2018年度条例・予算特別委員会 補足質疑 (2018年3月7日)

1. 「一人ひとりの学びを保障する教育政策」について

 福岡市では,確かな学力の向上の取り組みとして、2010年の試行調査から例年「生活習慣・学習定着度調査」を実施しています。この間,①調査結果を分析して,生活習慣と学習定着度の相関関係,及び明らかとなった課題は何か,また,②一人ひとりの学びを保障するために,教育行政としてどのような教育環境の整備を行ってきたのかお尋ねします。

 ③「ふれあい学び舎事業」がスタートして2年が経過しようとしていますが,2016年度決算額と,2017年度,2018年度の予算額,併せて,事業の目的や対象学年,活動内容などその概要についてお尋ねします。また,④学びや事業の成果,課題についてもお知らせください

 ⑤スタート時は,教員への負担はかけない方向で,地域ボランティアの教育力によるとしていました
が,指導員の体制はどうなっていますか

 こども未来局は、2016年7月に福岡市立学校に在籍する全小学6年生、全中学3年生の保護者対象に、「福岡市子どもの生活状況等に関する調査」を行いました。⑥調査の目的とその結果明らかとなった課題について概要をお知らせください

【教育長】
①・「生活習慣・学習定着度調査」の分析は,小学校では,「朝食を毎日食べている」と回答した児童の正答率が,中学校では,「テレビゲームをする時間が1時間未満」と回答した生徒の正答率が高く,基本的な生活習慣の育成が,学力の向上にとって重要である。

②・教育環境については,「新しいふくおかの教育計画」に基づき,小学校1年生から4年生までは少人数学級,小学校5・6年生では一部教科担任制及び少人数指導の教育実践体制を整備している。
・平成28年度から開始した,放課後の補充学習によって児童の学力向上を目指す「ふれあい学び舎事業」などの,学力パワーアップ総合推進事業を実施している。

③・ふれあい学び舎事業については,平成28年度決算額が22,895千円,平成29年度予算が74,515千円,平成30年度予算が135,809千円である。
・本事業は,放課後の補充学習会の中で,これまでに学習した内容のふりかえりや繰り返し学習をすることで,基礎的な学力の定着向上を目指すことを目的として,小学校3,4年生を中心に,週に2回,2時間程度,算数を中心とした個別の学習指導を実施している。

④・成果は,1学期に解くことができなかった内容が,2学期には解けるようになるなど,基礎的な学力が定着したことである。
・課題は,平成30年度からの全校実施に向けて,学習の指導にあたる人材の確保である。

⑤・指導体制は,教職経験者や地域の方が学習支援リーダー,学習支援員として児童の学習指導を行っている。

【こども未来局長】

⑥・「福岡市子どもの生活状況等に関する調査」は,本市の子どもや子育て家庭の生活状況を多岐にわたって把握し,効果的な施策を推進していくための基礎資料を得ることを目的として実施したもの。
・調査結果から,収入が低い世帯やひとり親等の世帯では,放課後や夕食後に子どもだけで過ごす割合が高い,子どもの学習の習慣や環境が不足している割合が高い,保護者の公的機関への相談ニーズが高いことなどが明らかとなり,子どもの居場所の充実や学習習慣づくり,学習環境の確保,公的機関の相談体制の充実などが課題と認識している。

 去る1月14日,福岡教育大学准教授 川口俊明さんの研究チームが,小学4年から中学3年生までの学力変化を調査した研究結果が,「学力格差の芽,小4から」という見出しで西日本新聞に掲載されました。それは,生活習慣と学習時間,成績に相関関係がみられること。小4時点で既に成績差が存在し,中学校では縮まらないこと,小4では遅すぎる可能性が高く,入学時あるいは就学前など早い時点での対策が必要であること。そしてこれら子どもの育ちには,家庭環境が大きな影響を与えているということなどを指摘しています。
これまでも,親の経済格差と子どもの学力格差の相関関係は課題となってきましたが,課題解決のために,教育委員会はこれまでどんな対策を行ってきたのかお尋ねします
また,⑧経済的に厳しい家庭への相談・支援を行っている保健福祉局は,子育て支援としてどんな支援を行っているのか,その中で,今後,学習支援の取組みを考えているのか。また,⑨就学前児童・家庭に関りの多い保育所では,家庭環境の厳しい子どもに対してどんな支援を行っているのか,お尋ねします。

