2016年6月議会 一般質問 (2016年6月9日)

1. 減災対策について

 4月14日、16日に発生した「熊本地震」では、熊本・大分県内に甚大な被害を及ぼしました。被災された方々に対しまして心からお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々に対しまして、心よりご冥福をお祈り申し上げます。一日も早い復興を祈念しますとともに、私たちも尽力を尽くしていきたいと思います。
 このたびの地震では49人の方がお亡くなりになりました。そのうち、9人が土砂災害で亡くなり、20人が家屋倒壊で亡くなられています。全体的にご高齢の方が多く、倒壊などによる「圧死」が死因のほぼ半数となっています。今回の2回の大きな地震は、共に夜間でした。14日は、21時26分で食事を終え入浴などくつろいでいる時間帯ですが、多くのご高齢者はすでに就寝中であったろうと思われる時間帯、16日に至っては、午前1時25分と、ほとんどの人が睡眠中の時間帯でした。このような状況の中で、多くの高齢者の方々が逃げ遅れて家屋に挟まれたり下敷きになったりして、尊い命を落とされました。
 このたびの家屋倒壊に関しては、家屋の耐震基準が問題とされました。そもそも、1920(T9)年に日本で初めての建築法規「市街地建築物法」が施行され、1950(S25)年に建築基準法が制定されて、1959(S34)年改正、防火規定が強化されました。その後、1968年の十勝沖地震を教訓に、木造住宅においては、基礎はコンクリート造りまたは鉄筋コンクリート造りの布基礎とすることなどの改正が行われました。さらに、1978(S53)年の宮城県沖地震後の1981(S56)年に耐震設計法が抜本的に見直され、現在の新耐震設計基準が誕生しました。新耐震設計基準による建物は、阪神大震災においても被害は少なかったとされています。
 これを境に、「1981年昭和56年5月以前の旧耐震基準の建物」や「1981年昭和56年6月以降の新耐震基準による建物」といった表現がされるようになっています。
 福岡市においても、11年前の福岡県西方沖地震では133棟が全壊、244棟が半壊しました。そこで、①現在、福岡市には何戸の木造戸建て住宅があり、そのうち、1981(S56)年5月以前に建築された木造戸建て住宅、いわゆる旧耐震基準の住宅は何戸あるのかお知らせください。また住んでいる方については高齢者が多いのではないかと推測されますがいかがですか

【住宅都市局】

  • 木造戸建住宅の総数:14万9,900戸(平成28年3月末現在。住宅・土地統計調査を基に推計)
  • 昭和56年5月以前の旧耐震基準で建築された木造戸建住宅:5万2,900戸
  • 耐震基準が改正された昭和56年以前の木造戸建住宅に住んでいる方は,世帯主等の年齢が65歳以上である割合が約69%となっている。

旧耐震基準の木造戸建て住宅の耐震診断については、現在どのように行われているのかお知らせください

【住宅都市局】

  • 旧耐震基準の木造戸建住宅の耐震診断先
    ・福岡県:福岡県建築住宅センターを通して1件あたり3,000円で耐震診断を実施
    ・福岡市耐震推進協議会:1件あたり3,000円で耐震診断に加え,補強計画の作成,耐震改修工事費の見積りを実施(修正部分:地元の4社の建設会社で構成→削除)
    ・福岡県建築士会:耐震診断を実施(修正部分:1件あたり3,000円で→削除)
  • 耐震診断についての市民からの問い合わせに対しては,安い費用で安心して耐震診断を受けることのできる上記の3団体を紹介している。

旧耐震基準で建築された木造戸建て住宅のうち、耐震性ありと判断されたものや耐震改修工事を施した住宅は何戸で、どの程度の割合になるのかお尋ねします

【住宅都市局】

  • 旧耐震基準で建築された木造戸建住宅:5万2,900戸
  • 耐震診断の結果,耐震性ありと判断された住宅及び耐震改修工事を実施したもの:7,300戸。
    旧耐震基準で建築された木造戸建住宅に占める割合は約14%

