2015年度決算に対する討論 (2016年12月14日)

 私は、福岡市民クラブを代表し、平成27年度一般会計及び特別会計、並びに企業会計の歳入歳出決算について、これを認定することに賛成の意を表し、討論を行います。
 詳細につきましては、先の決算特別委員会総会及び各分科会において、我が会派議員が意見、要望を述べておりますので、ここでは要点を絞って述べることにいたします。
 まず、歳入決算について申し述べます。
 市税収入は、前年度比20億円余の増で、2841億円余となっています。法人市民税は税制改正の影響により22億円の減収となっていますが、納税義務者の増加による個人市民税29億円の増と土地評価額の上昇等に伴う固定資産税11億円、都市計画税2億円の増によって、減収分が補われた結果となっています。納税義務者の増加による個人市民税の増収についてですが、直近である平成24年就業構造基本調査では、福岡市の雇用者数を見ると正規雇用者は58.0%、非正規の雇用者は42.0%となっており、非正規率は年々上昇しています。また、平成27年度の給与所得者数は57万3,220人で、前年度比1万3,300人余りの増となりましたが、多くは非正規で働く人です。市民生活の向上のためには個人一人ひとりの収入の増加や雇用の安定施策を図ることが重要であると考えます。
 一方、不能決算処理と収入未済額は、行政当局のご努力もあり、それぞれ前年度比17.8%減、5.9%減となりその成果は見られるものの、収入未済額については91億円弱です。納税しやすい仕組みの導入などと合わせ、収納対策については引き続きの努力を求めておきます。
 一方、市債残高を見ると、減少傾向にはありますが、未だ2兆2000億円余という多額の市債残高となっています。高齢社会や経済格差による保健福祉費、社会保障費などの増加もすすみ、本市の財政状況は依然として深刻です。公債費の割合が高いと財政硬直化を招き、他の行政サービスへ振り向ける財源が乏しくなることから、真に市民生活の向上につながる事業を厳選して、市債の発行を行う必要があると考えます。
 また、債務負担行為については市債と同じく将来にわたり負担を確約することになるため、市民へのわかりやすい情報提供について検討するよう求めます。
 「ふるさと納税」については、地元産品を全国にPRする好機であると同時に、福岡市への来訪を喚起する着地型の返礼品を開発することで、福岡市をもっと知ってもらう機会の拡大のため、その手法を活用して福岡市のシティセールスにつながるよう要望します。

 続いて、歳出について意見を述べます。
 始めに、指定管理者制度の導入についてです。この間、本市で進められてきた公共サービス部門の指定管理者制度導入は、財政健全化を理由に、公共施設の管理運営等の事業を採算性という尺度で測るという、コストカットのツールとして使ってきたことは否めません。これまでの民間活用に関する全体的な評価をまとめ、今後の導入にあたっては、その事業が指定管理者制度になじむのかどうか、公共サービスを行うにふさわしい企業なのか、職場環境が守られているのかなどの視点を踏まえて熟慮されるよう要望しておきます。
 次に、防災対策についてですが、現在想定している警固断層南東部地震の震度予測を踏まえ、今後の耐震化の実施個所の優先順位の見直しや、来街者・居住者ともに増加している外国人への対策である避難場所標識の4か国語化など、必要なエリアを優先して事業を進められることを要望しておきます。
 また、都市再生安全確保計画における避難支援対策の充実強化については、退避施設拡大のために、鉄道事業者のみならず商業施設や貸しビルなどの民間事業者との連携を深めるため本市がリーダーシップを発揮するとともに、徒歩帰宅者・帰宅困難者への対応も考慮した市役所・区役所体制の在り方について、点検・見直しをしていただくよう要望しておきます。

 次に、住民主体のコミュニティづくりについてです。我が会派が求めていた校区カルテが全区に拡大されその活用も広がっています。今後も住民自治への支援及び諸団体の位置づけの明確化を中心に据えた基本条例の制定に向け、議論の継続を求めておきます。