【教育長】

⑦保護者や児童生徒の状況に応じた取組みは,各学校においては,習熟度別の指導や練習問題を繰り返して行うなど児童生徒一人一人の学力課題に応じたきめ細かな指導を行っている。
さらに,各学校で家庭訪問などの際に,児童生徒の学習状況について保護者と話し合いを行い,家庭学習の進め方や児童生徒の課題に応じた学習の仕方などを保護者に伝えるなど,家庭と連携協力した学力向上に取り組んでいる。

【保健福祉局長】

⑧・保健福祉局では,生活保護世帯及び生活困窮世帯を対象に,子どもと保護者の両方に対して,生活習慣や育成環境の改善に関する助言や,教育に関する情報提供などの支援を訪問型で行う「子どもの健全育成支援事業」を実施している。
・学習支援については,平成30年度から,「子どもの健全育成支援事業」の支援世帯で,不登校やひきこもりなどの理由で学習支援が必要な子どもに対して,高校進学に向けた訪問型の学習支援を行うこととしている。

【こども未来局長】

⑨・各保育所では,日頃から子どもと保護者の関係や家庭での生活状況を把握した上で,その思いや願いを丁寧に汲み取り,各家庭の状況に応じた支援を実施している。
・特に家庭環境に配慮を必要とする児童については,該当する児童が多数入所している保育所等に対し,家庭支援推進保育事業として保育士の加配費用を助成することにより,よりきめ細かな支援を行っている。

 また,川口准教授は,就学前など早い時点での対策が必要であると指摘していますが,そのためには,⑩保幼小連携が大変重要となってきます。現在はどのような保幼小連携を行っているのか,お知らせください
少人数学級の実施について福岡市は,国の定数改善に先駆けて1年生から4年生まで順次少人数学級を実施してきましたが,5,6年生については一部教科担任制の実施に止まっています。⑪少人数学級の成果について改めてお伺いします

【教育長】
⑩保幼小連携については,互いに授業の様子や保育の様子を参観し,それぞれの教育内容や指導方法について紹介しあうなど,発達段階に応じた適切な指導の在り方について協議する機会を設定している。
⑪少人数学級の成果としては,基本的な生活習慣の定着が求められる小学校1,2年生や,基礎的な学習の定着が求められる小学校3,4年生という大切な時期にきめ細かな指導を行うことが有効であると認識している。

 全国学力・学習状況調査で、毎年話題になるのが全国都道府県の平均点の競い合いです。関心の多くが平均点のみに目を奪われ順位争いに躍起になっていますが、平均点は上位層の点数が上がれば上がるのです。川口准教授が指摘しているのは、上位層と下位層の格差の問題です。得点の低い子どもへの支援策をどのように図ってきたのかが重要です。
 大阪府茨木市は,「一人も見捨てへん教育」という考え方のもと,「すべての子どもの学力向上に挑む」として,3年を一サイクルとして学力向上の取り組みを進めています。特徴としては,平均点だけを問題にするのではなく,「上位層」を増加させ,「下位層」を減少させることに焦点を当てていることです。とりわけ「下位層」への注目は特筆に値します。「一人ひとり,とりわけ『しんどい層』の基礎学力を下支えする」学力保障の考えかたに沿い,「学校でしか学ぶ事が出来ない子どもたちに確かな基礎学力を身につけてもらうことこそが公立学校の務めである」というスタンスです。家庭生活や学校生活に多くの課題を抱えている「しんどい層」の子どもたちの学力を引き上げることを明確な目標の一つとしています。学力を底上げするためには,もっと抜本的な対策が必要になることは言うまでもありません。

