2016年度 決算特別委員会 総会質疑 (2017年10月11日)

1. 飼い主のいない猫問題について

 私は、福岡市民クラブを代表して、「飼い主のいない猫問題」と「教職員の長時間労働の改善」について質問します。

 まず初めに、飼い主のいない猫問題についてです。

 2014(H26)年に保健福祉局が実施した「ペットに関する市民意識調査」によると、55.4%の市民が野良猫や近所の猫による被害の経験があると回答しています。その内容で最も多かったのが「糞・尿」で、やや減少傾向にあるものの「ゴミを荒らす」、「鳴き声」という項目の順になっており、依然として猫に関する苦情や相談が例年二百数十件にのぼっています。また、過剰に繁殖したペットによって生活が破たんする「多頭飼育崩壊」といった新たな問題も発生しています。

このような状況を踏まえ、猫に関する苦情やトラブルをなくしていくことを目的とした地域猫活動が、2009(H21)年度より開始しました。

①具体的には、周辺住民の理解を得たうえで,その地域のボランティアグループなどが屋外で生活する飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を実施し,トイレや餌やりの時間を決めて世話をするなど,一定のルールに従い,猫を適正に管理することで問題解決を図っていく活動ですが、それに係る「動物愛護・適性飼育啓発経費」事業費の過去3年間の決算額の推移をお示しください

(回答)

地域猫活動のみを対象とした事業はない。

  • 「動物愛護・適正飼育啓発経費」事業の1つとして地域猫活動の支援を実施している。
    (事業費の総額は以下の通り)
        平成26年度 平成27年度 平成28年度
    歳出 決算額 40,548,000円 39,239,000円 42,202,000円

 この間、動物愛護管理センターに収容された猫のうち、殺処分頭数は、収容中に死亡したものも含め7〜8割が離乳前の子猫であったことから、

②昨年10月、子猫の殺処分を減らすためにミルクボランティア事業を開始しました。1年を迎えましたが、市民ボランティアの登録者数と預けられた子猫、そのうち新たな飼い主に引き取られた子猫の頭数をそれぞれお知らせください。併せて、1年を経ての課題もお知らせください

(回答)

ボランティア組数25組(平成29年9月末現在)
平成28年度:哺育数8頭,譲渡数8頭
平成29年度(9月末現在):哺育数57頭,譲渡数39頭

  • 繁殖時期である春先や秋口に多数の子猫が収容されることを考慮すると,市民ボランティアの増員が必要である。

 先日の新聞報道によると、2016年度に殺処分された猫293匹のうち子猫は223匹とのことでした。子猫の収容数から見ても、ご答弁いただいたようにまだまだボランティアは足りていません。殺処分ゼロに向け、ぜひともこの事業の啓発・推進を図っていただくよう要望しておきます。

地域猫活動の新規指定地域数と、不妊去勢手術頭数の過去3年間の推移をそれぞれお示しください。

(回答)

  • 本市が指定する地域猫活動の地域数,不妊去勢手術頭数は以下のとおり。
  26年度 27年度 28年度
新規指定地域数 13 10 3
地域猫の不妊去勢手術頭数 436 388 128

④この事業は、2009年から開始しましたが、これまでの延べ指定地域数、不妊去勢手術頭数をお知らせください

(回答)

  • 平成21年度から平成28年度末までの延べ指定地域数は73地域で,不妊去勢手術については,延べ1,929頭に実施している。

⑤私は2014年10月総会質疑において、地域猫活動の推進について質問致しましたが、その際、新規指定地区数は23年度、24年度がそれぞれ9地域、25年度は10地域と少しずつ増加してきておりました。そして、ご答弁いただきましたように26年度13地域となっていますが、そこをピークにこの数年、地域猫活動を開始する新規指定地域が少なくなってきています。昨年度はわずか3地域と激減しています。その要因をどうとらえているのか、また、これまで地域猫活動の啓発をどのように図ってきたのか、また、地域住民の理解を促すために、活動中であることを示す看板の設置などの啓発は行って来たのかお尋ねします

