2108年度 予算特別委員会総会質疑 (2016年3月22日)

1. 学校徴収金の未納対策について

 これまでも、子どもの貧困対策として、学校教育費の保護者負担軽減策を求めてきましたが、今回は、未納対策の観点から質問してまいります。
①2009月9月より、学校給食費が公会計となりましたが、その経緯について、改めてお尋ねします

【教育長】

 従前の学校長が管理する会計処理では,各学校の収納状況によっては納入業者への食材料費の支払いが滞るなど,円滑な給食運営が困難になっていた。また教職員が子どもと向き合う時間をより多く確保できるよう,事務負担の軽減を図る必要性があった。
 このような問題を解消し,また,学校給食費の滞納について,保護者負担の公平性を確保する目的から,市が公会計で管理し,統一的な滞納対策にも取り組むこととしたもの。

②公会計化前の2008年度及び過去2年間の学校給食費の収納率と未納額についてお知らせください

【教育長】

                収納率   未納額   
平成20年度(2008年度)    98.9%   52,496千円
      (平成24年度(2012年度)給食費額改定)
平成25年度(2013年度)    98.9%   60,229千円
平成26年度(2014年度)    98.9%   57,934千円

学校給食費を公会計化したことの成果と課題についてお尋ねします

【教育長】

 保護者負担の公平性の確保や,学校の事務負担の軽減といった成果が出ている。
 学校給食費を一括して管理するシステムで,効率的な事務処理ができるようになったことから,これまで以上に滞納対策に取り組み,未納額を減少させていくことが今後の課題である。

④学校給食費以外に、学校が保護者から徴収している学校教育費については、各教科の学習で必要となるテスト・ドリルといった教材費や学用品費のほかに、修学旅行・社会科見学費といった校外学習費などの学校徴収金があります。その納入方法についてお知らせください

【教育長】

 ほとんどの保護者が,学校徴収金管理システムを利用した口座振替による納入となっている。

学校徴収金管理システムの利用率はどうなっていますか

【教育長】

 学校徴収金管理システムの利用率は,93.18%である。(27.9月末→28.3月末)

学校徴収金の納入状況について、過去2年間と、今年度の状況について、収納率と未納額をお示しください

【教育長】

                 収納率    未納額   
平成25年度            97.0%   55,126千円
平成26年度            97.1%   54,193千円
平成27年度(1月徴収分まで)   97.5%   47,050千円

教材費などの学校徴収金の未納についての対策は、誰がどういった方法で行っているのですか

【教育長】

 学校徴収金管理システムによる再振替もできなかった場合は,システムにより作成される「現金による納入依頼文書」を事務職員が保護者に配布し,それでも納入されない場合は,各学校で状況に応じて,事務職員,学級担任,教頭等が連携して文書や電話などによる納入依頼を行っている。

⑧今年度1月までの収納率が97.5%ということですが、収納率としては低いのではないかと考えます。何か対策を講じないと収納率は上がらないのではないでしょうか。ご所見をお伺いします

【教育長】

 収納率は,年々向上がっしている。収納率を上げるためには,口座振替時期の周知を徹底するなどの工夫が必要。

学校長自らが納入依頼を行わなければならない学校もあると聞きますが、教育委員会は把握していますか

【教育長】

 組織的な対応を図るうえで,学校長が納入依頼を行う例もあると承知している。

⑩先ほど、学校給食費の公会計化に至る経緯として、教職員が子どもに向き合う時間をより多く確保できるよう、また事務負担の軽減を図る必要性があったことがご説明されましたが、学校徴収金の未納対策については、未だに学校事務職員や学級担任が納入依頼を行っています。
 学校現場の声を聞いてきました。「未納者への督促は、事務職員、学級担任、管理職と連携して当たっているが、保護者への電話一つにしても、授業が終わって放課後に行っているが、なかなかつながらない。そのため、業務が時間外にわたり、学校職員の大きな負担となっている」とのことでした。給食費の公会計化により給食費の督促のための負担は軽減されたかのように思えますが、教材費等の学校徴収金については、未だ教育活動以外の業務に多大な時間を割かれている。このことについて、どうお考えかご所見をお伺いします

【教育長】

 平成21年9月の学校徴収金管理システムの導入により,現金徴収を行うという負担の軽減になったと考えるが,未納世帯への納入依頼が負担感をもたらしていることについては,実態を把握したい。

未納分について、業者への支払いはどうしているのですか

【教育長】

 納入まで待っていただいている。

⑫学校徴収金管理システム導入後は、その管理を学校事務職員が行い、未納があれば業者への支払いも滞るという事態が生じたことから、教材業者から学校長と学校事務担当者にあてた「教材費の早期支払いについてのお願い」が提出されました。私は、2012年10月の決算特別委員会において、この問題を取り上げ、教育委員会としてどのような対応をされたのか質しました。教育長は、「納入業者から事務局への早期支払いの要望もあり、速やかに支払いを行うよう各学校へ周知を図っていく」と答弁されました。しかし、学校に支払うよういくら言っても、納入されなければその手立てはありません。いつまで待つのか、という期間の問題もありますが、待っても待っても納入されない場合、保護者の未払金について、業者へ精算できるような方策はあるのかどうか、お尋ねします

