2017年6月議会 一般質問 (2017年6月15日)

1. 障がい者グループホーム事業の推進について

 質問に先立ち、本日7時46分、「テロ等準備罪」いわゆる「共謀罪」が法務委員会での審議を省略して、参議院本会議において、強行採決されたことに、強く抗議の意を表し、質問に入ります。

 私は、福岡市民クラブを代表いたしまして、「障がい者グループホーム事業の推進」、「重度障がい者のグループホーム入居の促進」、「医療的ケアを必要とする子どもの保育の充実」以上3点について質問いたします。
 昨年(2016年)4月1日より、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」いわゆる障害者差別解消法が施行されました。この法律は、障がいによる差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現することを目的として制定されました。障がいがある人が地域で普通に育ち、暮らすことができる、その当たり前の事が早く日常的になることを願い、質問してまいります。
まず初めに、「障がい者グループホーム事業の推進」についてです。
障がい者差別解消法の付帯決議においては、「五 国及び地方公共団体において、グループホームやケアホーム等を含む、障害者関連施設の認可等に際して周辺住民の同意を求めないことを徹底するとともに、住民の理解を得るために積極的な啓発活動を行うこと」と明記されています。そこで、

①障がい者のグループホームの現状についてお尋ねします。
 まず、障がい者グループホームとはどういうものか、ご説明ください

【保健福祉局長】

  • 障がい者が世話人等の支援を受けながら,地域のアパート等で家庭的な雰囲気の中,共同生活を送る「居住」の場である。

②その設置個所数と定員を障がい種別ごとにお知らせください。併せて、事業者数についてもお知らせください

【保健福祉局長】

  • 平成29年4月1日現在の状況
    ・設置個所数 117か所(身体障がい2か所,知的障がい46か所,精神障がい23か所,身体・知的障
                がい1か所,知的・精神障がい41か所,身体・知的・精神障がい4か所)
    ・定員 681人(身体障がい20人,知的障がい226人,精神障がい167人,身体・知的障がい6人,
            知的・精神障がい232人,身体・知的・精神障がい30人)
    ・事業者数   50事業者

2017年度の障がい者グループホーム予算について、設置費補助金、整備費補助金がそれぞれ昨年度に比べて減額となっています。その理由についてお尋ねします

【保健福祉局長】

  • これまでの補助実績や各事業所からの申請及び国からの補助の内示状況を踏まえ,必要額を計上した結果,昨年度より予算額が減額となっているもの。

④第4期福岡市障がい福祉計画における、グループホームの利用見込量と、実際の利用者数はどうなっていますか

【保健福祉局長】

  • 第4期福岡市障がい福祉計画における平成28年度末時点でのグループホーム利用見込量940人/月
  • 平成29年2月の利用実績 800 人

⑤見込量に対して利用者が少ないということは,グループホームの数が少なく,利用したくても利用できない現状があるからと考えます。設置は進めているが、手を挙げる事業者が少ないということが、設置・整備費予算額の減額に表れているのではないですか。グループホームの設置が進まない理由をどうとらえているのか、ご所見をお伺いします。

【保健福祉局長】

  • 現行報酬体系では適切な人員配置が困難
  • 消防用設備の改修費用など事業者負担の増
  • グループホームに適した物件が見つからない(賃貸料,間取り等)

グループホームの整備にあたって、国、市の補助額は1件当たりいくらですか。

【保健福祉局長】

  • 国補助額 1件あたり上限額   23,100千円
  • 市単独補助額 1件あたり上限額   1,500千円

 グループホームの設置が進まない理由の一つに、事業者負担の増があげられましたが、市単独補助1件当たり上限額150万円の多くは、改修費・消防用設備や備品購入に充てられています。事業者の負担を軽くするためにも市単独補助の増額を求めておきます。

⑦H8年に公営住宅法が改正され、社会福祉法人等がグループホーム事業を実施する場合に公営住宅を活用できるようになりましたが、福岡市では、現在、市営住宅を活用した障がい者グループホームは、市内に何室ありますか。これも、事業者数と障がい種別ごとにお知らせください。併せて、定員と現在の入居者の人数もお知らせください

【保健福祉局長】

  • 平成29年4月1日現在の市営住宅活用によるグループホームの状況

  ・15室 5事業者
    知的障がい対応     6室 2事業者
    知的・精神障がい対応  7室 2事業者
    精神障がい対応     2室 1事業者
  ・ 定員36人,入居者数31人

