■2018年9月議会 一般質問 (2018年9月10日)
「猫の多頭飼育による生活破綻支援策」、「会計年度任用職員の導入について」、「部落差別解消推進法の具体的施策」以上3点について質問しました。
1.猫の多頭飼育による生活破綻支援策に関して
これまでの議会において、飼い主のいない猫の殺処分ゼロや猫問題の解決をめざして、地域猫活動の推進について質してまいりましたが、猫問題解決に取り組んでいるボランティアの方々からは、猫の多頭飼育に関するご相談も少なくありませんでした。
特に、高齢者の一人暮らしにその傾向が見受けられるのではないかと推測します。今回は、猫の多頭飼育による生活破綻の支援策について、質問を行ってまいります。
①一昨年、動物愛護管理センターが居宅介護支援事業所を対象とした猫の多頭飼育に関するアンケート調査を行っていますが、その調査の目的、主な調査内容についてお尋ねします。
◆<保健福祉局長>
- 調査目的:居宅介護支援事業所の利用者における猫の多頭飼育状況を把握すること
- 調査内容:猫を飼育している世帯数,飼育頭数,周辺住民からの苦情の有無など
②事業所利用世帯のうち猫を飼育しているのは何世帯ですか。
◆<保健福祉局長>
- 19,032世帯について回答があり,うち645世帯が猫を飼育
③一般社団法人ペットフード協会が昨年行った全国犬猫飼育実態調査では、5年前と比べて猫の頭数は横ばい、犬の頭数は減少傾向にあり、猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回っています。しかし、飼育世帯率でみると犬12.84%に対して、猫は9.71%と少なく、1世帯で複数頭飼育していることが分かります。今回の動物愛護管理センターの調査で、居宅介護を受けている世帯の約3.4%が猫を飼育していることがわかりました。猫を飼育している世帯のうち、5頭以上の猫を飼育している世帯,そのうち10頭以上の猫を飼育している世帯はそれぞれ何世帯ですか。また、そのような多頭飼育となった理由を把握していればお示しください。
◆<保健福祉局長>
- 5頭以上飼育は67世帯うち10頭以上の飼育は22世帯
- 理由は把握(調査)していない
④市営住宅での苦情は主に住、宅供給公社に苦情が入ると思われますが、猫に関する昨年度の苦情件数は何件で、主な苦情の内容はどういったものかお示しください。併せて、保健福祉局に寄せられた猫に関する苦情件数と、苦情内容についてもお示しください。
◆<住宅都市局長>
- 平成29年度の苦情件数 85件
- 主な苦情の内容は,ふん・尿による悪臭,ノミやダニ,蠅等の害虫の発生,鳴き声等の生活衛生上の苦情が大半を占めている
◆<保健福祉局長>
- 平成29年度の猫の苦情件数 392件
- 主な苦情の内容は,無責任なエサやり,糞尿被害,物への被害
⑤では、猫の多頭飼育に関する苦情は何件ですか。過去3年間の苦情件数を、戸建て住宅、集合住宅別にお示しください。集合住宅については、民間住宅、市営住宅の件数もお知らせください。
併せて、多頭飼育に関する苦情の主な内容についてもお知らせください。
◆<保健福祉局長>
- 平成27年度 4件【戸建住宅4件,集合住宅0件】
平成28年度 11件【戸建住宅9件,集合住宅2件(民間住宅1件,市営住宅1件)】
平成29年度 8件【戸建住宅4件,集合住宅4件(民間住宅4件,市営住宅0件)】
- 苦情の主な内容は,糞尿被害,悪臭,鳴き声
⑥ペットの飼育を禁止している市営住宅でのトラブルに対しては、どのような対応をされているのですか。
◆<住宅都市局長>
- 市営住宅条例施行規則においては,犬,猫,鳥等のペットの飼育などにより,近隣住民にけがをさせたり,安眠を妨害したり,生活衛生上の迷惑を及ぼす行為を迷惑行為と定め,市営住宅入居者に対しては,入居時にペット飼育をしない旨の誓約書の提出を求めている。
- ペット飼育者には,こうした内容を示したうえで,新たな飼い主を探すなど,できる限り速やかにペット飼育を止めるよう指導している。