(回答)

  • 地域猫活動は地域の猫問題を解決するための効果的な手法と考えているが,不適切な活動から,苦情に繋がっている地域もあった。
  • 平成28年度から,地域猫活動の地域指定にあたり,動物愛護管理センター職員による現地調査,住民からの意見収集などの対応を行った。その結果,地域の合意を得るために必要な時間が増えたことから指定地域数は減少したものの,平成28年度指定地域については苦情なし。
  • 啓発の手段:動物愛護管理センターHP「わんにゃんよかネット」・市政だより・情報誌への掲載,
          自治協議会へのチラシ配布による周知協力依頼,街頭でのチラシ配布,
          出前講座の実施,「犬猫よろず相談」等の啓発イベント,
    地域猫活動に関するシンポジウムの開催
  • 看板の設置:活動地域によっては自主的に看板を設置しているところもあるが,活動地域からの要望があれば,地域猫活動中であることを示すパネル等を作成して配布している。

⑥飼い主のいない猫を捕獲Trapして、不妊去勢手術Neuterを施して、元の場所にRetaurn戻す、いわゆるTNR活動後、ボランティアグループがトイレやエサやりなど適正な管理をしていることを地域住民に周知することが啓発の第一歩ではないでしょうか。地域猫活動の内容を示した「地域猫活動中」や「捨て猫禁止」などの告知看板設置を行うことで、活動の啓発や監視になると考えますが、ご所見をお伺いします

(回答)

  • 「地域猫活動中」,「捨て猫禁止」等の看板を設置することについては,一定の啓発及び監視効果はあると考えられるが,地域住民の理解や,看板の設置場所の管理上の問題もあり,地域内での十分な協議が必要になるのではないかと考えられる。

 新規指定地域がピークであった2014年5月に行った「ペットに関する市民意識調査」で、地域猫活動の認知状況をみると、「知っており、内容も理解していた」が9.4%で、「聞いたことはあったが、内容は知らなかった」を合わせても2割強にとどまり、「知らなかった」は74.8%と大多数を占めています。また、自分の住む地域において、野良猫問題が起こった時の対策として、地域猫活動を行うことに対して80.4%が賛成と答えている一方で、活動に「参加意向あり」はわずか2割強に止まり、「参加意向なし」は7割を占めています。地域猫活動のことはよく知らないから参加はしないが、野良猫問題は、お任せします、ということです。
 地域猫活動は、地域住民とボランティア、行政が、地域の問題を地域で解決するために三者協同して行う事業です。ともすれば、活動に誤解を受け、孤立しがちなボランティアと地域住民をつなぐ重要な役目を担っているのが行政ではないでしょうか。区役所名入りで活動内容を知らせる看板やポスターの設置、チラシ配布等は、活動の周知と共に啓発にもなり、無責任なエサやりへの理解にもつながると考えます。何よりも、ボランティアの大きな支えとなります。地域の実情を考慮する場合もあるでしょうが、行政が積極的に主導してやるべきと指摘しておきます。

⑦地域猫活動においても、手術は市が無料で行いますが、その後の管理はエサ代含めボランティア頼みになっています。ボランティアの負担軽減のためにも、猫に係るエサ代は予算として計上すべきと考えますが、ご所見をお伺いします

(回答)

  • 地域猫活動は,地域住民が主体となって地域の「飼い主のいない猫」問題を解決するための活動であることに鑑み,活動に際し必要な費用は,原則的には地域で賄うものと認識している。
  • 指定地域や活動を希望する地域の支援策として,活動開始前の調整や活動開始後のフォローなど,地域からの相談に対し,動物愛護管理センター職員がきめ細やかに対応している。