 「ふれあい学び舎事業」は成果が上がっているとのことですが,一方で,参加してほしい子どもの参加を促すことも課題としてあります。授業で学力を保障することをまずやるべきです。個別支援の必要な児童は,1クラスに数名はいます。⑫その子たちが安心して授業を受けられ,周りの児童も達成感を感じられるような授業をするためには人が必要です。落ち着いて授業ができてこそ,学力は向上します。低学年から学習支援対策をすべきではないかと考えますが,ご所見をお伺いします。
また、⑬「ふれあい学び舎事業」のコーディネーターや指導員の確保は,学校任せにするのではなく,人材登録など教育委員会が積極的に行うべきと考えますが,ご所見をお伺いします。

【教育長】

⑫ 発達段階に応じた効果的な教育活動を行うための教員配置のあり方については,新たな福岡市教育振興計画を策定する中で検討していく。
⑬ふれあい学び舎事業の学習支援員の確保については,教育委員会が学習支援員の登録用サイトを作成し,退職教員をはじめとする多くの市民に広く公募することとしており,今後も学校と連携しながら学習支援員の確保を進める。

 「福岡市子どもの生活状況等に関する調査」報告書によると,入浴はどの世帯においても「ほぼ毎日」の割合が高いものの,300万円未満世帯における「週に数回」5.2%,「月に数回」0.2%,「めったにない」0.1%を見過ごすわけにはいきません。平日の朝食摂取状況については,全体で「ほぼ毎日」が93.4%あるものの,300万円未満世帯では「ほぼ毎日」は86.7%,「週に数回」8.3%,「めったに食べない」「ほとんど食べない」が3.6%(約117人)もいます。歯磨き,宿題や次の日の準備,自宅での学習状況,学校等での勉強の成績などは,収入が高い世帯ほど「できている」の割合が高く,収入が低い世帯ほど「できていない」割合が高くなっています。そして、学校等での勉強の成績や高校進学への意欲では,収入が高い世帯ほど「成績が良好」「意欲がある」の割合が高く,収入が低い世帯ほど「勉強に遅れている」「進学への意欲がない」割合が高くなっています。
 世帯収入と家庭環境や子どもの学力との相関関係については,この間,子どもの貧困問題としても指摘されてきましたが,今回の調査によって,子どもの生活状況と家庭環境,学習意欲など福岡市においても相関関係がみられたということです。川口准教授の研究チームが行った学力変化の調査と照らし合わせてみても,子どもの学びと育ちを支援していく施策は喫緊の課題と言えます。

 こども未来局においては,家庭支援推進保育事業として保育士の加配を行い,困難を抱えた家庭や児童への支援を行っているとのことですが,保育園からは近年の社会情勢で困難を抱えた児童が増加しているとの報告を受けています。⑭学力と相関関係のある生活習慣の改善など,園や保護者との連携を密接に行い,きめ細かな支援策を講じるためにも,保育士の加配基準の引き下げを行うべきだと考えますが,ご所見をお伺いします
 また,保健福祉局においては,2018年度より高校進学に向けた訪問型の学習支援を展開されるということで,大変期待するものです。ただ,主に中学生を対象とした支援となっています。今後は、家庭内での教育が困難な状況におかれている子どもたちへの支援策として,基本的な生活習慣の改善を含め全中学校ブロックに配置されるスクール・ソーシャル・ワーカーと連携しながら進められることを要望します。