④1981(S56)年6月以降の新耐震基準による住宅を含めた、福岡市の木造戸建て住宅の耐震化率は何%になりますか。参考までに共同住宅及び住宅全体の耐震化率についてもお知らせください

【住宅都市局】

  • 木造戸建住宅:約70%
    (参考)共同住宅:約91%,住宅全体:約87%

福岡市の住宅の耐震化率の目標はあるのですか、あればその目標値をお示しください

【住宅都市局】

  • 平成28年度までに90%(平成20年3月策定の福岡市耐震改修促進計画)

目標に比べて耐震化が進まない理由についてはどのように分析していますか、ご所見をお伺いします

【住宅都市局】

  • 耐震改修を行わない主な理由(国のアンケート調査)
    ・耐震診断は行っていないが,耐震性があると思っている。
    ・耐震改修にお金がかかる。
    ・誰に依頼したらよいかわからない。
  • 福岡県西方沖地震から11年が経過し,市民の地震への意識や耐震化の重要性の認識が低下しつつあることも考えられる。

住宅の耐震化率を高めるための方策をどのように考えておられるのか、お尋ねします

【住宅都市局】

  • 熊本地震により市民の地震に対する意識も非常に高まっていると認識しており,引き続き,耐震診断や耐震改修が進むよう,揺れやすさマップの配布,出前講座,業界団体と連携した耐震改修セミナーや耐震改修工事見学会の開催などにより,住宅耐震化の重要性について普及啓発に努めていく。(修正部分:現在までに1,000戸を超える住宅が耐震改修→削除)

⑧福岡県は、2012(H24)年、警固断層帯など県内の主要活断層が引き起こす地震による被害想定を見直しました。警固断層が活動すると、最大震度7の揺れを引き起こすとして、県内では建物倒壊による圧死を中心に最大死者1,183人、負傷者は約2万2千人に上り、住宅やビルなどの建物被害の全半壊が約3万2千棟と想定しています。福岡市ではどれくらいの木造建物が倒壊すると想定されているのか、また死者は何名と想定されるのでしょうか

【市民局】

  • 福岡県が実施した地震アセスメント調査結果において,警固断層帯南東部でマグニチュード7.2程度の地震が発生した場合の福岡市における最大の被害では、木造建物の被害は,全壊が3,926棟,半壊が2,559棟となっている。死者は,458人となっている。

⑨家屋の倒壊から生命を守る最も効果的な方法は、建物全体を耐震改修することですが、1戸建て住宅の耐震改修費は一般的に、150万円〜200万円とされています。万が一に備えて耐震化をと思っても、経済的負担大きいことなどからなかなか進んでいかないのが現状です。福岡市における耐震改修工事費の補助額についてお尋ねします

【住宅都市局】

  • 耐震改修に要する費用の46%で,1戸あたり70万円を上限としている。

⑩低価格の工法の開発と導入が急がれるところですが、滋賀県では、経済的負担の軽減も考慮して、地震による家屋の倒壊から生命を守るため、家の中で安全な空間を比較的安く簡単に確保できる耐震シェルターや防災ベッドの設置に対する補助を実施しています。
 具体的には、1981年以前に建築されたもので、震災時に倒壊する可能性が高いと診断された個人木造住宅を対象に、耐震シェルターや防災ベッドの本体及びその設置にかかる経費として、1戸当たり20万円を限度に補助するというものです。
 福岡市においても、比較的安く安全が確保できるこの制度の導入を検討されてはいかがでしょうか。ご所見をお伺いします

【住宅都市局】

  • 木造戸建住宅における耐震シェルターや防災ベッドについては,補助対象としていない。
  • 耐震改修補助制度については,住宅全体に加えて,1階部分のみの耐震性を満足させる耐震改修工事についても補助対象とするなど,市民により使いやすい制度となるよう要件を緩和してきた。
  • 今後とも,国の動向や他都市の状況を踏まえ,人命確保の観点から,より効果的な補助制度のあり方について検討していく。