 6月に開催された「福岡市わんにゃんシンポジウム」に参加しました。講演者である練馬区の地域猫アドバイザー石森信雄さんは、「地域」猫の「地域」とは、「地域コミュニティ」の意味である。単なるエリアではない。地域猫活動の目指すところは、地域コミュニティの中で猫が適正管理され、その存在が受け入れられている状態である。猫が苦手な人も、猫が大好きな人も、特に関心のない人も、様々な価値観を持っている人が共に気持ちよく暮らせる地域づくり、これが地域猫活動の目的である。と言われています。地域猫活動は、「野良ネコ被害を減少させて、暮らしやすい街づくりをしましょうという誰もが納得できる基本コンセプトを武器に地域住民と積極的にコミュニケーションを取りながら対策を進めていくもので、ボランティアの個人的な活動ではありません。
 2015(H27)に行った、「地域猫活動地域のアンケート調査」によると、エサ代などの活動経費については、町内会費助成や募金、物資の寄付がそれぞれ2割弱で、半数余りの地域が「活動者の自費」となっています。費用を地域でまかなうものであるならガイドラインに明記し、他の部局とも連携して活動をする町内会を支援する施策を講じるべきです。

⑧次に、公共施設内での飼い主のいない猫問題です。これまでどのように対応されてきたのかお尋ねします

(回答)

  • 「飼い主のいない猫」問題については,通報を受けた場合には,施設の種別等を問わず,動物愛護管理センター職員が現地調査に行き,無責任なエサやり行為等に対し,個別に指導等を行ってきた。

エサやり行為者への個別指導のみでは、問題は解決しません。エサやり行為は禁止しても隠れて行われてきており、その結果、子猫が増えたというのが実情ではないでしょうか。公共施設内での飼い主のいない猫問題についても、施設関係局と連携を取りながらTNR活動や適正管理など、問題解決に向けた具体的な方策の検討を強く要望しておきます。

(要望)

現在、飼い主のいない猫の推定頭数はどのくらいですか。

(回答)

  • 本市内の「飼い主のいない猫」の正確な生息数は把握していない。
  • 他都市で過去に行われた調査の生息密度からの推計では,10万頭程度となる。

⑪では、動物病院での手術代金は平均いくらですか、メス、オスごとにお示しください

(回答)

  • メスは,25,000〜35,000円程度
  • オスは,20,000〜30,000円程度

⑫飼い主のいない猫の絶対数を減らすには、徹底したTNRが必要です。ボランティア団体の方は、年間1万頭くらいの不妊去勢手術を3年間くらい続ければ、絶対数が減るのではないかとの見解を示されています。現在の動物愛護管理センター1ヶ所だけではとても対応できません。期間限定で獣医師に不妊手術の低減化の協力を得て、ボランティアの方々が捕獲した猫の手術を近隣の指定動物病院でできるシステム作りなど、徹底したTNR活動をすべきと考えますが、ご所見を

(回答)

  • TNR活動の効果や手術を行う体制については,他都市の状況を,調査していく。

⑬神戸市は本年度、「神戸市人と猫との共生に関する条例」を施行し、前文に、「野良猫に起因する地域の生活環境の悪化を防ぎ、猫の殺処分をなくしていくため、市や飼い主の責務を定めるとともに、市、市民、獣医師が組織する団体、地域猫活動に取り組む団体等が一体となって取組を行うことにより、人と猫が共生する社会の実現を目指す」とあり、条文には財政上の措置も明記しています。しかし、福岡市では、「福岡市動物の愛護及び管理に関する条例」に地域猫活動の規定はなく、施行規則にもありません。福岡市の地域猫活動は、「福岡市飼い主のいない猫との共生支援事業実施要綱」と「福岡市猫との共生ガイドライン」に規定されているのみで、強制力のないものです。市や市民の責務、予算の裏付けが弱いものとなっています。条例の見直しをすべきだと考えますが、ご所見をお伺いします

(回答)