⑧現在、市営住宅の建て替えが順次進んでいますが、既存住戸の利用ではなく、市営住宅とグループホームを複合的に整備することはできないのか。保健福祉局長と住宅都市局長にお尋ねします

【保健福祉局長】

  • 市営住宅のグループホームとしての活用については,民間事業者が住戸を利用することを前提に推進。
  • 今後の市営住宅のグループホームとしての活用については,住宅都市局とも連携を図りながら検討する。

【住宅都市局長】

  • 市営住宅における障がいグループホームの活用については,これまで既存住戸15室を提供。
  • 大規模な市営住宅建て替えの際は,福祉的機能の誘導を図るなど,地域課題を踏まえたまちづくりに取り組んでいる。
  • 市営住宅の建て替え時における障がい者グループホームの設置については,今後,保健福祉局と連携して検討する。

 住宅都市局長より、「福祉的機能の誘導を図る」と心強いご答弁をいただきました。保健福祉局の積極的な働きかけを強く要望しておきます。

⑨大規模な市営住宅の建て替えでは,高層集約化により余剰地が生まれますが、市営住宅敷地内に余剰地を活用してグループホーム等の福祉施設を整備できるよう、土地の貸与等支援策が必要と考えます。
今後の市営住宅等を活用した障がい者グループホームの整備について、どのように考えておられるのか保健福祉局長のご所見を伺います

【保健福祉局長】

  • 障がい者が地域で安心して生活を続けるためにグループホームの設置促進が必要と認識している。
  • これまでグループホームについては,民間による整備を基本とし,国の補助制度の活用や市独自の補助制度の創設などの取り組みを進めてきた。
  • 今後とも,さまざまな手法により,グループホームの設置促進に努めるとともに,市営住宅の利用をはじめ,情報提供の仕組みづくりなど,関係局と連携しながら取り組む。

2. 重度障がい者のグループホーム入居の促進について

 障がい者のグループホームの設置が進んでいない上に、特に深刻な状況にあるのが重度障がい
者の方々の「親なき後」の問題です。この現状を踏まえて、重度障がい者のグループホーム入居の促進について質問します。

⑩津久井やまゆり園事件から1年が経過しました。この事件を受けて厚労省からはどんな通知が出されたのかお尋ねします

【保健福祉局長】

  • 厚生労働省からは,事件当日を含め3回の通知が発出。
  • 各施設での防犯対策の徹底,地域・関係機関との連携強化,緊急時の通報・協力体制の整備に加え,障がい者の心のケアにも取り組むよう通知が出されている。

 津久井やまゆり園で起きた事件が衝撃的だったのは、19人という犠牲者の多さに加え、重複障がい者が一方的に標的にされ、それは障がい者の存在を否定する優生思想に基づく誤った確信が動機であったということです。個人よりも社会全体の便益を優先する優生思想を生み出した社会的背景をこそ検証し、高齢者や障がい者を施設に隔離せず、ともに助け合いながら暮らしていくノーマライゼーションの理念に沿った社会づくりを推進すべきであるのに、政府は、加害者が措置入院経験者だったことから、「再発防止策」として措置入院者に対する退院後の支援という名のもとに、監視を強化し差別を助長する精神保健法を今国会で改悪しようとしています。そして、自治体に求めたのは、日常の防犯対策と不審者への対応を記した「防犯に係る安全の確保」です。

⑪やまゆり園は入所施設のため,グループホームとはサービス内容や人員配置等の基準が異なりますので,同列で論じることは困難とは思いますが、安全の確保としては、入居者に対する職員体制が大変重要と考えます。障がい者グループホームの昼間、夜間の職員の配置基準についてお知らせください

【保健福祉局長】

  • 常勤の管理者のほか,利用人数や障がい支援区分に応じてサービス管理責任者・世話人・生活支援員の配置が必要
  • 夜間の人員配置基準はない。

⑫障がい支援区分が高い重度障がい者がグループホームに入居できないという、当事者・その家族からの声を聞きますが、グループホームを運営する事業者からは、どのような声を聞いているのかお尋ねします

【保健福祉局長】

  • これまでも,当事者等の団体から意見を聴取している。
  • 重度障がい者の受け入れに必要と考えられることとして,以下のような意見あり。
    ・業務内容に見合った報酬
    ・専門性のある人財の確保と継続雇用できる報酬体系