⑦禁止されていることが分かっていてもペット飼育をしている人の中には、心の拠り所として手放せない人もいます。特に、高齢者の一人暮らしにとってのペットは、唯一の家族です。仮に手放すことを決意しても、猫の里親探しをどこに依頼すればいいのか、解決策も見いだせないのが実情です。市営住宅で隠れて猫を飼育している方は、気づかれないように人を遠ざけ、孤立化していきがちと聞きます。
神戸市の市営住宅では、一般住宅の定時募集で「ペット飼育可能」住宅の募集をしています。福岡市でも、一人暮らしの高齢者が堂々とペットを飼い、適正な飼育ができるように、「ペット飼育可能」住宅を導入すべきと考えますがご所見を。
◆<住宅都市局長>
- 神戸市における「ペット飼育可能」住宅の導入については,阪神・淡路大震災の被災者に,ペットを飼育されていた方が多数おられ,この方々を受け入れる住宅が必要となったことから「ペット飼育可能住宅」2棟が整備されたと聞いている。
- 福岡市において「ペット飼育可能」住宅を導入するには,生活衛生上の問題の整理や対応,他の入居者や自治会の理解などが必要であり,解決すべき課題があると考えている。
神戸市の経緯についてはわかりました。しかし、震災以降、20年余りの間、市営住宅でペット飼育可能住宅が継続できているということは、そこに事業のハウツーがあると推測します。今後、事業ののハウツーを研究していただき、福岡市でも解決すべき課題の検討に着手していただくことを要望しておきます。
⑧猫の多頭飼育をしている方の中には、民生委員さんでさえもドアを開けてもらえず、住人の健康管理の不安があったが、猫問題解決に取り組んでいるボランティアが声掛けとサポートをしてうまくいったケースもあったと聞き及んでいます。このケースではどのように対応されたのでしょうかお尋ねします。
◆<保健福祉局長>
- 地域ケア会議に獣医師やボランティアが参加し,猫の飼育に関する専門的な助言を活かした個別支援の検討と実践を行っている事例がある。
- その結果,室内の衛生状況の改善だけでなく,本人の健康状態や生活意欲の改善につながっている。
⑨地域には様々な活動をしている人がいます。その地域人材をつなげ、困りごとを抱えている人に寄り添って支援する。まさに、地域福祉のモデル的取り組みと言えます。地域ケア会議などで地域福祉と猫問題解決に取り組んでいるボランティアとの連携が、これからの地域高齢者福祉には必要だと考えます。
猫問題解決に取り組んでおられるボランティアの方々の大部分は、地域猫活動に取り組んでいる方々です。以前は、地域猫活動推進のアドバイスが主な活動でしたが、現在は、高齢者の多頭飼育、猫の虐待防止など幅広い活動を行っています。これらの活動を支援するために、情報の共有化など動物愛護管理センターと連携した取り組みを進めるシステムづくりが必要だと考えますがご所見をお伺いします。
◆<保健福祉局長>
- 多頭飼育事例についての情報交換会を月1回開催している。今後も,情報交換会を活用し,動物関係団体等との連携を深めていく。
情報交換会参加者:動物関係団体,開業獣医師,ケアマネージャー,動物愛護管理センター
⑩ペットを飼育する効果は、生活に癒しや安らぎを与えるだけでなく、アニマルセラピーのように、心身の健康を回復させる治療法として医療面でも利用されています。しかし、多頭飼育に陥ってしまえば、適正な飼育が難しくなるだけでなく、健康疎外要因ともなるなど、多頭飼育の問題は深刻です。多頭飼育に至った背景は様々だと思いますが、自力でそこから抜け出すのは容易ではありません。猫問題解決に取り組んでいる方が、市営住宅で猫の多頭飼育をしている84歳の一人暮らしの高齢者の存在に気付き、ボランティアの仲間と数か月かけて現在も清掃を行っています。高齢者の健康保持や生活再建のために、福祉や環境改善の観点から行政が関わりながら改善をすることが必要だと考えます。今後、どのように取り組んでいかれるのか、ご所見をお伺いします。
◆<保健福祉局長>
- 多頭飼育のために,室内の衛生状況やペットの健康状態の悪化をはじめ,高齢者が必要な治療や介護を受けることができないという状況に陥らないよう,ボランティアや関係団体等の連携により状況が改善した事例を,地域包括支援センターの連絡会議や地域ケア会議,ケアマネージャーの研修会などにおいて周知を図ることにより,相談・対応の連携の輪を広げていきたい。