 静岡県島田市は、家屋の倒壊による犠牲者が多く出た熊本地震を受け、耐震シェルターや防災ベッドの購入、設置に対する補助制度を開始、同時に住宅の耐震工事に掛かる費用の助成も拡大するとして、市議会6月定例会に補正予算案を提出すると聞き及んでいます。
 福岡市でも、早急な対応をされるよう強く要望します。

⑪5月2日、熊本市、益城町の避難所や被災地を訪れました。被害の状況を目の当たりにしながら、避難されている方々や益城町社会福祉協議会の方とこれからの支援の在り方についてお話をしてきました。一般避難所や福祉避難所の指定をしていた所が被災を受け、その役目を果たせなかったお話を聞き、災害緊急時の避難所の指定についても深く考えさせられました。
 そこで、災害時の指定避難所は、概ね1校区に何か所ですか

【市民局】

  • 指定避難所は,公民館や小・中学校など425か所であり,1校区あたり,概ね2ないし3か所となる。

⑫地震・土砂災害・水害など災害状況によって避難場所が変わることが想定されますが、避難所が遠い学校や公民館よりも自宅に近い地域集会所等が適しているという声があります。学校や公民館への避難者の集中化を防ぐためにも、一考の余地があると考えます。地域集会所を避難所として指定できるのかどうか、ご所見をお伺いします

【市民局】

  • 地域住民が所有する集会所については,災害対策基本法及び福岡市地域防災計画に定める指定避難所の要件に該当していないことから,指定することは困難である。
  • 指定避難所への避難が困難な場合は,集会所を地域防災計画に定める臨時避難所として活用する場合がある。

⑬地域集会所によっては、先ほどの木造戸建て住宅と同じように、旧耐震基準の集会所も多いと思われます。集会所等の耐震診断をして、耐震化改修をすることで、避難所として使用できるのではないかと考えます。ご所見をお伺いします

【市民局】

  • 昭和56年5月以前の旧耐震基準で建築された集会所については,災害時に指定避難所への避難が困難な場合は,耐震改修を終えた建物であれば,臨時避難所として活用できると考えている。

⑭では、集会所の耐震化改修を地域で行う場合、市の補助制度はどうなっていますか

【市民局】

  • 集会所施設に対する補助制度については,「福岡市集会施設補助金」がある。補助金額は,経費の2分の1で,改築や耐震改修の場合,補助限度額は,200万円となっている。

要望:福岡市集会施設補助金制度は、2分の1の補助です。残り2分の1を町内会が負担しなければなりません。地域集会所の耐震化は地域住民の命を守る大事な事業です。学校と公民館に避難者が集中することを回避できる避難者の分散化や、自宅近くということで高齢者対象の福祉避難所としても期待できます。防災・減災の観点から全額補助の検討を要望しておきます。

 

2. 子宮頸がん予防ワクチン接種による副反応に対する救済について

 日本で「予防接種法」が制定されたのは1948年です。そもそも予防接種とは何のためにあるのか、改めて調べてみると、「予防接種とは、伝染病の原因になるウイルスや細菌の毒性を、発病しないまでに弱めたものをワクチンといい、これを注射などで体内に入れ、その病気に対する免疫をつけること。
 流行の可能性のある病気や、世界的に流行が続いている病気が予防接種の対象となっている。予防接種をすることで、病気に対する免疫を体内につくることで健康を守ること、また、重い感染症の流行から社会を守ることができるといわれている。」とあります。事実、病気は命を奪い、重篤な症状を残すこともありますが、ワクチンを体の中に入れることで、そのワクチンの対象になる病気にかからなくすることができたり、重症になることを防いだりすることができると聞けば、接種しておくに越したことはないと思うのは当然でしょう。まして、それが公費となればなおさらです。
 しかし、一方で、救世主と思われるワクチンには副作用があり、これまでにもHPVワクチンやMRワクチンと呼ばれるはしかと風疹の2種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、はしか・おたふくかぜ・風疹の新三種混合ワクチンMMRワクチンなど、少なくない副反応報告が上がっています。いずれもが、いつもと違う様子、発熱、頭痛、けいれん、意識障害などで、中には重篤な後遺症を残したままの人もいます。このような健康被害を救済することが始まったのは1970年ですが、救済制度が法律で定められたのは1976年です。病気にならないために良かれと子どもに受けさせたワクチンにより、健康被害を受ける。こんな不条理がまかり通るはずがありません。
 そこで、国の救済制度が動き出したといわれている子宮頸がん予防ワクチン接種による副反応について質問してまいります。まず、
子宮頸がんとはどのような病気で、その原因は何かお尋ねします