 2018年度は「新しいふくおかの教育計画」の最終年度であるとともに,新たな福岡市教育振興基本計画の策定に向けて検討する年でもあります。ここまで現状がわかっていて、何もしないわけにはいきません。「ふれあい学び舎事業」は、学習習慣づくりや補充学習として学力の定着をめざすということでは、大いに意義ある事業です。しかし、学力に課題を抱えながらも放課後学習に参加していない子どももいます。学力保障は授業が勝負です。習熟度別学習は授業方法のひとつであり、1人ひとりの学びの保障には人的措置は必須です。
「新しいふくおかの教育計画」の取り組み及び成果と課題をしっかり分析され,課題解決に対応する計画を作成していただくことを強く要望します。特に⑮基本的生活習慣や学習習慣の定着効果が確認されている少人数学級は,小学校5,6年生及び中学校全学年で実施し,学力格差の縮小に向けた早期対応などを,盛り込むべきと考えますが,ご所見をお伺いします
 学力の格差は低学年から生じています。保幼小連携についても、授業や子どもの様子の参観も重要ですが、保幼小連携の在り方など,抜本的な見直しが必要だと考えます。⑯学力・健康格差に早期に対応するため,本市の幼児教育の現状と課題を整理,分析するとともに,保幼小連携の観点から新たな教育カリキュラム,手法の研究機関が必要と考えますが,ご所見をお伺いします
 再度申し上げます。「学校でしか学ぶ事が出来ない子どもたちに、確かな基礎学力を身に着けてもらうことこそが公立学校の務めです」。子どもの貧困対策法の目的には、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう,貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに,教育の機会均等を図るため,子どもの貧困対策を総合的に推進すること」と謳っています。
 学力保障の要は授業づくりです。教職員が授業づくりにじっくりととりくむ時間もない、学校現場の多忙化解消も並行して取り組まねばならない問題です。併せて、⑰各校が学力向上計画を学校教育の柱として位置づけ,組織的に取り組みを推進するためには,予算の確保は重要です。次代を担う子どもたちの育ちや学びを支援する教育予算の拡充に向けて,教育長の決意をお伺いし、質問を終わります

【こども未来局長】

⑭国の基準では特に配慮を必要とする児童の割合が40%以上の保育所等を対象としているが,福岡市では独自に基準の引き下げを行い,同割合が35%以上の保育所等に対して保育士の加配費用を助成し,よりきめ細やかな支援を行っている。

【教育長】

⑮少人数学級のあり方については,これまでの本市の取組をふまえ,新たな福岡市教育振興計画を策定する中ですべての子どもたちの学力を保障することができるよう検討していく。
⑯幼児教育については,関係局や関係団体で構成する「福岡市保・幼・小・中連絡協議会」を中心に,小学校につなぐ観点から,教育委員会が福岡市私立幼稚園連盟などの関係団体と連携を強め,教育の内容や方法などの現状と課題を整理・分析し,幼児教育の質の向上を図るとともに,保幼小中連携の推進に努めていく。
⑰幼稚園,小・中学校,高等学校の過程を通して,確かな学力を身につけさせ,子どもたちが進みたい進路を実現させるなど,生まれ育った環境に左右されることなく全ての児童生徒の学力の向上を図ることは,児童生徒の可能性を未来につなぐことであり,今後とも取組みの推進に努めていく。


2.「非公務員のモチベーションの向上」について

 全国の各自治体においては、厳しい財政状況の下、市民の様々なニーズに応え持続的な公的サービスを提供していくためとして、「民でできることは民で」と行財政改革の名のもとに、業務の外部委託や指定管理者制度の導入などを押しすすめています。その結果、総務省の調査では、全国における地方公務員数は、教育部門を除く一般行政部門のみを見ると、2015年以降は3年連続で増加、2017年の総職員数は約274万人で、対前年比で約5,000人余りの増加となっているものの、それは23年ぶりであり1994年をピークとして約54万人も減少しています。一方、臨時・非常勤職員数は、同じく総務省が実施した「臨時・非常勤職員に関する調査」によると、2005年約45万6,000人、2008年約49万8,000人、2012年約59万9,000人、そして、2016年は約64万3,000人と年々増加の一途をたどっています。職員に占める臨時・非常勤職員の割合も、13.0%から14.7%、17.9%、19.0%と増加しています。
福岡市役所においても常勤職員を基本として行政サービスの提供を行っていますが、本市の臨時・非
常勤職員の現状についてお尋ねします。
福岡市役所で働く非正規公務員には、主に特別職非常勤職員である嘱託員と臨時的任用職員がいますが、その任用根拠の規定をお示しください