2.会計年度任用職員の導入について
2017年5月、「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」が成立し、新たに会計年度任用職員制度を創設し、2020年4月1日より臨時・非常勤職員等の移行を図るとして、各地方自治体で制度設計が進められています。私は、先の3月補足質疑において、臨時・非常勤職員等の働き方が現状より低下することなく、不利益が生じないよう、職員団体の意見を十分聞きながら制度設計に当たられるよう要望しましたが、
①改めて、改正法の趣旨についてお尋ねします。また,改正法の施行に向けて、まずは,臨時・非常勤職員がどのような任用根拠・勤務実態で任用されているのか明らかにする必要があると考えますが,市役所で働く嘱託員・臨時的任用職員について,職員の任用根拠と合わせ,5月1日現在で何人いるのか、お尋ねします。
【総務企画局長】地方公共団体における行政需要の多様化等に対応し,公務の能率的,かつ,適正な運営を推進することが改正の趣旨とされており,そのため,会計年度任用職員の任用等に関する規定や,嘱託員などの特別職や臨時的任用に関する制度の整備が行われるもの。
5月1日現在
・嘱託員2,836人(地方公務員法第3条第3項第3号)
・臨時的任用職員1,521人(地方公務員法第22条第2項,
地方公務員の育児休業等に関する法律第6条第1項第2号)
②新制度は、2020年度採用者からスタートします。募集は2019年度となることから、条例・規則の制定、改正は今年度末に行う必要があると考えますが、具体的なスケジュールについてはどうお考えかお尋ねします。
【総務企画局長】法施行時期である2020年4月に向けて,任用や勤務条件等について,国が示した運用の考え方や他都市の状況等も踏まえながら検討を行い,適切に対処する。
③経験を積んだ職員が継続して業務にあたることが、公務の能率的な運用に寄与し、市民サービスの向上につながることになります。現在の嘱託員について再度任用する場合に,上限の設定を行っているかお尋ねします。
【総務企画局長】現在の嘱託員については,原則1年の任期としているが,任期中の勤務実績により任期を更新することができることとしており,その場合の更新回数については,基本的に上限を設けているところである。
現在、嘱託職員の雇用期間を定めた有期雇用が、専門職としての継続雇用を阻んでいます。
会計年度任用職員は「会計年度」という名のとおり1年間の任用ですが,再度の任用に当たっては任用制限を設けないなど,専門性の維持に努めていただくよう要望します。
④今回の法改正では,会計年度任用職員に期末手当を支給できるように見直されるなど,同一労働同一賃金の考え方を取り入れたものとなっていると考えています。そこで,現在の嘱託員の報酬や臨時的任用職員の賃金がどのように決められているのかお尋ねします。また,報酬や賃金には前歴換算や昇給などの仕組みはあるのかお尋ねします。
【総務企画局長】
- 報酬等の設定方法:職務内容,職責等を考慮して適切に措置
- 前歴換算,昇給の仕組みなし
報酬や賃金の設定に当たっては、同一労働同一賃金の考え方を原則とするとともに、前歴換算・昇給などの仕組みも導入すべきと考えています。併せて,法で認められることとなる期末手当については確実に支給していただくよう要望しておきます。
⑤ただ今,特に重要となる任用と報酬等について,個別に要望いたしましたが,このほかにも,採用方法や再任用の際に新たな任期と前の任期との間に空白を設ける「空白期間」についても課題があると考えており,これらも含め,現在の勤務労働条件を低下することはあってはならないと考えています。
そのためにも、職員団体との協議は重要です。現在、職員団体との協議は行っているのかどうかお尋ねします。また,会計年度任用職員の任用や勤務条件,給与に関しては,職員団体の意見も十分に聞きながら,制度設計を行うべきだと考えますが,ご所見をお伺いします。