  • 「飼い主のいない猫」問題については,「福岡市猫との共生ガイドライン」を用いて,啓発指導に努めていく。
  • 平成30年度に予定されている動愛法改正の内容や,他都市の動向を注視しながら,規制のあり方も含め,猫問題を解決するための方策について検討していく。

⑭地域猫活動は、飼い主のいない猫問題を解決するだけでなく、殺処分の対象となってきた子猫の繁殖制限の役割も担っています。福岡市では、2009(平成21)年度に「福岡市動物愛護管理推進実施計画」を策定し、殺処分自体をなくし、人にやさしく動物にもやさしい福岡をめざすため、2013(平成25)年11月4日「どうぶつ愛護フェスティバルinふくおか」において、高島市長が“殺処分ゼロへの誓い”の宣誓を行いました。この質問の最後に、今後の「殺処分ゼロ」に向けた市の決意をお聞かせください

(回答)

  • 平成27年4月に策定した「第2次福岡市動物愛護管理推進実施計画」において,負傷犬猫の死亡及び,攻撃性や疾病等による譲渡不可能な犬猫を除く,実質的な殺処分ゼロを目標に掲げている。
  • 現状,犬は積極的な譲渡の推進などにより実質的な殺処分ゼロを達成しているが,一方,猫は収容される大部分が,譲渡までに一定の期間を要する離乳前の子猫であるため,平成28年10月から,子猫が譲渡可能となるまで,市民ボランティアの方に哺育や排便のお世話を行っていただく「ミルクボランティア事業」を開始し,現在,その拡充に努めている。
  • 今後は,殺処分ゼロを目指して,一般社団法人福岡市獣医師会と共同で,これらの子猫を適正に飼育することができる譲渡先を確保していく。

2.教職員の長時間労働の改善について

 2013年に実施された国際教員指導環境調査で、参加34カ国中で勤務時間が最長だった日本の教員ですが、2015年12月に実施された連合総研の調査結果によって、国内の他業種との比較に於いても長時間労働であることがわかりました。週当たりの法定労働時間は40時間ですが、2015年の週当たりの労働時間が60時間を超える教員の割合は、小学校で72.9%、中学校に至っては86.9%となっていました。週60時間以上の労働とは、言い換えれば週に20時間以上の時間外労働をしているということで、これを月当たりに換算すると、4週で80時間となり、厚生労働省の定めるいわゆる「過労死ライン」に当たります。重ねて言えば、小中学校の教諭で週60時間以上の過労死ラインで働いている人が、7〜8割台を占めているということで、明らかに労働基準法違反です。

①教職員の働き方改革を議論している中教審の特別部会が、8月29日、教員の長時間労働の改善に向けた緊急提言をまとめ、文科省に提出しました。緊急提言を提出するに至った経緯とその内容をご説明ください

【教育長】

  • 教職員の長時間勤務の実態が看過できないことから,教育に携わる全ての関係者が改善の取組を実行し,教職員がその効果を実感できるようにするために,まとめられたもの。
  • 提言の内容
    ・校長及び教育委員会は学校において「勤務時間」を意識した働き方を進めること
    ・全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと
    ・国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること

 では、福岡市の実態についてお尋ねします。

②直近の調査である2014年実施の福岡市教職員勤務実態調査でわかった、1日の平均在校時間と1日あたりの超過勤務時間を学校種ごとにお示しください

【教育長】

  1日の平均在校時間 1日あたりの時間外の勤務時間
小学校教諭 11:13 3:07
中学校教諭 11:01 3:50
特別支援学校教諭 10:21 2:09

 福岡市の教諭についても、ひと月に20日間勤務したと仮定した場合、月当たりに換算した時間外勤務時間は、小学校で62時間20分、中学校で76時間40分、特別支援学校で43時間となっており、中学校においては過労死ラインすれすれとなっています。しかし、実態は、土日も学校に行くなど20日間の勤務で終わっていないことを考えれば、小学校も危険な状況と言えます。