【総務企画局長】
 嘱託員    ・・・地方公務員法第3条第3項第3号
 臨時的任用職員・・・地方公務員法第22条第2項
           及び地方公務員の育児休業等に関する法律第6条第1項第2号

 さらに、②その人数を、嘱託員、臨時的任用職員別にお示しください。併せて、③県費移譲した教職員を除く正規公務員の条例定数、職員に占める臨時・非常勤職員の割合についても、それぞれ過去3年間の推移をお示しください

【総務企画局長】
 条例定数   ・・・ 平成27年度 9,313人,平成28年度 9,318人,平成29年度 9,405人
 嘱託員    ・・・ 平成27年度 2,752人,平成28年度 2,738人,平成29年度 2,828人
 臨時的任用職員・・・ 平成27年度 905人,平成28年度 799人,平成29年度 809人
 割合     ・・・ 平成27年度 28.2%,平成28年度 27.5%,平成29年度 27.9%

 ところで、④2018年1月1日より、市職員の名札が職員証と一体化されました。職員証がない嘱託員や臨時的任用職員は従来通り台紙の名札となっています。一目で正規職員か非正規職員かが分かるようになったわけですが、このように名札を変更した経緯についてお示しください

【総務企画局長】

  • 職員証の有効期間が平成29年12月末。
  • 一斉切替にあわせて,新しい職員証を名札として活用することとした。

 福岡市においても正規職員は増加しているものの、職員に占める嘱託員の割合は約23%、臨時的任用職員も含めれば約28%にもなり、全国平均を大きく上回っています。本市の公共サービスが、非正規職員に依存して展開されている現状は明らかです。公的サービスに従事する人々の多くが非正規職員に切り替えられ、目いっぱい働いても年収200万円前後という「官製ワーキングプア」の問題、パート労働法も適用されないなど非正規公務員は「法の谷間」におかれてきました。特に地方公務員法第3条第3項第3号、いわゆる「3の3の3」に規定された嘱託員は専門職としての任に就きながら、期間の定めがある有期雇用で、その処遇についても不十分であると言わざるを得ません。そのような職場環境の中で、⑤市民から見ても正規か非正規かが歴然としてわかる名札の使用は、非正規職員にとってモチベーションの維持に支障をきたすのではないかと考えますが、いかがですか、ご所見をお伺いします

【総務企画局長】

  • 各職場において,全職員が職場の課題や目標を共有し,一体感を持って,働きがいのある職場づくりを進めることが重要。

 現在、国会において「働き方改革」が議論されています。「過労死促進法」と言われる裁量労働制の対象拡大について、今国会では削除の方向が示されましたが、「残業代ゼロ法案」と言われる「高度プロフェッショナル制度」など問題のある法案も残されています。その中で、安倍首相は、「同一労働同一賃金の実現など非正規雇用の待遇改善」について「非正規という言葉を国内から一掃する」と発言し、今や全雇用者の4割に及ぶ非正規雇用者の待遇改善につながる可能性は見えてきました。また、改正労働契約法により有期契約が5年を超えた労働者は無期雇用への転換も可能になります。しかし、非正規公務員はこれらの法律の適用対象外にあります。
 福岡市では、「市政への即戦力として活躍できる人材」募集として、社会人経験者を対象にした民間等社会人採用があります。受験資格として、「職務経験直近10年中7年以上で、週30時間以上の勤務を1年以上継続して就業」となっています。しかし、週27.5時間の嘱託員はこの要件に適(かな)わず、正規になりたくてもなるチャンスがないということになります。
 ⑥嘱託員など、培われてきた専門知識、キャリアを生かして能力をさらに発揮したい人にとっては、正規へのチャンスさえないことは問題だと考えますが、ご所見をお伺いします