【総務企画局長】会計年度任用職員の勤務条件について,職員団体等と意見交換会を実施している。
平成30年5月30日 市労連
平成30年7月5日 現業労組
平成30年7月25日 アミカス嘱託員ユニオン,福岡市図書館司書ユニオン
必要に応じて職員団体等の意見も聞きながら検討を行い,適切に対処していく。
しっかりと職員団体の意見を聞きながら検討を進めていただくよう重ねて要望しておきます。
⑥正規職員に勤務実態が近い職であるなら、非正規の職員ではなく、正規の職員を置くべきと考えます。やむを得ず会計年度任用職員が任命される場合は、地公法第22条の2第2項のフルタイムでの任用とすべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
【総務企画局長】職員の配置については,「最小の経費で最大の効果を挙げる」という地方自治法の基本理念に則り,非常勤職員の配置を含め,適切な人員配置に努める。
⑦前回の質問でも指摘しましたが、本市の公共サービスが、非正規職員に依存して展開されている現状は明らかです。非正規公務員の仕事は、もはや補助的や臨時的なものではなく、公共サービスの基幹的業務を担う存在になったといっても過言ではありません。非正規公務員については、この間、「官制ワーキングプア」として社会問題ともなっています。今回の法改正は,臨時・非常勤職員と正規職員との格差を埋めるチャンスとも言えます。
この質問の最後に,会計年度任用職員の勤務条件等について,どのように検討を進めていかれるのか,ご所見をお伺いします。
【総務企画局長】 会計年度任用職員の勤務条件等については,地方公務員法に則り,国が示した運用の考え方を参考に,他都市の状況等も踏まえながら検討を行い,適切に対処する。
3.福岡市における「部落差別解消推進法」の具体的施策について
本市においては、市民一人ひとりの人権が真に尊重される社会の実現をめざして、人権8課題をはじめとした様々な課題に対する施策を行っています。そのうちの一つである「ハートフルフェスタ福岡2018」が10月14日から開催されますが、本年度は、昨年までのフェスタと内容が大きく変更されていると聞いています。そこで、
①何がどのように変わったのか、お知らせください。
◆<市民局長>
- ハートフルフェスタ福岡は,平成10年度から実施。22年度からは市役所西側広場を主会場に「1日間の人権啓発イベント」として開催してきた。
- 第21回目の今年度は,装いも新たに2会場で開催。10/14(日)は「エルガーラ・パサージュ広場」で,「市民が身近に人権問題に触れる場」として開催予定。
- 11/9(金)〜11(日)の3日間は「あいれふ」で,「市民がじっくり人権問題を考える場」として開催予定。
②どのような理由で変更されたのか、説明を求めます。
◆<市民局長>
- 市役所西側ふれあい広場での開催は,開催経費の高騰により内容充実ができず,また,雨天などのリスクも増大している状況もあり,天候を心配する必要がなく,会場経費の節減できるように開催場所を変更。
- このことで,2会場・4日間の日程で,内容を充実させることが可能となることから,実行委員会で新たな開催場所・内容が決定されたもの。
③昨年度までのフェスタについてお尋ねします。フェスタへの来場者数と、人権啓発センターに登録している人権団体による活動紹介の「交流ブース」、手作りのお菓子や日用雑貨を販売する「ふれあいマーケット」などの参加団体数について、西側広場を会場とする前年度である2009(H22)年度と過去3年間でお示しください。また、今年度参加する団体数をお示しください。
◆<市民局長>
(1)過去3年間の来場者数,交流ブース・物販参加団体数
区分 |
来場者数 |
交流ブース・物販参加団体数 |
平成21年度 |
約5,700人 |
57団体 |
平成27年度 |
約22,000人 |
68団体 |
平成28年度 |
約19,000人 |
63団体 |
平成29年度 |
約21,000人 |
66団体 |