 総会質疑にて取り上げました、消費生活相談事業については、民間企業に業務委託をしていることから、相談業務サービスの後退を招いています。相談に訪れた市民が以前と変わらぬサービスを享受することができるよう早急な改善を要望しておきます。

 次に、保健福祉費についてです。
 市民の「健康寿命」を延ばすために、定期的に健康診断等を受診し、日頃から健康増進に積極的に取り組む高齢者に対する様々な支援策の検討を要望します。加えて、増高する医療費を抑制できるような仕組みや、健康増進に取り組むインセンティブ付与の在り方として、国の動きに先行して、「健康保険料や介護保険料の一部に相当する金額を還付する」といった財政的手法について、幅広く研究・検討することも合わせて、要望します。
 がん対策における子宮頸がん検診と乳がん検診の昨年度のクーポン券使用率はそれぞれ10.2%、13.4%と未だ低い状況にあります。早期発見・治療につながるよう更なる認知の拡大と受診率の向上に努められるよう要望します。
 障がい者差別禁止条例の制定に向けた検討会議が始まりました。聴覚障がいや発達障がいなど様々な障がい種を対象とした障がい者差別禁止条例となるよう要望しておきます。

 次に、こども医療費助成制度についてです。
 子育て世帯の負担軽減策として、本年1月から中学3年生までの入院医療費については全額助成となり大いに歓迎すべきものです。10月から導入された通院費助成制度についても、小学校6年生まで助成対象が拡大されたことは子育て世代への大きな支援となりなりました。ただ、これまで無料であった3歳〜6歳未満の幼児については負担を強いるものとなっています。医療費が掛かる年齢層でもあり、導入後の経緯を慎重に調査し、保護者負担の見直しを図るとともに、助成制度対象年齢の拡大を求めておきます。

 また、里親やファミリーホームへの支援策として、フォスタリングチェンジ・プログラムのさらなる展開と、里親会の活動支援を求めておきます。
 さらに、児童養護施設や里親のもとを巣立つ若者が、社会的自立に向けて、安定した生活が継続できるよう、福岡市独自に住宅支援などの支援策を要望します。

 留守家庭子ども会事業については、支援員が指導の対応に困らないよう福岡市の保育指針を定めるべきであること。加えて、小学校6年生までの受け入れや利用者の増加等により、順次増改築が行われている施設に関しては、独立した静養室なども含め、現場の声を聞きながら環境整備を進められるよう要望します。

 児童虐待防止医療ネットワーク事業については、現在、拠点病院として福岡大学病院を指定して、医療機関の相互のネットワークを構築していますが、歯科医師会との連携も強化し、児童虐待の早期発見・支援に努められるよう要望します。

 次に、保育事業についてです。待機児童や未入所児童の解消は急務です。引き続き、スピード感を持った改善を要望致します。中でも、年度途中での職場復帰時に抱える0歳〜1歳児の認可保育園での受け入れゼロ問題や、障がい児の受け入れ困難など多くの課題を抱えています。保育士不足が一番の要因であり、保育士確保の支援事業に努めてこられましたが、十分な成果が得られていない実情があります。抜本的解決のためには、保育士の処遇や働き方改善策が必要です。本市独自の処遇改善策と療育センターとの並行通園の更なる拡充などを求めておきます。

 教育関連についてです。中1ギャップの解消は未だ図られていませんが、中学1年生で少人数学級を選択した学校では、未実施校に比べ不登校人数が少なく、少人数学級の効果が表れています。一方、中学校に配置している不登校対応教員は、6年間拡充がなく、その配置要望は小学校からも上がっています。少人数学級の学年拡大と不登校対応教員の拡充を要望します。
 主体的な学びアクティブ・ラーニングが注目を浴びています。学校図書館は大きな役目を担い、学校司書の役割も非常に重要であることから、学校司書の増員を要望します。
 特別支援教育支援員の配置については、2か月交代の任用期間が課題となっています。継続的支援が必要な学校行事などの際に、支障をきたしていることから、せめて学期ごとの任用などその任用期間について改善を求めておきます。
 産休や病休等の代替教員の配置については、講師不足が続き、教育現場に混乱をもたらしています。講師の確保や正規率の向上に向けて改善を図られるよう要望します。