【総務企画局長】

  • 社会人経験者採用は,民間企業等で培われた経営感覚や専門的知識と経験を有する即戦力となる人材を対象。
  • 受験資格は,常勤職員と同程度の勤務実績と見なせる週30時間以上の勤務としている。

 また、⑦職員の資質の向上など、ブラッシュアップしたい職員に対して夜間の自主研修等がありますが、嘱託員は対象となるのかどうかお伺いします

【総務企画局長】

  • 嘱託員は専門の知識・技能を有し,かつ即戦力としての資質・能力がある者を採用,また,任期がある職員で他部署への異動もなく,研修の対象としていない。
  • 嘱託員の業務上,必要がある研修については,各々の所属において実施。
    (根拠) 地方公務員法第39条,福岡市職員研修規程 第2条 「一般職に属するすべての職員」 

 非常勤公務員の働き方や待遇が低いことの問題が、この間社会的な問題となってきました。そして、昨年には、地方自治体の非常勤職員の待遇改善を図ることを目的にした地方公務員法の改正が行われ、2020年4月1日の施行に向けて、現在、各地方自治体で制度整備が進められています。
「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」において、会計年度任用職員制度を創設し、臨時・非常勤職員等の移行を図るとしていますが、その法改正の目的と趣旨、福岡市のスケジュールについてお尋ねします

【総務企画局長】

  • 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律の趣旨は,行政需要の多様化等に対応し,公務の能率的かつ適正な運営を推進するため。
  • 施行時期である平成32年4月に向けて,「最小の経費で最大の効果を挙げる」という地方自治法の基本理念に則り,非常勤職員の任用や勤務条件等のあり方などについて,国が示した運用の考え方を参考に,他都市の状況等も踏まえながら検討。

 研修については、業務上必要がある専門的分野だけではなく、公務に携わる者として一般教養などの研修も資質の向上としては欠かせません。職員研修規定の見直し、もしくは弾力的な運用を図るなど、研修の自由を確保すべきと申し上げておきます。
 また、非正規公務員の仕事は、もはや補助的や臨時的なものではありません。公共サービスの基幹的業務を担う存在になったといっても過言ではありません。同一労働同一賃金が適用されないなかでの名札による区別化について局長は、全職員が職場の課題や目標を共有し、一体感を持って働き甲斐のある職場づくりを進める、とご答弁されましたが、職場の一体感を損なう何ものでもありません。たかが名札、と思われるかもしれませんが、名札が果たす役割は重要です。自分の所属、肩書としての証であれば、それは自信につながると同時に責任も発生します。しかし、それ以前に、名札を見たとたん、正規か非正規かが一目瞭然、正規の人と同等の仕事をし,それに誇りをもって働いてきた嘱託員などにとって,モチベーションを下げる何ものでもありません。必要ですか? こんな名札はいかがなものか、市民サービスに携わる公務の場で使用すべきではないと強く申しあげておきます。
 2020年施行、新設の採用類型型「会計年度任用職員」は、「3の3の3」に基づく特別職非常勤職員いわゆる嘱託員の範囲が厳格化され、労働者性の高い一般職に準ずる職は、会計年度任用職員へと移行、さらにこれがフルタイムとパートタイムに分かれるなど、賃金・労働条件などと併せてまだ不明確です。
 会計年度任用職員制度の創設によって、臨時・非常勤職員等の働き方が現状より低下することなく、不利益が生じないよう、また、正規職員が行っている業務を安易に会計年度任用職員に切り替えることがないよう、職員団体の意見も十分聞きながら制度設計をされるよう要望します。
 さらに、非常勤職員の将来の生活や職業キャリアを展望できるような働き方改革を、非常勤職員の正規の道への緩和、スキルアップのための研修等の機会の確保にも努められるよう要望して質問を終わります。