【保健福祉局】

子宮頸がんは,女性の子宮の入り口部分である「子宮頸部」にできる「がん」であり,主には性行為により,ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスに長期にわたって感染した場合に,罹患することがあると考えられている。

②HPVワクチン通称子宮頸がん予防ワクチンの日本での接種は、2009年に始まりましたが、2010年11月26日に、市町村が行う子宮頸がん予防ワクチンとヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン3つの予防接種事業に、国が事業費の2分の1を助成するとした子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金制度が設けられ、福岡市では、この制度を活用し、2011年3月1日から、中学1年生から高校2年生の女子を対象に、希望者が無料で接種できる任意接種を開始しました。その後、2013年4月1日に予防接種法が改正され、それら3つの予防接種が、市町村に接種と費用支弁の義務が生じる定期予防接種となり、子宮頸がん予防ワクチンの対象者は小学校6年生から高校1年生の女子とされました。まず、対象学年が1年早くなったのはなぜなのか、HPVワクチンは子宮頸がんの予防にどのような効果があるのか、それは原因のウイルスすべてに有効なのか、有効性はどの程度の期間持続するのか、併せてお尋ねします

【保健福祉局】

 平成22年11月に開始された国の「子宮頸がん等予防ワクチン接種緊急促進事業」では,対象年齢は「中学1年生から高校1年生の間の女子」を基本の対象としながら,なおかつ,自治体の判断により「小学校6年生から中学3年生の女子」とすることも認められていた。

 また,高校2年生の方は,高校1年生のときに1回以上接種した後,対象年度中に合計3回の接種を完了できなかった場合において,不足分を接種することが認められていた。

 その後,国において研究が進められ,平成25年4月の定期接種化にあたって,10歳から14歳の女性に対する接種が最も効果的であるとの医学的判断のもと,「小学校6年生から高校1年生までの女子」と規定された。

 厚生労働省は,子宮頸がん予防ワクチンは,子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ確認されていないものの,ワクチンを接種することにより,子宮頸がん全体の50〜70%の原因とされる2種類のヒトパピローマウイルスの持続感染やがんになる過程の異常を予防する効果が確認されており,これらに引き続いて起こる子宮頸がんの予防効果が期待できる,としている。
 なお,その効果の持続期間は現在も研究中だが,ワクチンの種類により異なるものの,初回接種後,6年間から最長で9.4年間まで確認できたとする研究報告を公表している。

③厚生労働省のHPに、ヒトパピローマウイルス感染症について、「ヒトパピローマウイルスに感染すると、ウイルスが自然に排除されることもありますが、そのままとどまることもあります。長い間感染したままでいると子宮頸がんが発生すると考えられています。子宮頸がんは早期に発見されれば比較的治療しやすいがんですが、進行した場合には治療は難しいとされています。」と説明されていますが、ヒトパピローマウイルスが自然排出される割合についてお知らせください