 軽度者のみが入居するグループホームは必ずしも夜勤配置の必要のない事業所もあることから、夜間の人員配置基準がないということでしょうか。しかし、夜間の介護等が必要な利用者に対しては、夜間支援従事者を配置し、報酬の上乗せ加算が可能と聞き及んでいます、業務内容に見合った報酬となっていないことが問題だと思われます。

人員配置の基準がない夜間体制については、早急に国に改善を求めるべきだと考えます。しかし、国の対応を待つ余裕すらない実態もあります。福岡市単独で夜勤の加算措置を講じる等、支援体制の強化は喫緊の課題だと考えますが、ご所見を伺います。

【保健福祉局長】

  • 現行制度上,介護等が必要な利用者に対して夜間支援従事者を配置し,必要なサービスを提供した場合,報酬の上乗せ加算が可能
  • 利用者に対し必要かつ十分な支援を行うことができる人員配置とそれに見合った報酬体系の整備は重要
  • グループホームにおける報酬体系の見直しについては,引き続き,機会をとらえて国に要望していく

障がい者の高齢化が進む中、市長は、障がい者の地域生活支援機能の強化等として、2017年度初めて障がい者の「親なきあと」も見据えた生活の安心策を掲げました。当事者、その家族の方々にとって大変心強い施策だと推察するところです。24時間対応の地域生活支援体制の整備や、緊急時の受け入れ拠点整備、社会的孤立防止支援、医療的ケアが必要な重度障がい者への支援など、どれも地域生活支援体制の整備として重要な支援策です。しかし、「親なき後の生活の安心」は、地域生活の拠点である居住の問題抜きではこれらの支援策は機能しません。
 今回、この質問をするにあたり数か所の事業所にグループホームの現状をお聞きしてまいりました。「なぜ重度の方の入居が進まないのか」ということに対しては、「業務内容に見合った報酬となる人件費の補助」や「適した物件が見つからない」ことがあげられました。特に行動障害や重度の場合は、賃貸物件ではさらに適した物件がなく、かといって新築となると資金づくりが困難ということでした。横浜市や大阪市、堺市では、土地の有効活用を考えているオーナーにオーダーメイドで使い勝手の良いグループホームを建てていただき、運営主体の福祉法人が土地と建物を一括して借り上げる「建て貸し方式」でグループホームの整備を進めています。福岡市においても市営住宅の活用とともに、この「立て貸し方式」もグループホームの整備手法として、一考されることを要望しておきます。しかし、この手法によると、利用者が負担する家賃の増額が否めないということです。現在でも。家賃は限られた障がい者年金を圧迫しています。グループホーム利用者が負担する家賃については、国制度による1万円の助成がありますが、神戸市は、それに加えて月額家賃から国助成の1万円を控除した額の2分の1上限15,000円までを助成、千葉市は月額家賃の2分の1上限15,000円までを助成するなど、グループホーム利用者の家賃負担軽減事業に取り組んでいます。福岡市においても、家賃負担軽減策の検討をされるよう要望しておきます。
 この質問の最後に、グループホーム事業も含めた障がい者の「親なきあと」を見据えた施策の充実に向けた市長の決意をお伺いします

【保健福祉局長】

  • 障がいのある方が地域で安心して生活を続けることができるまちづくりは,重要であると認識しており,障害のある方やそのご家族の切実な願いである「親なき後」の支援を一層進めることが必要。
  • 今後とも,ユニバーサル都市・福岡の精神が市全体で共有されるよう,グループホームの設置促進を始めとする施策の充実に取り組んでいく。

3.医療的ケアを必要とする子どもの保育の充実について

 最後に、「医療的ケアを必要とする子どもの保育の充実」について質問致します。
 福岡市の認可保育所では、ほぼ100%近くが障がい児保育の実施を掲げていますが、現実はそうなっておらず、未だ入所がスムーズに行っているとは言い難い現状です。入所できても進級段階で「集団保育が困難」とされた子どもは保育所をやめざるを得ず、保護者が就労を絶たれるという事例も近年起きています。そのような中、昨年度より療育を必要とする子どもが保育所などに通いながら、障がい児通園施設で養育を受ける並行通園が開始されました。しかし、痰の吸引や経管栄養など医療的ケアを必要とする子どもについては、看護師の配置が必要なため、保育所での受け入れは困難な状況です。
 そこでお尋ねします。