(2)今年度の交流ブース・物販参加団体数(予定)
区分 |
交流ブース・物販参加団体数 |
平成30年度 |
延べ48団体 |
④これまでのハートフルフェスタ開催の成果と課題についてお尋ねします。
◆<市民局長>
- ハートフルフェスタについては,多くの市民に来場いただき,人権問題を身近に感じていただいた。
- 課題としては,開催経費の高騰や天候リスクが高まるとともに,イベントだけではなく人権問題をさらに深く考えていただく場も必要と考える。
リバレインにあった人権啓発センター内で行っていたハートフルフェスタを2010年度から市役所西側ふれあい広場で開催するようになったことで、登録人権団体の交流ブースで団体同士の交流が広がったことと、通行中の市民を含め多くの方が立ち寄り人権に触れ合うという人権啓発の役目を大いに果たしました。それが来場者数、参加団体の増加にも表れています。これまでも天候不安と経費節減の課題はあったはずです。
⑤突如とした今年度の変更は、人権のまちづくりと逆行するものであり、納得のいくものではありません。多くの参加団体からも苦情が上がっています。現に、参加団体数が16団体も減少しています。団体交流の場が減り、市民が様々な人権問題に触れる機会をなくしてしまうのではないかと、大変危惧します。人権について考えるイベントとして、多くの市民が参加できて人権を身近に感じられ、人権団体の活動紹介や交流が可能となる市役所西側ふれあい広場で開催すべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
◆<市民局長>
- 「エルガーラ・パサージュ広場」「あいれふ会場」のいずれにおいても,多彩な魅力あるゲストや地元団体を迎え,内容を充実させるとともに,「あいれふ会場」では関係機関・団体の出展期間をこれまでの1日から3日に拡大するほか,人権啓発センター主催事業を同時開催するなどして,さらなる事業充実を図る。
- また,人権啓発センターが立地する「あいれふ会場」での実施は,人権啓発センターの認知度向上にもつながるものと考える。
「市民がじっくり人権問題を考える場」は、これまでもフェスタの前日に人権啓発センターで講座や講演会が開催されてきました。今年度のフェスタを検証され、2019年度に活かされることを強く申し述べておきます。
⑥福岡市では、「人権問題に関する市民の意識を把握し、啓発事業等の人権施策の一層効果的な推進を図るとともに,今後本市が取り組むべき人権行政のあり方を検討する上での基礎資料を得るため」として、5年に一度「人権問題に関する市民意識調査」を実施しました。直近の調査は2017(H29)年12月に行われ、7月に分析結果と共に報告書が出されました。同和問題に関しては6項目の設問が行われています。「被差別部落,同和地区などと呼ばれてきた地区やその地区に住んでいる人々に対する差別に対してどう思いますか。」の設問に対して、「進学などの教育の面」、「就職などの面」、「結婚の面」、「生活環境面」、「日常の付き合いの面」、「社会における偏見意識」、「インターネットへの書き込み」、「家や土地の購入の面」、の各項目において「差別は厳しい・多少差別はある」と回答した市民はそれぞれ何%になっていますか。
◆<市民局長>
「進学などの教育の面」10.9% 「就職などの面」25.6% 「結婚の面」41.4%
「生活環境面」20.8% 「日常の付き合いの面」17.6% 「社会における偏見意識」37.9%
「インターネットへの書き込み」23.3% 「家や土地の購入の面」29.3%
特に高い項目は、前回調査同様、「結婚の面」、「社会における偏見意識」、「家や土地の購入の面」ですが、2012年度調査より、それぞれ1.4ポイント、2.1ポイント、11.5ポイント下がっています。しかし、「インターネットへの書き込み」については、18.7ポイントから23.3ポイントに上昇していることは、今日的な差別実態を表す大きな問題です。
⑦2012(H24)年の調査結果を受けて、この5年間、人権問題解決に向けた取組みとして、部落差別解消のための施策としてはどのような施策を推進してきたのかお示しください。