【保健福祉局】

 厚生労働省は,通常ヒトパピローマウイルスに感染した場合において,90%以上は2年以内にウイルスが自然に排除されるとしている。

④また、HPにはワクチン接種の効果として「HPVワクチンいわゆる子宮頸がん予防ワクチンは、新しいワクチンのため、子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ確認されておりませんが、ワクチン接種により、ワクチンが対象としているウイルスによるがんの前段階の病変への罹患リスクを90%以上減らすことができる報告されており、子宮頸がんの予防も期待されています。」とあります。福岡市は、ワクチン接種の効果をどのように捉えているのかお尋ねします

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチンは新しいワクチンのため,子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ確認されていないが,基本的には厚生労働省の見解を踏まえて対応している。

⑤「子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ確認されていない」しかも、「子宮頸がんの原因とされている2種類のヒトパピローマウイルスは、その90%は2年以内に自然に排除される」ことが明らかにされている。にも関わらず予防効果が期待できるとして定期接種化され、この間、予防接種によると思われる副反応が次々と報告されています。甚大な健康被害をもたらしてまで、予防ワクチンとして接種することの意味はあるのか、非常に疑問があります。そこで、子宮頸がん発症が最も多く見られる年齢層を上位からお示しください

【保健福祉局】

 国立がん研究センターの最新のがん統計によると,人口10万人当たりの子宮頸がん推計罹患率の年齢層の上位は,1位が35歳〜39歳で27.7人,2位が45歳〜49歳で27.4人,3位が30歳〜34歳で24.5人,4位が60歳〜64歳で21.9人,5位が50歳〜54歳で20.6人,となっている。

 罹患率が多い年代は、35歳〜39歳、45歳〜49歳ということです。効果の持続期間についてはまだ研究過程にあるようですが、仮に小学校6年生12歳で接種して、その効果が最長持続期間9.4年としても効果が得られるのは21〜22歳までです。子宮頸がん予防のためには、繰り返しのワクチン接種が必要となります。子宮頸がんを予防できる保証のないワクチンを、若い年齢層から接種することより、検診の必要性を推進することのほうが重要と考えます。
⑥予防接種後の健康被害に対して補償する「健康被害救済制度」があります。定期接種後に重い副反応が起こった場合は、予防接種法により救済措置を受けることができる「予防接種健康被害救済制度」があり、各市町村が窓口となっています。また、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が窓口となる「医薬品副作用被害救済制度」で決められた給付を受けることができます。HPVワクチンによる健康被害に対しても適用されると考えますが、いかがですか

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチン接種後の健康被害についても,他の予防接種と同様に,予防接種法に基づく定期接種であったか,もしくは任意の接種であったかによって,それぞれの制度により,厚生労働大臣の認定のもと救済されることになっている。
 なお,国において,平成27年9月に,子宮頸がん予防ワクチン接種後の症状に対する個別の審査を速やかに実施していく方針が示され,平成28年4月,子宮頸がん予防ワクチンが定期予防接種となる前に接種した方からの「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」への救済の請求件数増加に対応するため,新たに「HPVワクチン副反応被害判定調査会」を設置し,審査の更なる迅速化が図られている。

昨年9月30日、厚労省健康局長と文科省スポーツ・青少年局長より、「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に症状が生じた方に対する相談・支援体制の充実について」通知が発出されていますが、その内容についてお尋ねします

【保健福祉局】

 平成27年9月30日付通知は,子宮頸がん予防ワクチン接種後に症状が生じた方からの医療,生活,教育等多岐にわたる相談を一元的に受け付け,個別の状況に応じて柔軟に対応することを目的として,都道府県に対しては衛生部局と教育部局に1箇所ずつ必ず相談窓口を設置すること,また指定都市と中核市に対しては,窓口設置は任意とするが,都道府県と十分相談しながら対応すること等の内容となっている。