 施設面については、小・中学校普通教室への空調整備は今年の夏に整いましたが、特別教室については未設置です。早急な整備を求めます。また、学校給食衛生管理基準に示されている望ましい給食室の温度25度以下、湿度80%以下が保てるように、食の安全や職員の健康管理の面からも、小学校給食室のエアコン整備を求めておきます。
 「グローバルチャレンジ推進」事業については、全ての子どもが体験できるよう、その在り方の検討を求めておきます。

 次に商店街の振興策についてです。商店街だけでなく商店街を取り巻く地域との連携を組み、商店街周辺の自治協議会や町内会なども含めた地域ぐるみでの振興策の実施を要望いたします。また、商店街の店揃えについて、近隣の地域や高齢者のニーズも含め、不足業種である鮮魚店等を呼び込むなど、地域産品が身近な商店街で入手できるような対策を講じるよう要望しておきます。

 続いて、農林水産業事業についてです。
 この20年間でみると、農林水産事業費だけが最も低い位置で一貫して減額されてきています。福岡市は、豊かな海と山の自然環境に恵まれ、適度に集中した「コンパクトシティ」が世界的なブランドであり、95%の市民が住み続けたいと評価している都市です。この固有の都市機能をさらに活かすため、農林水産業の再生・復活をめざす根本的対策にいち早く取り組むべきであり、「地域資源を活用して“第1次産業を成長産業”へ押し上げる予算配分の選択と集中」を強く要望します。

 本市が昨年初めて行った農業、漁業についての調査は、サンプル数としては不十分でありますが、年代別高所得農家の事例については、就農への強力なインセンティブになると考えます。この調査を継続し、個別所得を正確に把握するよう要望しておきます。
 アサリの採捕については、室見川河口など漁業権のない区域でのルール、マナーが守られていません。また、税金で放流したアサリを業者が採捕し、出荷することはおかしいと考えます。市民へのルールの徹底やマナーの啓発を行うことが、業者への違反行為の抑止力となると考えることから、県とも協議し、じょれん禁止区域を広げ、それを示す看板の設置など、規制やルールを設定されることを要望します。

 次に、セントラルパーク構想についてです。福岡市の大きな観光資源となる期待感もありますが、基本計画の策定に当たっては、有識者だけでなく周辺住民も含めた市民の意見を聞きながら、丁寧に進められるよう要望しておきます。

 続いて、温暖化対策についてです。国の温室効果ガス排出削減目標26%に対し、本市がそれを上回る28%に設定したことは大きく評価するものです。家庭部門においては、「省エネ住宅改修補助制度」の来年度実施を着実に進めるとともに、業務部門における一定規模以上の既存建築物の省エネに向けた本市独自制度の導入に向けて、しっかりとした制度設計をされるよう、要望しておきます。
 天神ビッグバンも含め、ユニバーサル都市・福岡を推進する観点から、誰もが気軽に安心して外出できる環境づくりを進めるため、ベンチなどの休憩施設の設置を都心部も含めて進めていくことにより、憩いとのある都心づくりを進めるよう要望します。加えて、全国5位の大都市にふさわしい風格のある街並み形成のため、市民や企業等と連携し、並木を守り育て、愛される並木道を後世に引き継ぐよう要望します。

 以上、歳出・歳入についてそれぞれ意見を述べてまいりましたが、市長をはじめ当局におかれましては、我が会派議員が総会や各分科会で申し述べてきた要望や意見に対し、真摯にご検討いただき、今後の市政運営に当たられるよう強く要望して討論を終わります。