医療的ケアを必要とする未就学児の人数は何人ですか

【こども未来局長】

  • 行政に届け出るような制度はないことから,全体の数は把握していないが,療育センター等への通園や外来療育を受けている児童の数は現行106人」

②では、児童発達支援センター及び事業所は何か所ですか。そのうち、医療的ケア児も対象にしている施設は何か所ですか。

【こども未来局長】

  • 平成29年4月1日現在,福岡市内に,児童発達支援センターが9か所,
       医療型児童発達支援センターが2か所,児童発達支援事業所が6か所,
       合計で17か所
  • 医療的ケア児対象施設は,9か所

③現在、保育園、児童発達支援センター及び事業所に通園している医療的ケア児は何人ですか、併せて、通園していない子どもの保育・療育の状況についてお知らせください。

【こども未来局長】

  • 平成29年4月1日現在
    ・児童発達支援センター等の通園児が59人
    ・保育所の通園児が 1人
    ・通園していないこどもは,入院や自宅で療養している場合などがあると考えている。

 厚労省の2015年度の試算では、0歳〜4歳児の医療的ケア児は全国に6,100人いるとしています。しかし、福岡市では、療育センター等とつながっている子ども以外については、医療的ケアを必要とする未就学児の人数や保育・療育の状況を把握していないということです。その方々の中には、自力で「障がい児」や「医療的ケア」などの用語を検索してホームページを開き、藁にもすがる気持ちで相談・支援の電話をする。担当者にうちではないと言われまた次の窓口を探して電話をする。この繰り返しでやっとたどり着いた担当者からは、「サービスの対象外です」という冷たい対応を受ける。そういう相談が後を絶たない状況です。乳幼児健診で発達支援が必要と判断された子どもには担当の保健師もしくは支援員が付き、関連機関とつないで継続した支援、相談が可能となる、そんな仕組みをつくるためにも医療的ケア児の実態調査を強く求めておきます。

④障がい児保育において、早期療育を掲げていますが、福岡市では0歳児が原則として療育センター等に通園することができません。その理由について伺います

【子ども未来局長】

  • 一般的に発達の遅れが顕著になるのが1歳以降であること,療育を通じて発達を促進させるためにはある程度こどもの体力と知的発達が必要なこと等から市立施設では基本的に1歳児から通園療育を開始
  • 早期に障がいと診断された場合は,療育センター等で0歳から月に2回,外来による療育を実施

 それは早期に障がい児と診断された場合のみです。声門下狭さくや気管狭さく等で気管切開をし気管カニューレを挿入して痰の吸引が必要であるだけで、他疾患がない子どもは、障がい児と診断されず療育センターで外来による療育すら受けられず、医療的ケアが必要なため保育所にも受け入れられず、どこにも行き場のないまさに、グレーゾーンにいます。しかし、

⑤県内の他の自治体では全く同じ疾患の0歳児に受給者証を発行し、療育センター等で支援を受ける事が出来ています。福岡市でも受給者証の発行を認めるべきと考えますが、ご所見を伺います

【こども未来局長】

  • 受給者証の発行について福岡市では1歳児からという年齢制限は設けていない。サービスを提供する事業所があれば0歳児にも受給者証を発行している。

 今回、ご相談があった方は、当初区の窓口で0歳児には受給者証は発行できないと言われています。担当者の共通認識による対応を強く求めておきます。

第4期福岡市障がい福祉計画において、障がい児の療育・保育の充実についてどう記載していますか

【こども未来局長】

  • 「児童発達支援」,「医療型児童発達支援」,「放課後等デイサービス」,「保育所等訪問支援」の各サービスの種類ごとに,それぞれ第4期各年度(平成27〜29)の必要な見込み量を定量化するとともに,見込み量確保のための方策として,障がい児が必要な支援を受けることができるよう療育の場の充実に努める。