超過勤務を引き起こしている主な要因は何ですか。上位5項目をお示しください。併せて、小・中・特別支援学校で、勤務時間外活動が最も多い項目もお知らせください

【教育長】

  勤務時間外の活動内容
1 授業関連
2 部活動関連
3 学級経営関連
4 学校運営関連
5 研究・研修関連
 
学校種 勤務時間外の活動内容
小学校教諭 授業関連
中学校教諭 部活動関連
特別支援学校教諭 授業関連

④この間、教育委員会は「教員が子どもと向き合う環境づくり」の主要事業として、公務情報化推進事業と学校問題解決支援事業に取り組んでおられますが、過去3年間の事業ごとの決算額をお示しください

【教育長】

  • 校務情報化推進事業及び学校問題解決支援事業決算額    (単位:千円)
      校務情報化推進事業 学校問題解決支援事業
    平成26年度 396,580 9,481
    平成27年度 489,596 9,605
    平成28年度 534,416 9,717

その結果として、超過勤務時間は縮減できたのか、前回の調査と比較してお知らせください。あわせて、ご所見もお願いします

【教育長】

  • 平成26年度の平均在校時間は16年度に比べて増加している。
  • しかし,アンケート調査では全教職員へのパソコンの配置や校務支援システムの導入などの事業により負担が軽減されたとの結果が出ていることから,引き続きこれらの取組みを進める。

 これらの負担軽減策は、まだ超勤の縮減にまでは至っていないということです。

6月22日、文科省は、「教育委員会における学校の業務改善のための取組み状況調査の結果(速報値)及び学校現場における業務改善に係る取組みの徹底について」通知を行っています。その内容はどういうものですか。

【教育長】

  • 学校の業務改善に向けた,平成28年度末時点の各教育委員会の取組状況の速報値が示されたもの。
  • 教育委員会に対して業務改善方針の策定や勤務時間の適正把握などを求めている。

福岡市では、教職員の勤務時間の適正把握のために今行っていることはどのようなもので、その実施率はどうなっていますか。

【教育長】

  • 健康障害防止を図るために,教職員は「在校時間報告書」を作成し,校長に提出することとしている。
  • 学期ごとに校長宛に通知をするほか,校長・教頭等の会議等で周知を図り,全教職員が記入するよう,指導を依頼しているが,提出状況については報告を求めていない。

 「在校時間報告書」は、自らがその日の在校時間をパソコンに記録をするという自己申告方式ですが、

「自己申告方式」は、教職員の負担感がある上に、客観性が保たれないのではないかと思いますが、いかがですか

【教育長】

  • 在校時間報告書については,時間をかけることなく,正確に提出できるよう「在校時間報告書作成ソフト」を配布し,教職員の負担軽減を図るとともに,管理職への周知により,適正な提出に努めている。

緊急提言に、勤務時間の適正把握のためにタイムカード管理がありますが、既にタイムカード管理をしている都道府県、市区町村、政令市の導入率と、併せて福岡市でのタイムカード管理導入に対するご所見をお伺いします

【教育長】

  • 平成28年度末で,都道府県12.8%,市区町村10.5%,政令市40.0%
  • タイムカードと異なり,勤務状況を具体的に把握できることから,今後とも,「在校時間報告書」を活用していく。

 政令市においてもすでに40%が導入しています。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべきガイドライン」には、始業・終業時刻を確認し、記録する方法として、原則、使用者が自ら現認するか、もしくはタイムカード等の記録など客観的な記録によると示されています。自己申告方式は使用者責任の回避につながる懸念があります。タイムカードやICカードによる客観的な出退勤記録システムの導入を検討されるよう要望しておきます。