【教育長】

 保護者の未払金については,現状では教材業者に精算できる方策はなく,繰り返し保護者に対し,納入依頼を継続していく。

⑬給食費を公会計化したことで最も大きな成果として挙げられるのは、納入業者への食材料費の支払いが滞ることがことなくなり、円滑な給食運営が出来るようになったことだと、評価しています。しかし、学校徴収金については、支払いが滞った場合、業者は泣き寝入りせざるを得ないのではないか、大変な不利益を被ることになるのではないかと危惧します。ましてや、教育委員会は納入状況を知る手立てが学校徴収金管理システムのみで、現金収入によるものは把握できていません。学校徴収金を直接担当しているのは学校事務職員です。未納世帯に対する督促業務も、概ね事務職員が行っていると聞いています。未納の現状と業者との狭間で、事務職員の苦悩は計り知れません。保護者と業者間の私会計の契約とはいえ、当初に契約した金額と支払金額に相違があることは問題とならないのでしょうか。各学校の未払い額について調査すべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

 学校徴収金管理システムで未納となった保護者への納入依頼の状況や未払い額の調査支払状況の把握について検討する。

⑭生活保護基準に連動して就学援助の認定基準が下げられましたが、これまで以上に給食費や学校徴収金の未納問題が生じてくるのではないかと危惧します。未納対策についてご所見をお伺いします

【教育長】

 保護者が確実に納入するよう口座振替による納付を勧め,給食費については,未納発生の早期の段階における納付指導を行うとともに,最終的には法的措置の実施などにより,引き続き対応していく。
 学校徴収金については,未納発生時の「納入依頼文書」配布を確実に行い,それでも納入されない場合は,事務職員,教員,管理職が連携して文書や電話などによる納入依頼を継続して行うことを,徹底する。

⑮学校が納入依頼を徹底しても未納は全くなくなっていないのが実情です。もっと行政が介入しないと納税者である業者を守ることはできないのではないでしょうか。
 12月議会において、「学校徴収金事務処理マニュアル」改訂の際に、未納対策についても盛り込んでいただくよう要望しました。生活保護受給者の未納も大きな問題となっていますが、未納が生じた場合、現在は学校長が区の保護課に依頼して、ケースワーカーが指導して学校への納入を促してもらっているところもあると聞き及んでいます。これを学校ごとに依頼して保護者に納入させるのではなく、就学援助費と同じ方法で保護者口座ではなく学校長口座に振り込むなど、簡素化できないものでしょうか。このように、教育委員会が積極的にかかわるような具体的な未納対策が必要と考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

 28年度改訂予定の学校徴収金事務処理マニュアルに,これまで記載のなかった未納に対する事務処理の方法などを明記し,学校と連携して取り組んでいく。

⑯これまで、未納対策について質してまいりましたが、本来、教育行政の責務は未納対策を講じることより、未納防止策に力を注ぐことが大前提だと考えます。未納を防止するためには、学校教育費の保護者負担軽減をして、公費負担の拡大を図ることが重要です。
 「学校徴収金事務処理マニュアル」には私費について、児童生徒個人の所有物として、学校、家庭のいずれにおいても使用できるものや、教育活動の結果から生ずる、直接的な利益が児童生徒の個人に還元されるものの経費などとしています。しかし、教育課程上必要なものや、評価の対象となる教材費の中に、公費で負担できるものがあると子どもの貧困対策にもつながります。2月22日の毎日新聞東京版では、「義務教育無償、広がる動き、122自治体が給食費補助、修学旅行含む全額肩代わりも」と報じています。国による無償化範囲の拡大が期待できない中、独自の負担軽減策を講じる自治体が続出しています。福岡市で私費から公費になったものとして、私が記憶しているものでは、学校机の引き出しや算数のお稽古セット、辞書、氏名ゴム印、近年では柔道着や剣道の防具などがあります。福岡市においても、「学校徴収金事務処理マニュアル」で定義や例示されている品目の見直しをして、公費負担の拡大をすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

学校徴収金軸処理マニュアルにおける,公費負担すべきもの,私費負担すべきものの区分は適切であると考える。

⑰学校職員の業務量の軽減、何よりも業者への適正な支払いを可能とするのが公会計化です。これまでの私の質問に対して、教育委員会は「学校徴収金は、保護者と納入業者を当事者とする契約に基づくものであるため、公会計化にはなじまない」と繰り返しの答弁でした。しかし、2012年10月、学校徴収金の取り扱いに関する私の質問に対して、監査事務局長は、「学校徴収金については、その管理を学校の事務と定め、職員が職務として行っていることから、「福岡市準公金等取扱事務処理要綱」に定める準公金の取り扱いと同様に公費に準じた取り扱いが求められている」と答弁されました。「公費に準じた取り扱い」とは具体的にどう取り扱うことなのか、教育長の説明を求めます。また、学校会計といわれるこの学校徴収金の取り扱いは、学校長の責任をどこまで考えているのでしょうか。ご所見をお伺いします

【教育長】

 「公費に準じた取り扱い」とは,学校徴収金は公費ではないが,公費に準じるものとして,適正な手続きに基づく収納や支払,適正な管理を行う,という趣旨と受け止めている。
 学校長には公金に準じて,学校徴収金の適正な管理・監督を行っていただきたいと考えている。

⑱各学校で購入するテスト・ドリル、教材など、学校徴収金の公会計化を検討すべき時期に来ていると考えますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

 学校徴収金については,保護者と納入事業者を当事者とする契約に基づくものであるため,公会計化にはなじまないものと考えている。

 

意見・要望

 学校徴収金事務処理マニュアルの改訂については、学校徴収金を「公費に準じた取り扱い」として位置付けられていることを踏まえて、教育委員会の積極的な関与を強く要望します。また、文部科学省にも学校徴収金について法律関係を明確にして、全国の自治体に対し適正な管理を行うよう提言することを求めます。さらに、生活保護基準に連動して認定基準が下がった政令市は全国で5都市のみです。12月議会でも指摘しましたが、再度、福岡市において就学援助の認定基準を下げるべきではないことを、強く申し上げて、この質問を終わります。