◆<市民局長>
- 同和問題の解決に向けた取組みについては,平成24年度の市民意識調査結果を踏まえ,「福岡市人権教育・啓発基本計画」に基づき,毎年12月の人権尊重週間での人権パンフレットの全戸配布や各区市民センターでの「人権を尊重する市民の集い」を開催。
- また,各区役所での人権を考えるつどい,各市民センター・公民館・人権のまちづくり館での人権講座の開催など,市民啓発を進めている。
- さらに公共職業安定所・労働基準監督署と連携し,企業を対象とした研修の実施及び企業の自主研修への支援など,同和問題の解決に向けた取組みを行っている。
人権問題については、「福岡市人権教育・啓発基本計画」に基づき、様々な取り組みを行っておられますが、その時々の社会情勢や新しい人権課題が主流となり、同和問題についての研修・講演が近年少なくなっていることは問題であると指摘しておきます。
次は、差別落書きについてお尋ねします。
⑧2011(H23)年9月13日に初めて発見されて以来、早良区内で49か所、東区内で6か所、中央区で4か所、合計59か所のガードレール、水路のフェンス、校門の看板、川沿いの柵、電柱、市役所横トイレ、民家の壁など様々な場所に挑発的で差別を先導する悪質な内容の差別落書き事件が発生しました。福岡市はこの差別落書きをどのように認識し、どのような対応をされたのか、お尋ねします。また、2012(H24)年以降、福岡市における差別発言や差別落書き、インターネットでの書き込みなど部落差別に関する事象は何件発生したのか主な内容とともに年度ごとにお示しください。
◆<市民局長>
- 本件については,過去に例がなく,非常に悪質であり,極めて遺憾で許しがたい事案であると
認識し,警察への被害届の提出,差別落書き対応マニュアルを改定し,関係部署・民間施設に周知を行うなど再発防止に向けた取組を行っている。
- また,市民に対しては,新たに作成した差別落書き防止のチラシを各種講演会等で配布するな
ど,様々な機会を通じて「差別落書きを許さない社会の実現」に向けた取組を進めている。
- 市が把握している平成24年度以降の同和問題に関する差別事象件数
平成24年度 3件 平成25年度 1件 平成26年度 1件
平成27年度 2件 平成28年度 4件 平成29年度 3件
- 差別事象の内容:差別落書き,貼紙,同和地区問い合わせなど
大量の差別落書きについて、市は捜査権は持ちませんが、被害届を提出したことで終わりにするの
ではなく、絶えず捜査の進捗状況を把握する意気込みで、責任をもって解決に当たるべきであると指摘しておきます。
⑨これらの差別事象に対して、どのような対応をされたのかお知らせください。
◆<市民局長>
- 把握した事象については,現地確認及び聞き取り等を行うとともに,福岡法務局や県など関係機関に情報提供を行っている。また,施設管理者は原状回復を行い,必要に応じて警察への被害届の提出を行っている。
⑩2016(H28)年12月に「部落差別の解消の推進に関する法律」が施行されて1年9か月が経過します。憲政史上初めて部落問題の解決を目的として、国が部落問題を真正面から取り組む姿勢を示した法律です。まず初めに、この法律の制定に至った経緯をお示しください。
また、法律の概要についてもご説明ください。
◆<市民局長>
- 平成28年5月に国会議員9名の発議により法律案が提出され,同年12月9日に成立,同月16
日に公布・施行。
- 現在もなお部落差別が存在するとともに,情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、部落差別のない社会を実現することを目的としている。
- 国と地方公共団体が適切な役割分担のもと,地域の実情に応じて,部落差別の解消に関する施策を講ずること,相談体制の充実を図ること,教育及び啓発を図ること,国は部落差別の実態に係る調査を行うことを規定。