⑩教職員の勤務時間は、労働基準法で1日8時間、週40時間ですが、福岡市条例では1日7時間45分、週38時間45分と定められています。しかし、学校現場では全く守られていません。昨年度、月当たり100時間又は2か月平均80時間を超えた報告書を提出したのは何校、何人かお知らせ下さい。また、今年度の8月までの状況はどのようになっていますか

【教育長】

  • 平成28年度の報告書提出は5校42人。29年度8月末時点での提出は1校4人。

 昨年が5校で42人、今年度8月末時点で1校4人ということは、超過勤務が常態化している学校があるということです。当該校へは早急に業務改善を求めるべきと指摘しておきます。しかし、先ほどの福岡市の実態調査から見ると、この報告書提出者数はあまりに少ないのではないかと推測します。

⑪実態はこんなものではないと考えます。先ほどの答弁で、在校時間報告書の提出状況の報告は求めていないとのことでしたが、6月22日の通知においても、「勤務時間管理については、労働法制上求められる責務であり、業務改善を進めていく基礎として、服務監督権者である教育委員会が教職員の勤務時間を適切に把握することは不可欠」だとあります。福岡市がタイムカードを導入せず、今後も在校時間報告書による勤務状況の把握を進めるのであれば、教育委員会責任の下、全ての教職員の勤務実態を各学校長から提出させ、チェックすべきと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

  • 平成29年6月22日付文科省通知においては,各学校の管理職,その他の教職員が勤務時間について意識をもって勤務する取組みを実施するよう求められている。そのため,長時間労働による健康障害から自らを守り,勤務時間を意識した勤務をするよう教職員による「在校時間報告書」の作成を徹底する。

 使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入した賃金台帳を調整しなければならないとあり、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべきガイドライン」には、事業所(学校)において労務管理を行う部署の責任者(校長)は、学校内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消に努めること。とあります。 ご答弁に、「長時間労働による健康障害から自らを守り、勤務時間を意識した勤務をするよう…」とありましたが、何もだらだらと学校に残っているわけではなく、目の前に積もる仕事があり、帰りたくても帰れない、その実態を把握するための報告書です。教職員の業務評価のためのオンラインシステムを使用すれば、教育委員会が把握することは困難ではないと考えます。即、やるべきです。

常態的な長時間勤務で、教職員は疲弊し、年休を取ろうにも取れない状況にあります。子どもが登校しない夏休みなどの長期休暇に年休が取れるよう、教員が出勤しない「学校閉庁日」の設定が必要だと思いますが、ご所見をお伺いします。

【教育長】

  • 従前から,夏季休業期間中に行事を設定しない期間を設けることにより,教職員の年休等の取得機会の確保に努めている。
  • 年休等の取得促進による教職員の健康保持の観点から,原則,教職員が出勤をしない「学校閉庁日」の設定について,検討する。

 次に、中学校で勤務時間外活動が最も多い部活動についてお尋ねします。

⑬「部活動指導のガイドライン」にも明記しています部活動の休養日について、週1日以上の休養日を設けている中学校は、何校で実施率何%ですか

【教育長】

  • 学校数は69校で実施率は100%

その休養日は、土日なのか、平日なのか割合をお尋ねします

【教育長】

  • 土日のいずれか1日,または土日の両日を休養日としている部活動は,42.7%
  • 大会参加等により,平日を休養日としたことがある部活動は,57.3%

⑮平日に休養日を設けても生徒も教職員も心身の休養とはなりません。土日に休養日を設定していても、他校から練習試合を申し込まれると断られず、結局休めなかったということも聞き及んでいます。静岡市教育委員会は、部活動の行き過ぎた練習時間を抑え、適度な休養を確保するために、活動日を4日にすることなどを定めたガイドライン案をまとめ、パブリックコメントを経て、来年4月から適用する方針を示しています。ここは行政主導で、全市一斉の部活動休養日の設定が必要だと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

