、わずかな時間で学力向上を求めるより、子どもの状況に応じた支援ができる教員の加配を配置するなど、日々の学習での学びの保障が求められます。学力定着度調査と生活実態調査の関連を分析し、学習支援加配教員の配置をすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育委員会(学校指導課)】

 全国学力・学習状況調査や福岡市生活習慣・学習定着度調査の結果等を踏まえた児童生徒の実態に顕著な課題を有し、よりきめ細かい学習指導が必要な学校に対し配置している。
 今後、児童生徒の生活実態なども踏まえ、学習支援にかかる教員の配置のあり方を検討する。

(27)貧困率でみると「中卒」の貧困リスクが非常に高く、子どもの貧困対策大綱でも、指標の一つ目に生活保護世帯の高校進学率が掲げられています。そのためには中学生への学習支援は、さらに拡大する必要があります。生活困窮者自立支援法の任意事業として、「子どもの学習支援事業」がありますが、本市はこの任意事業にどう取り組まれるのかご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 「子どもの学習支援事業」については,福岡市においては,従来から「子どもの学びと居場所づくり事業」として小中学生を対象に市内4箇所で実施してきた。
 これに加えて,平成27年8月から,新たに中学2,3年生を対象とする学習支援に特化した事業を2箇所で開始したところである。
 本事業の取り組みについては,事業の成果等を検証し,今後の事業のあり方について検討いきたいと考えている。

(28)しかし学習支援事業により高校進学を果たした後、対象者が中退するケースも多く、高校中退の問題も見逃すわけにはいきません。本市における2014年度の生活保護受給者の高校中退率をお示しください

【保健福祉局】

 福岡市における平成26年度の生活保護受給者の高校中退率は,5.2%である。
 (市立高等学校の中退率(生活保護受給世帯を含む)平成26年度 0.3%)

 「子どもの貧困対策に関する大綱」によると2012年度の生活保護世帯に属する子どもの高等学校等中退率 5.3%に対し、子ども・若者白書による全国の中退率は1.5%と3.5倍にもなります。埼玉県は、中退率の高い高校1年生を対象に、学習教室を県内7か所に開設し、教員OB等が補習を行って高校中退防止に取り組み成果を上げています。貧困の連鎖を断ち切るには教育の役目は重大です。
(29)生活保護の捕捉率は2割程度と言われています。 子どもの貧困状況を知るには就学援助受給者など公的支援を受けている家庭の把握だけでは不十分です。情報不足だったり、支援を受けることすらあきらめたりしている家庭も多くあります。なかには、経済的な貧困だけではなく、関係性の貧困と言われる地域からの孤立など様々な課題があります。
 対策を講じるためには、実態把握が必要です。公的支援につながっていない家庭の把握や必要な支援策など実態調査をすべきと考えますがご所見をお伺いします

【こども未来局】

 子どもがいる世帯の収入や、生活実態、学習の状況など、貧困の実態を把握することは、大変重要であると考えており、今後、国や他都市の動向も注視しながら、効果的な方法について検討していく。
また、福岡市においては、児童福祉及び福祉の分野においては、こども総合相談センター・各区子育て支援課や、各福祉事務所のケースワーカー、学校教育の分野においては、小中学校・高校の教員、スクールソーシャルワーカー、地域においては、民生委員・児童委員、そのほかにも、保育士・幼稚園教諭、児童養護施設関係者など、さまざまな機関等が、それぞれの立場で子どもに関わり、子どもに関する情報を持っている。これらの機関等がネットワークを形成し、情報共有・情報交換を行う中で、支援を必要とする家庭や子どもに対し、的確な支援が行えるよう、しっかりと取り組んでいく。

(30)かねてから私は、子ども貧困対策は関係機関の連携を含め、全庁で組織的に取り組むべきだと主張してきました。東京都足立区では、今年度から「子どもの貧困対策担当課」を設け、全庁で取り組みを始めました。福岡市でも全庁で組織的に取り組むべきと考えます。福岡市の貧困対策にどう取り組もうとしているのか、市長のご所見をお伺いします

【高島市長】

 平成24年の国民生活基礎調査によりますと、子どもの貧困率が過去最悪の16.3%となりますなど、子どもの貧困は全国的に深刻な状況にございます。福岡市におきましても、貧困が子どもたちの生活や成長に影響を及ぼすことがないように、また、世代を超えてこれが連鎖をすることがないように総合的に対策を推進していくことは極めて重要であるというふうに考えております。そのために、国や県とも密接に連携して、また、地域や学校などのネットワークを生かしながら、教育の支援や生活の支援、保護者に対する就労の支援、また、経済的な支援に全庁でしっかりととりくんでまいります。