福岡市においては、どのように対応されたのか、相談件数は何件でどのような内容なのかお知らせください

【保健福祉局】

 福岡市では,接種された方が,より身近に相談ができるよう,平成27年11月に保健福祉局保健予防課及び教育委員会健康教育課にそれぞれ相談窓口を設置した。
 平成27年11月の窓口設置以降,平成28年5月末までに,保健福祉局保健予防課に7件,教育委員会健康教育課に1件のあわせて8件の相談があっている。
 その内容は,救済制度やその申請窓口に関する相談が4件,市内の医療機関に関する問い合わせが3件,就学支援に関する相談が1件となっている。

さらに、昨年12月1日、厚労省健康局健康課より、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業による健康被害の救済について」依頼文が発出されています。その内容はどのようなものですか

【保健福祉局】

 平成27年12月1日付通知は,定期接種化以前に,任意の予防接種として行われた子宮頸がん予防ワクチン,ヒブワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンの3ワクチンの接種後に生じた症状について,入院治療が必要な程度に該当しなければ不支給となっていた医療費・医療手当を,定期予防接種に係る救済と同等に,通院医療についても医療費・医療手当を給付する措置を開始する旨を周知する内容となっている。

⑩ご説明頂いたように国は、ほかの予防接種と同様、医学的に厳密な因果関係までは求めず、「接種後の症状との因果関係が予防接種によっておこることを否定できない場合には、救済する」方針を決定。入院などの医療費や障がい年金の給付に向けた審査を開始しました。そこでお尋ねします。厚労省に副反応症状が出たと報告した人数、そのうち救済制度への申請を行っている人は何人ですか。直近の人数でお示しください。また、福岡市の状況についても副反応症状の報告者数とそのうち重篤な被害者人数をお知らせください

【保健福祉局】

 厚生労働省は,子宮頸がん予防ワクチン販売開始から平成26年11月までに接種した約338万人のうち,2,584人の副反応疑い報告があったと公表されている。
 また,福岡市には9人の方の副反応報告書が届いており,このうち症状の程度が,「重い」とされている方は2人いる。
 なお,救済給付の申請人数は,厚生労働省及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構に確認を  とったが,公表していないということであり,市では把握ができない状況である。

⑪5月5日に放映されたNHKのハートネットTVによると、国が救済する方針を示したにもかかわらず、救済を求める申請は、被害を訴える報告のおよそ10%に止まっています。それはどうしてだとお考えですか

【保健福祉局】

 申請件数が把握できないため,市では承知していない。
 ただし,厚生労働省が平成27年9月に個別の審査を速やかに実施していく旨の方針を示して以降,国の審査件数は,9月が7件,10月が3件,11月が4件,12月が5件,1月が21件,2月が10件,3月が32件,4月が21件と増加傾向にあり,また,新たに「HPVワクチン副反応被害判定調査会」が設置されるなど審査の更なる迅速化が図られている状況にもあるため,引き続き,この状況を注視していく。

⑫「子宮頸がんワクチン問題を考える」シンポジウムや勉強会で、直接当事者の方々にお会いしお話を伺ってきましたが、申請書類を書いて頂ける病院、医師が少ない。医療機関の協力が得られないということです。このことは、ハートネットTVでも「国が進める救済制度に申請しようとしたところが、申請書類の作成を一部の病院に拒まれ、今も申請できずにいる」「これまでかかってきた医師に診断書を書いてもらえず請求できない」などと積極的な協力が得られない実態が浮き彫りにされました。医師会への協力を求めるべきだと考えます。なぜこういうことが起きるのか、このことをどう把握しているのかご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 厚生労働省は,被接種者からご指摘の声があることを把握しており,日本医師会など関係機関に協力依頼等を行なっている。これらを受けて市としても,市医師会へ周知を行うなど対応している。

⑬国の審査がすすまない中、ワクチン接種と症状の因果関係が明らかにならない段階においても適切な治療が受けられるよう、横浜市や大川市などのように独自の救済を行ってきた自治体もあります。任意・定期にかかわらず自治体は接種を進めてきた責任があります。福岡市においても救済措置を講じるべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチンを含む予防接種に伴う健康被害への救済措置は,関係法令により,予防接種による健康被害であったと厚生労働大臣が認定した上で行うこととなっている。