  • 全市一斉の部活動休養日の設定は,生徒や教職員の健康保持の観点からも大変効果的であり,今後,学校現場の意見も聞きながら検討する。

小学校は2020年度、中学校は2021年度新学習指導要領が実施されます。小学校においては英語学習が導入されますが、授業時間数は何時間増え、その対応はどう考えておられるのか、ご所見をお伺いします。

【教育長】

  • 平成32年度からの新学習指導要領の全面実施に伴い,小学校3・4年生で外国語活動が,新たに教育課程に35時間位置付けられ,5・6年生で現行の35時間からさらに35時間増加し,70時間,外国語科の学習を行うこととなる。
  • 福岡市では,文部科学省が示す移行措置に基づき,平成30年度は,3・4年生で15時間,5・6年生で50時間実施し,平成31年度から1年前倒しで実施する。
  • 増加する時数は,文部科学省から総合的な学習の時間を15時間を限度に減じることで対応してもよいとされていることに加え,教育課程全体の時数を見直すことで対応する。

 小学校では、2019(H31)年に備えて、来年度より午前中の授業時間を5時間にするような計画も浮上していると聞きます。子どもたちにとっても集中力や体力の面から問題があります。

⑰小学校では、英語学習による授業時間数の増だけでなく、ゲストティーチャーやALTとの打ち合わせ時間も必要となります。また、本格的なAI時代到来を前に、プログラミング教育が必修化されます。多くの教員は、プログラミング経験がないことから、実施に不安を感じています。教員研修も図られることと思いますが、教員の負担感、多忙化に拍車をかけることになることは間違いありません。そこで、小学校に英語の専科教員の配置など定数の確保が必須だと考えます。福岡市教育委員会として、英語の専科教員の定数確保を図るべきだと考えますが、ご所見をお伺いします

【教育長】

  • 小学校での外国語の学習は,文部科学省が示す指導計画や教材,指導案等を活用して,基本的には現在の教員定数の中で対応する。
  • 英語の専科教員については,より効果的な指導となるか,研究していく。

⑱この間、超勤・多忙化の要因の一つである学校への調査・報告文書等の削減や、校務支援システムの導入など、業務改善を図ってきたとしていますが、超過勤務時間は縮減されるどころか、長くなっています。その理由は、学校は仕事や業務の必要性や優先順位を判断する基準がなく、時間があれば「子どものために」とか「教育効果があるに違いない」という思いで、ビルド&ビルド&ビルドになっているからと思われます。そこに保護者からの要求も加わり、教員は今、何でも屋として求められている感すらあります。教材研究など授業の準備や学校行事の準備、子どもと向き合う時間の確保など教員としての専門性が発揮できるように、大胆な業務改善が必要です。その際、地域・保護者など社会的な合意が得られなければなりません。福岡市は、「教職員の業務改善のためのガイドライン」を策定中としていますが、現在どのような進捗状況であるのか、お示しください

【教育長】

  • ガイドラインの前提となる,教員の負担軽減に向けた具体的な取組内容の検討を進めている。

⑲岡山県教委は、教員の子どもと向き合う時間の確保のため、コピーや印刷などの事務作業を行う業務支援アシスタントを導入しており、約9割が「学習指導に充てる時間が増えた」と回答しています。横浜市も今年度大規模校から導入。教員の事務負担の軽減が、学校事務職員の負担増とならないよう、福岡市での導入を要望しておきます。過労死の問題が社会問題となっています。いつ犠牲者が出てもおかしくない教育現場の実態があります。福岡市教育委員会においては、「教職員の長時間労働の改善」をどのように進めていかれるのか、教育長のご所見をお伺いして、質問を終わります。

【教育長】

  • 業務の効率化や改善に取り組んでいるが,長時間勤務の実態があることは認識している。
  • 今後,学校事務執行体制の見直しなどを検討し,教員の一層の負担軽減を図るとともに,「業務改善のためのガイドライン」を策定し,教職員の長時間勤務の解消に取り組む。