⑪部落差別解消推進法の意義は、今日的な部落差別の存在を認め、その解決に当たっては部落差別を許さない社会づくりが重要だとしたことです。さらに部落差別が社会悪であるとし、国及び自治体がその解決のために、相談体制の充実、教育及び啓発の推進、実態調査の実施を進めていくことを明記しています。施行に関連しては、法務省、文部科学省が都道府県などに通知を行っています。それぞれどんな通知内容ですか。また、そうした国の動きを受けて福岡市は、市職員、教職員,企業、市民にどのように周知したのか、お示しください。
◆<市民局長>
- 法務省からの通知内容は,主に同法施行の周知依頼。
- 本市ではこの通知を受け部落差別解消法,障がい者差別解消法,ヘイトスピーチ解消法の三法について,周知を図っている。
- 市職員に対しては,eラーニングを活用した人権研修,庁内の電子掲示板を活用した周知
- 企業に対しては,公共職業安定所及び労働基準監督署と連携した研修会などでチラシ配布等により周知
- 市民に対しては,市政だよりと同時配布のパンフレット,市ホームページへの掲載,各種啓発事業でのチラシ配布等により周知
◆<教育長>
- 文部科学省通知(平成29年2月6日通知)については,
「本法及び附帯決議について,十分了知するとともに,本法及び附帯決議を踏まえた適切な対応について留意すること。また,所管の学校に対して,周知を図ること。」という内容である。
- 本通知への対応については,「校長・園長連絡会」や全教員を対象とした「全市人権教育研修」等を通じて,学校への周知を図っている。
厚生労働省においても、全国の都道府県労働局に通知を発出し(H28.12.16)、法律の趣旨を踏まえた一層の取り組みを指示しています。また、経済・業種448団体に公正な採用選考についての要請文を発出し(H29.2.22)、法律の成立を周知するとともに、企業における就職の機会均等の取り組みの推進などを要請しています。
⑫内閣府は2016年4月に施行された「障害者差別解消法」に関わる「障がい者に関する世論調査」を行っていますが、その中で「合理的配慮」を国や自治体に義務付けているこの法律を「知っている」と答えた人は21.9%で、「知らない」と答えたのは77.2%でした。「部落差別解消推進法」はどれだけの人が知っているだろうか、大変不安に思うところです。なぜなら、差別事象は「差別する人」、「傍観している人」「無関心な人」がいて発生します。まさに、社会の問題です。「部落差別解消推進法」の周知を徹底する取り組みを強化すべきと考えますが、ご所見をお伺いします。
◆<市民局長>
- 部落差別解消推進法の周知の取組みについては,市政だよりと同時配布のパンフレット,市ホームページへの掲載,各種人権啓発事業におけるチラシの配布などを行っており,引き続き,様々な機会を通じて周知に努めていく。
法務省作成の啓発チラシは、法律の条文と文字ばかりの説明からなっており、到底読もうとは思えないチラシです。イラストを交え、法律の趣旨を理解しやすいような、チラシの作成を要望しておきます。
⑬市民意識調査「同和問題解決への望ましい方向性」において、「小・中学校などの人権教育で、同和問題に関する正しい知識を教える」の割合が46.1%で最も高くなっています。次いで、「市民が、自ら差別や人権について学ぶべきだと思う」35.3%、「国や地方自治体が、同和問題の解決に向けた教育・啓発活動や相談活動などの施策に効果的に取り組むべきだと思う」32.6%となっています。
そこでまず、同和問題に関する相談は現在どこで受けているのか、さらに、「相談体制の充実」について、相談担当者の資質の向上を含めてどのようにすすめていこうと考えているのかお示しください。
◆<市民局長>
- 相談については,人権啓発センター及び人権のまちづくり館等で対応。
- 相談体制の充実に向け,研修等により引き続き担当者の相談対応能力の向上に努めていく。
- 法務局等の関係機関とも一層の連携を図っていく。
人権啓発センターや人権の街づくり館で相談を受ける担当者は、正しい知識を持ち差別に対して敏感でなければなりません。また、相談に的確に応ずるための体制も必須です。21世紀の人権は、ピアサポートのように「当事者による当事者のための当事者の人権」が特徴となっています。そのためには「当事者の参加」をいかに保障するかも課題と考えます。