 国においては,ワクチンと健康被害の因果関係の調査研究を進める中で,昨年9月に個別審査の更なる迅速化を図る方針が示されている。本市関係者についても,それらの結果を踏まえて対応していく必要がある。

⑭本年2月25日に広島市で、そして5月30日、宮崎市で、子宮頸がん予防ワクチン接種との因果関係が否定できない症状を訴えた同市在住の10代女性に対し、市が加入している全国市長会予防接種事故賠償保障保険から補償金を支払うと発表しました。それはどういう制度で、適用されるための要件はどういうものなのか、福岡市でも要件がかなえば適応されるのかどうか、お尋ねします

【保健福祉局】

 「全国市長会予防接種事故賠償補償保険」は,「予防接種賠償責任保険」,「法定救済措置費用保険」,「行政措置災害補償保険」の3種類の保険で構成されており,各市の判断によりそれぞれ加入することになっている。

 子宮頸がん予防ワクチン接種への適用について説明すると,まず定期接種となる前の接種事業は,法定外で市が行政措置として実施した予防接種となり,「行政措置災害補償保険」の対象となる。これは,予防接種に起因して,死亡や予防接種法規定の身体障がい1級から3級以上程度に至った場合に,死亡補償金や障害補償金が支払われる。

 また,定期接種となった後の予防接種については,「法定救済措置費用保険」の対象となるが,被接種者に対しては,予防接種法の基準に基づき,医療費・医療手当,死亡一時金,障害年金などの救済措置がとられるため,この措置に係る国・県負担分を除いた,市の負担分に相当する保険金が市に支払われることになる。

 なお,この「全国市長会予防接種事故賠償補償保険」には,福岡市も加入をしており,要件等が合致すれば,適用されることになる。

⑮子宮頸がんワクチン副反応による症状は、各個人によって症状の出る時期、程度などが天候や月経周期によって変化するなど様々です。多くの被害者は、日常生活や学校生活に大きな影響を及ぼし、高校中退を余儀なくされたり、単位制高校へ編入し卒業はできたものの、副反応による症状があるため就職もできない、将来の展望も持てない状況に至っています。これからどうしていったらいいのか不安が付きまとうことなどを語ってくれました。医療費の助成に加え、学校への理解の促進や就職の支援なども必要と考えますが、ご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチン接種後に症状が生じた方への医療費の給付については,国において審査の迅速化が図られており,また,保健福祉局及び教育委員会に相談窓口を設置し,学校生活における相談等も含めて,被接種者からの個別具体的な相談を受けているところであり,引き続き,丁寧な対応に努めていく。
 そのほか,就職支援など幅広い支援については,国の方針等を踏まえ,対応を検討していく。

 先日、お会いした17歳のAさんは、何度も「悔しい!」という言葉を繰り返しながら、これまでの経緯をお母様と共に語ってくれました。中1の夏に1回目の接種をし、中2で3回目の接種後に副反応が出た方です。朝起きられなくなってからは「健康管理ができていない」と担任から責められ、症状の悪化や入院などで単位の取得が難しい状況になったときにも、協力が得られなかった。学校の先生方に副反応のことを理解して欲しい。寄り添って欲しいと、涙ながらに訴えられました。大切な時期に取り返しのつかない教育の機会を奪われた子どもたちには、遡及的に公的な支援と将来にわたる就業の支援が必要です。これは行政責任です。支援策を強く要望しておきます。
⑯接種後の健康被害が続いたため、2013年6月よりHPVワクチンの積極的勧奨を差し控えていますが、福岡市における接種件数と接種率を、国の交付金制度を活用し接種事業を始めた平成22年度(2010年度)から平成24年度(2012年度)まで、また定期接種となった平成25年度(2013年度)から平成27年度(2015年度)まで、年度ごとにお知らせください