その他、保育所や幼稚園に通う障がい児への支援で行っていることがあると思いますが、具体的にお示しください

【こども未来局長】

  • 職員の研修の充実(療育センターへの体験研修含む各研修)
  • 「運営支援課巡回訪問等」運営支援課障がい児保育係が,相談業務,巡回訪問などを行い,障がい児保育の対象児の状況を把握するとともに,各専門機関と連携を図りながら支援を行う。
  • 社会福祉事業団への委託により
    ①「障がい児保育訪問支援事業」療育センター等の保育士が保育所等や保護者の要請で訪問し,障がいについて専門性が必要なケースなどについて指導や助言などを行う
    ②「私立幼稚園障がい児支援事業」療育センター等の保育士が障がい児が通う私立幼稚園からの電話相談を受け,必要に応じて園を訪問し,職員に専門的な見地から指導や助言などを行う
    ③「障がい児等療育支援事業」保育所や幼稚園に通う障がい児に療育センター等で外来による療育を行うとともに,理学療法士等が園を訪問し,職員に身体障がい児等への衣服の着脱のさせ方や座位のとらせ方などの指導を行う
    ④ 平成28年度から保育所・幼稚園に通う障がい児に通園による療育を開始
  • 助成
    ① 障がい児受入保育園に対しては,対象児のための保育士の雇用費を助成
    ② 障がい児受入幼稚園に対しては,所管である福岡県からの助成金と福岡市から「私立幼稚園運営費補助金」

⑧子ども子育て支援新制度において,集団保育が困難な障がい児などを対象に「居宅訪問型保育事業」がありますが,この事業はどのような事業ですか。また,福岡市で利用している児童はいますか

【こども未来局長】

  • 本事業は保育士または保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村が認めたもの(家庭的保育
    者)が利用者の自宅にて保育を行う事業であり,障がい児を保育する場合は専門的な支援を受けられる連携施設の確保が必要とされている。福岡市においては,「居宅訪問型事業」を実施する事業者は1社ありますが,看護師等の職員配置や専門的知識を有する連携施設が確保できていないことから障がい児の対応はできていない。

⑨重症心身障がいは、1968年発表の大島分類により定義されていますが、大島分類は、知能指数と運動機能から心身障がいの程度を25群に分類するもので、重症心身障がい児・者の医療福祉の現場で広く使用されています。しかし、そこから弾かれた痰の吸引、経管栄養など、医療的ケアは必要だが、障がい児認定のない子どもたちは、保育園・幼稚園にも単独入園できず、療育センター等にも受け入れられない、いわゆる受け皿のないグレーゾーンにいます。医療的ケア児が何らの支援も受けられずに制度のはざまにいるのです。
 日中一時支援や緊急時の預かり、在宅ヘルパーなどを利用できる受給者証が必要と考えますが、ご所見を伺います

【保健福祉局長】

  • 障がい福祉サービスは障がい者手帳の保有にかかわらず,児童相談所や更生相談所の判定により,支援の必要性が認められれば受給者証が交付され,サービスを利用できる。

 今回ご相談いただいた方は、この支援にたどり着くまでに、再三、区役所や介護保険課に相談をしています。昨年7月に気管切開してカニューレ装着後に退院。お母さんや家族に何かあったらどうするのかという不安から、どこに支援を求めるか、制度を聞く先もわからぬまま区役所に電話するが、保健師、子育て支援課、障がい福祉課から「無理」と断わられ、助けてくれる人はいないのだと悲しくなったといいます。ここで問題となるのは、退院するときに病院から療育センターや基幹相談支援センターなどに支援がつながっていないということです。このシステムは早急に作るべきだと指摘しておきます。
 通所、レスパイト、居宅介護サービスこの3つの受給者証の発行に至るまでの苦労は並大抵ではありませんでした。「そんな制度はない」「制度を変えることの手助けをしてくれないか」と懇願しても「法を犯してまでお母さんの要望を受ける職員がいるかはわかりません」「第4条に障がい者とは身体手帳の交付を受けている者、と明確な基準がある。だから無理」「制度的に助けられない。何かあったら病院に入院させるか、病児保育とかはダメなんですか」などという対応だったという報告を受けました。お母さんは、児童福祉法、障害者総合支援法をくまなく読み、障害者総合支援法の中での障がい児の定義は、児童福祉法と同じで、手帳の有無は関係ないことが分かり、厚労省にも確認。厚労省からは、「子どもの場合は手帳の有無は定かにしていないと通達し、パンフレットも注意喚起で送っている」と言われたそうです。制度に則り動いていると言い切った役所は制度を熟知していなかったということです。後日謝罪はあったということですが、たくさんの職員の言葉に傷つき、泣いたことは何度もあります。無理だ無理だと否定される中で頑張るのは心が何度も折れました。それだけは伝えてほしいと語られました。
 2016年5月に障害者総合支援法と児童福祉法が改正され、初めて「医療的ケア児」という言葉が記載されました。第56条の6第2項に「医療的ケアを要する障がい児が適切な支援を受けられるよう、自治体において保健・医療・福祉等の連携促進に努めなければならない」と明記されました。