⑭「教育・啓発」について、学校教育、社会教育はどのようにすすめていくのかお示しください。
◆<教育長>
- 学校における人権教育については,教育委員会人権教育推進計画及び人権教育指導の手引きに基づき,すべての児童生徒が人権の意義・内容や重要性について理解するとともに,「自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること」ができるよう教育活動全体を通じて,推進していく。
- 社会教育については,地域において自主的に人権学習や啓発に取組む人権啓発地域推進組織が結成されており,様々な人権問題に関して活発な活動が行われている。今後とも地域での啓発が進むよう必要な支援を行っていく。
◆<市民局長>
- 社会教育の一環として人権講座や人権セミナー等を実施しており,今後とも,同和問題など様々な人権問題の解決に向けた効果的な講座等を実施していく。
近年、小・中学校では教員の採用者数の増加と共に、若い教職員が増えています。「同和教育」や「部落問題学習」という言葉を初めて聞いたという教員や、被差別の実態に触れたことがないという教員が増えています。しかし、今もなお差別がある実態が示されていることから、差別をなくす主体者を育てる学校教育の責任は重要です。
⑮学校・社会教育等で部落問題学習をすすめるには、それを担う人材が必要と考えます。人材育成が急務だと考えますが、ご所見をお伺いします。
◆<教育長>
- 学校教育においては,教員一人ひとりの人権に関する知的理解を深め,人権学習に関する実践的指導力を高めるために,教員の経験年数に応じた研修や指導方法に関する研修など,様々な研修を実施している。
- 社会教育においては,各区の社会教育主事や人権教育推進員等を対象に,人権教育研修を実施している。
- 今後とも,教員や社会教育主事等に対する研修の充実を図り,資質の向上に努める。
⑯ 部落差別解消推進法をふまえ、福岡県内でも小郡市と飯塚市が条例を制定しました。福岡市においても差別解消を推進するための具体的施策や財源の裏付けを明記した条例の制定など部落差別の解消に向けた取組を進めていくべきだと考えますが,ご所見をお伺いします。
◆<市民局長>
- 部落差別解消推進法は,部落差別の解消を推進し,部落差別のない社会を実現することを目的
としており,法律及び附帯決議を踏まえて同和問題の解決に努める必要がある。
- 本市では,「福岡市人権教育・啓発基本計画」に基づき,具体的施策を進めているところであり,引き続き,あらゆる人権問題の解決に向けた取組みを推進する。
⑰「部落差別解消推進法」施行を踏まえ、2017年(H29年)1月23日に開催された衆議院本会議で、二階俊博自民党幹事長が総理の意気込みを訪ねた際、安倍総理は、「部落差別のない社会を実現することは重要な課題」「法律の趣旨を踏まえて、今後とも、差別の解消に向けてしっかりと対処してまいりたい」と答弁しました。高島市長にお尋ねします。「部落差別解消推進法」の施行を踏まえ、福岡市における部落差別解消にかける高島市長の意気込みをお尋ねします。
◆(高島市長)
福岡市では、みんなが優しいみんなにやさしいユニバーサル都市福岡の実現に向けて、全庁挙げて取り組んでいるところでございます。人権問題につきましては、パートナーシップ宣誓制度の導入など性的マイノリティ支援事業の開始や、障がいを理由とする差別をなくし、障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例の制定など、人権を尊重し人の多様性を認め合うまちの実現に向け、あらゆる人権問題の解決に向けた取り組みを進めているところでございます。
同和問題につきましても、部落差別の解消の推進に関する法律及び付帯決議を踏まえ、引き続き福岡市人権教育・啓発基本計画に基づき、解決に向けた取組みを進めてまいります。
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