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチンの接種件数は,国の「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金制度」を活用し,平成23年3月に接種事業を開始し,平成22年度が1カ月間で1,436件
平成23年度が69,066件,平成24年度が16,861件
定期接種となった平成25年度は,6月に接種勧奨差し控えとなったため1,449件,
平成26年度が216件,平成27年度が95件となっております。

 次に,接種率については統一された算定方法はないが,標準的な接種時期である13歳の女子の人口を分母とし,13歳の1回目の接種件数を分子として算定すると,接種期間が1カ月間であった平成22年度を除いて,平成23年度が78.6%,平成24年度が80.2%,平成25年度が2.32%,平成26年度が0.37%,平成27年度が0.03%となっている。

⑰2015年9月17日の厚労省資料では、被接種者約338万人のうち、副反応疑いの報告者は2584人、未回復の方は186人となっています。重篤な副反応の実態を解明し、全面救済をするためにも被接種者全員の調査が必要と考えます。福岡市においても、副反応の実態解明と救済のために、非接種者全員の現況調査をすべきと考えますがご所見をお伺いします

【保健福祉局】

 子宮頸がん予防ワクチン被接種者への調査については,国において,接種後に症状が生じた方への副反応追跡調査や臨床的観点からの研究に加えて,現在,疫学的観点からの調査も行われている。
 市による被接種者全員への現況調査については,当初のワクチン販売開始から7年以上が経過するとともに,被接種者数も数万人単位で存在しており困難であるが,市としては,現在設置している相談窓口について,厚生労働省や福岡市のホームページ等で広く周知を行いながら,被接種者の方からの相談に,個別に丁寧に対応していく。

⑱被害者の救済も進んでいない中、専門の診療体制や相談窓口が全国的に整備され、被害を訴える人への救済も始まったことから、十分な対策が講じられたとして、HPVワクチンの積極的接種の再開を求める声があります。言い換えれば、副反応が出ても相談・救済などの対応ができるから、ワクチンの有効性を優先すべきという考えです。本来、予防接種法による救済は安全なワクチンであっても副反応が発症してしまう被害者のための制度です。安全性の疑わしいワクチンを定期接種するためのものではありません。
 先ほどご紹介した厚労省のHPに「子宮頸がんは早期に発見されれば比較的治療しやすいがん」であることが明記されています。このことからも定期的な検診により持続感染や前がん病変の初期段階である軽度異形成を発見することが重要です。本市において子宮頸がん検診の受診率の推移を過去5年間でお示しください

【保健福祉局】

 市の子宮頸がん検診の過去5年間の受診率は,平成27年度は現在集計中であるため,平成22年度からとなるが,平成22年度が33.5%,平成23年度が34.1%,平成24年度が33.5%,平成25年度が33.2%,平成26年度が34.3%となっている。

⑲接種勧奨を差し控えたH25年以降の受診率が伸びていません。積極的な検診の受診率推進こそが重要です。福岡市において、子宮頸がん予防策をどのように進めていかれるのか、お尋ねします。また、すべての被害者救済を今後どのように進めていかれるのか、予防接種による副反応の再発防止のためには、子宮頸がん予防ワクチンの接種勧奨は行うべきではないと考えますが、ご所見をお伺いして、私の質問を終わります

【保健福祉局】

 子宮頸がんの予防策については,子宮頸がん予防ワクチンの接種のほか,検診による早期発見・早期治療が大変重要と考えており,今後とも受診率向上に向けた取り組みを推進していく。

 子宮頸がん予防ワクチンを含めた予防接種後の副反応への救済については,予防接種制度全  体の中で対応していくことが基本と考えており,国において,4月に新たに「HPVワクチン副反応被害判定調査会」が設置されるなど審査の更なる迅速化が図られており,市としては,この状況を注視していく。

 子宮頸がん予防ワクチンの接種に関しては,国において接種勧奨再開の是非について結論がでるまでは,「積極的な勧奨は控える」という現行の対応を継続してまいります。