⑩厚労省は、医療的ケアが必要な子どもが児童発達支援センターや保育所などに通えるように、看護師の派遣等を支援する「医療的ケア児保育モデル事業」を2017年度から始めます。すでに、世田谷区・杉並区などでは、児童福祉法の「児童発達支援事業の通所施設」と「居宅訪問型保育事業」、療育と保育との連携により、保護者の就労を支えることを目的とした障がいのある子の長時間保育を実現しました。目黒区は、看護師と非常勤保育士の加配で医療的ケア児を区立保育所で受け入れています。川崎市、堺市なども看護師を配置しています。福岡市の児童発達支援事業所「ひだまりのおうち」では、基本理念に「障がいの程度や医療依存度に関わらず、全ての子どもが身近な場所で療育を受け、子どもに障がいがあっても、その保護者が休息を取り、精神的サポートを受け、更には、働くことを選択できる社会づくりを目指します」と謳っています。重症心身障がい児と難病等の超重症児・準重症児対象に療育、保護者のレスパイト事業を行っていますが、これに日中一時支援をつなげると就労支援も可能となるのではないか、と管理者と語ってきました。保護者の就労を支えることを目的とした医療的ケアが必要な子の長時間保育の実現に向けて、福岡市も様々な手法を検討すべきだと考えますが、ご所見を伺います

【こども未来局長】

  • 国が行うモデル事業の成果や他都市の取り組みの手法や状況などを今後の参考にしたいと考えている。

 何とも消極的なご答弁にがっかりします。制度としてないものを市民の思いに心を寄せて切り開いていくのが行政の役目です。市長はよく全国初とか政令市初の取り組みと言われます。

 他都市の取り組みを待つのではなく、積極的な取り組みを期待します。

 2017年度末の市立姪浜幼稚園の閉園に伴い、その跡地へ姪浜保育所が移転することが明らかとなりました。現姪浜幼稚園は西部療育センターと隣接しています。療育センターとの連携で集団保育になじまないとされた子どもや医療的ケア児の保育を早急に検討すること、これこそが福岡市でできることです。強く強く要望しておきます。

⑪障がいのある子どもや手帳のない医療的ケア児などの保護者から、相談や支援を求める際に、どこの誰に聞けばいいのか、わかりやすくしてほしいという声が多く寄せられています。あっちに聞いてこっちに聞いてではどこに何を話せばいいのか不明瞭だということです。何よりも相談窓口をたらいまわしされることほどつらいことはありません。相談窓口のワンストップ化も目指していただきたいと思います。特別児童手当の申請先、日中一時支援などの支援を受けるための受給者証申請窓口、レスパイトの受け入れ先、障がい児保育実施園、医療的ケア児を持つママの会の案内など、障がい児の家族の不安感や困り感に寄り添い、関連する項目を集約した冊子が必要です。また、様々なサービスについても周知ができていません。例えば、保育所や幼稚園に通う障がい児への支援の一つに保護者の要請による「保育所等訪問支援」制度がありますが、運営支援課の「巡回訪問」と混同され、ほとんど利用されていません。保育所や保護者への周知のためにも、障がい児の親のためのハンドブックが必要です。早急に作成すべきと考えますがご所見を伺います

【こども未来局長】

  • 2017年度版「福岡市の障がい福祉ガイド」から障がい児が関係する項目を再掲するなどの見直し。今後とも,より活用しやすいものとなるよう改善に取り組む。

⑫障がいのある子どもが生まれると、仕事を諦める「母親」が多い現状は中々打開されていません。たんの吸引など医療的ケアが必要な子どもが増えていますが、パートナーなど家族の協力なしでは難しい状況の家庭もあり、夫の転職、残業を断ったための降格、非正規化など、家庭の経済状況をも揺るがしかねない事態も発生しています。障がいがあるから保育園に預けられないような状況は解消しなければなりません。
 医療的ケアが必要な子どもの保護者の就労を支えるための体制の整備が必要と考えますが、ご所見をお伺いして、私の質問を終わります

【こども未来局長】

  • 平成29年度から国において医療的ケア児保育支援モデル事業が開始されており,その実施状況を踏まえ検討を進める。
  • 今後とも健全な成長発達や安全に留意し,子育てしながら働き続けることのできる環境づくりに努めていく。